19. お礼をしよう
買い物を終え城に戻ると、疲れた顔のベルゼが迎えてくれた。
もしかしたら今日も仕事をしてたのかもしれない。
それか休みが一日じゃ足りなかったか……
働き者の部下に胸が熱くなる。
「では、私はこれで」
「あ、ベルちゃん。ちょっと待って」
「えっ!?」
ベルゼに意味深な笑みを向けて、立ち去ろうとするベルちゃんを引き止める。
何故かベルゼがショックを受けた顔してたけど、こういうのは早めに済まさないと。
「掃除、手伝ってくれてありがとう」
買い物袋からラッピングされた小さな箱を二つ取り出すと、それぞれに差し出す。
「こ、これは?」
「開けても?」
赤と青。色違いの箱を手にして戸惑う二人に、開けるよう促す。
「これは……」
「お、おお! 一生大切に致します!!」
渡したのは、写真サイズの絵画。
ベルゼのには山と月、ベルちゃんのには湖と月が描かれている。
ずっと手伝ってくれてた彼らには、何かお礼がしたいって考えてたんだよね。
それで買い物中ずっと考えてたんだけど、結局パッと見て気に入ったこれを渡す事にした。
これはベルちゃんに払わせる訳にはいかないから自分で買ったんだけど、本屋併設のお店でコソコソする俺を見る目が生暖かくて恥ずかしかった。
この二人、違う物渡したら差がどうのって張り合いそうだし、いいのが見付かって良かった。
ホクホクしながら部屋に戻って、二人の視線が無くなってからラーナと向き合った。
ラーナの立場を考えたら、ベルゼ達の前で渡すのは止めた方がいいと思って渡さなかったが、実は彼女にも買ってある。
手の平サイズのオルゴールだ。小物入れも兼ねていて、実用性もバッチリ。
実を言うと、三人の中で一番悩んだのがこれだ。
……女の子にプレゼントする機会とか、今まで無かったしね…………
とにかく!
ラーナも喜んでくれたし、俺も念願の裸足になれたし!
ニヤける顔を引き締めながら、今日買った物を整理していく。
こういうのは帰ってすぐにしないと、いつまで経っても袋に入ったままになってしまうからな。
ラーナが片付けるって言ってくれたけど、こういうのは自分でしないとダメだ。
どこに何があるか分からなくなって、同じのを買ってしまったりするし。汚部屋の第一歩になってしまう。
最初の袋に手を掛けた瞬間、目の前が真っ白になった。




