表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/66

31. 本当の姿


 脱衣場に戻って来た俺はもう一度湯に浸かり、冷めた身体を温めている。


「……どう、しよう。拓真に言って手伝って――いや、でも……」


 フィクションをノンフィクションだと疑わないサタンに任せているよりは、幼なじみの拓真に全てを話し、元に戻る手伝いをしてもらった方が有意義だろう。


 拓真も何だかんだも言って、最後は信じてくれそうだし、それが一番だとは分かるが――


「サタンだしなぁ……」


 一般人同士が入れ替わったのとは訳が違う。

 むしろ種族さえ違うものに入れ替わってるんだから。


「巻き込みたくないんだよなぁ」

「サタン様? 随分と長く入られてますが、大丈夫ですかー?」

「あ、ああ! 大丈夫だ!」


 脱衣場から聞こえたラーナの声に、思わず前を隠す。

 最初の頃、俺の背中を流すために入って来ようとしてた彼女を説得して止めさせたが、俺の様子が変だと思ったら入って来かねない。

 完全に気配がなくなると、溜息と一緒に肩の力を抜く。


「ラーナに話すって手もあるけど、もしベルゼ達にバレたら……」


 皆が俺に優しいのは、俺が魔王(サタン)だからだ。

 別人、しかも人間だと分かったら、ラーナはベルゼに報告するのだろうか。


 暗くなる考えを振り払う為、勢い良くお湯を顔に掛ける。


 こっちはこっちで図書室に行くなりして情報を集めよう。

 色々考えてたらまたラーナが様子を見に来そうだから、とりあえず湯から上がる事にする。


 晩ご飯がまだな俺の腹が盛大に鳴って、思わず苦笑する。

 サタンが今日のご飯はオムライスだったって自慢してきたからな。

 俺もオムライスにしてもらおうかな。


「サタン様っ!!」


 食堂に向かっていると、ラーナが慌てて走ってやって来た。

 走るなんて珍しいな、なんて呑気に考えていた俺に、特大の爆弾が落とされる。


「ベルゼブブ様とアスタロト様が食堂で争われてます!!」

「……マジか」


 何してんだよ。

 何喧嘩してんだよ。


 頭の中は真っ白になりながら、冷静に突っ込むという我ながら器用な事をしながら、食堂に向かって走る。

 ハイスペックな身体のせいで、全く心の準備が出来ないまま着いてしまった俺は、その惨状に呆然とした。


「は……?」


 前回掃除した時に綺麗に並べたテーブルや椅子は壊れ、上に乗っていたであろう料理が床にぶちまけられている。

 壁や天井には大きな穴が開いていて、壁の向こうの庭園がバッチリ見えた。


 そんな惨状の中心部に立つ二人は、殺気を全身から放ち睨み合っている。

 殺気って「ピリピリした」って言い方をよく聞くけど、二人のはそんな生易しいもんじゃなくて、こう……ねっとり? ずっしり? そんな感じで身体に纏わり付いているイメージだった。


 壊れた壁から入った夜の涼しい風に頬を撫でられ、ぴったりな表現を考えていた俺はハッとする。

 天井にも穴が開いてるけど、ここの上って――


「ベルゼブブの部屋ですね」

「だよなー。それでベルゼ怒ってるのかな――って、えぇっと……?」


 自然に話しかけられて普通に会話しちゃったけど、誰だろう。

 禿げた頭からは捻れた二本の角が生え、顎にはフサフサと髭が生えている。

 典型的な男性ホルモン豊富なお方だ。

 ベルゼを呼び捨てにしてたくらいだから、上位の悪魔だとは思うけど……


 前に図書室でベルちゃんに教えてもらった悪魔の中に、こんな姿のオッサンがいなかったか思い出そうと唸っていると、オッサンは何かに気付いたらしく、小さく「あ、」と聞こえた。


「そういえば、この姿は忘れられてるのでしたね。私はベルフェゴールですわ、サタン様」


 ……その格好でその話し方はキツイ!!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ