49. ブツの行方
川の掃除が一段落し、水の色が赤黒くも紫でもない透明に戻った頃、アスタロトが上機嫌で俺の部屋にやって来た。
隠すつもりがあるのかないのか、後ろ手に持たれた袋に嫌な予感を感じるが、部屋に通してラーナにお茶を淹れてもらう。
夕食を食べたばかりだから、重くないクッキーを齧りながら話を待つが、当のアスタロトはニヤニヤしたまま一向に説明する気配がない。
「ええっと……その袋は何だ?」
「おっ、気付いたか! これはだなァ……ふふっ」
仕方がないから話を振ると、態とらしい笑みを浮かべて袋の中に手を突っ込んだ。
「ジャーンッ!!」
そんな効果音と共に出されたのは、黒光りする――
「け、拳銃!?」
「あとはコイツ、粉!」
「は!? えっ!? 何!?」
「へへっ、そんなに驚いてくれるなら買って来たかいがあったぜ!」
「お、おう?」
「それにしてもコレって人間の武器っしょ? これが掃除に使えるなんざ初めて知りましたぜ」
ウキウキと俺の説明を待ってくれているが――ごめん、今めちゃくちゃ混乱してる。
「あ……えーっと、これは?」
「白い粉っしょ、魔法の白い粉」
「……あー」
ヤバいやつだ。
これヤバい粉だよね、確実に!
この身体だったらもしかしてあの「ペロッ、これは青酸カリ!?」的なのが出来るかもしれないけどっ!!
今すぐ返して来いと叫びたくなる気持ちを抑えながら、目の前の大きな子供になんて説明しようか考える。
折角買って来てくれたアスタロトを傷付けずに間違いを諭す方法――
「あ、あのな、アスタロト……」
「なんだ? 早速使ってみっか!?」
「だからこれはな……」
「――馬鹿かお前は。これのどこが重曹とクエン酸に見える」
「はぁ!? いきなり何だっつーんだよ、テメェ!!」
急に割って入ってきた声に振り返ると、何故か喧嘩腰のベルゼ。
全然気配感じなかったんだが、いつの間に入って来たんだ?
テンパってたから気付かなかっただけ、だよな?
「銃で掃除って、何を掃除する気だ」
ベルゼの言いたいことに気付き、その光景が頭の中で繰り広げられる。
「掃除だ」と言い、辺りの人に問答無用で乱射する姿――一昔前のB級映画みたいだ。
……っていうか!
アスタロトに買い物頼んだとき、ベルゼいなくなかったか!!?
ベルゼがいない間にトイレ掃除を〜って下りだったと思うんだけどっ!?
「……お前の馬鹿さ加減にはほとほと呆れるが、まぁいい。サタン様を喜ばせようという気持ちだけは汲んでやる」
「お、おう……?」
「だがソレはここでは不要。明日――」
「返すのかよ!?」
「いや、売るんだ」
「ブッ……!?」
「売る……」
ベルゼの言葉を何度か口の中で繰り返し、ニヤリと笑ったアスタロト。
ベルゼの方を見ると、これまた悪い顔をしていた。
「高く売れよ」
「おう! 任せとけっ」
極悪顔の二人に、俺の顔が引き攣る。
何か意外なとこで悪魔らしい顔を見た気がする……
更新遅くなってすみません!
私生活の方がバタバタしていて、12月に入るまでは更新頻度が減りそうです……




