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39. 盗み聞きは碌なことにならない


 ここ数日、集中して眠れない日々を送っていた。

 原因は言うまでもなくサラのあの言葉だ。

 機会を見て詳しく聞こうとしているんだが、なーぜかなかなか一人になれなくて。


 どこから聞きつけたのか、マーガレット達を助けた話が広まっているらしく、ジーモみたいに相談しに来る人がポツポツと現れていた。

 朝から昼にかけての、彼等の相談を受ける時間はいい。

 困っている人を助けられるのは嬉しいし、大概が話しをするだけで解決する問題だからそんなに苦じゃないからだ。


 だけどそれが終わってからの時間な時間、常に誰かが傍にいるようになっていた。

 一度、寝室に引っ込んだ後にこっそり抜け出そうとしてみたんだけど、ちょうどラーナと出くわしてしまって不発に終わった。


 そんなこんなで、ここ数日はもやもやした日を過ごしていた。



 顔を洗って寝惚けた頭をシャキッとさせる。

 いくつか選ばれているものの中から比較的シンプルな服に着替えて、食堂に行こうとドアに近付いたとき、リリスの大きな声が聞こえてきた。

 驚いてドアノブに掛けた手を引っ込めてしまった。


「――ちょっと、どういうことなの?」

「何がだ」

「何ってあの扉よ! 私に内緒で勝手に隠し扉作って! 開け方教えなさいよ!!」


 い、意外とリリスって過激だな……!?

 そんなに大声で隠し部屋のこと言ってやるなよ。バレバレだと意味ないんだから。

 それにベルゼだって男なんだ。隠したい物の一つや二つ……


 ベルゼに同情すると同時に、ベルゼが男の浪漫について分かってくれたことに思わずニヤつく。


「誰が教えるか。だいたい、お前が金庫の鍵開けるから必要になったんだろうが」

「だってぇ……気になるじゃない。アナタのことは何でも知ってたいのよ……」

「ハァ……仕事のことだ。何と言おうが教える気はない」


 完全に出るタイミングを失っていたが、トーンダウンした会話にそろそろ出て行こうかと再度ドアノブを握ったところで、聞き捨てならないことが聞こえてきた。


「じゃあベッド下の扉の開け方だけでもいいから」


 ち、地下室だとッ!?

 いやでもここは三階。どうやって――床を嵩上げしたら可能か……

 ベッド下は隠し場所としてはかなりメジャーな場所だが、そこまでやるか!!?

 なんかベルゼに対する目が変わりそうだぞ……


「駄目だ」

「何よっ! サタン様観察日記、私にも見せてくれてもいいでしょ!?」


 なん……だと……?

 驚きすぎてガタッと音を立ててしまった。

 扉の向こうの声がピタッと止まる。

 し、仕方ない。ここは聞かなかったことにして――


「……あ〜、いい朝だなぁ! 今日の朝食は何かなぁ!?」

「おはようございます、サタン様。今の話、聞いておられましたよね?」

「うん? 何のことかな~?」


 我ながら、下手な演技だと思う。

 二人の顔とか完全に引いてるし。何やってんだコイツみたいな顔してるし。

 でもここで認めてしまったら、これから先ベルゼとどんな顔で話せばいいか分かんなくなるから!


「それじゃあ俺は、い、忙しいから!」


 追及される前に立ち去るが吉!

 後ろから何か聞こえたけど振り返らずに走った。

 食堂の前まで来て、ふと気付く。

 あれ? 今サラのとこ行けるんじゃね?


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