15. 老いた執事の覚悟
サタン様付き使用人になるには、多大な努力が必要となる。
王に付くのだから当然、出来ない事など何も無い者でなければならないからだ。
その内容はスケジュールの管理から始まり、食事や身の回りの管理等。
特別な事は何も無い。だが……不条理さが半端ではなかったのだ。
予定が入っているからと朝起こせば殺され、髪のセット時に少しでも痛ければ殺される。
酷い時には、足音を立てただけでも殺された。
そんな仕事に就くために、誰が血反吐を吐くような努力をしたいと思うか。
否、それでもサタン様の側に居たいという物好きもいた。
だが運良くサタン様に殺されなかったとしても、もう一人いるのだ。
ベルゼブブ様というサタン様狂信者が。
近寄るのと死ぬは同義であると言ってもいいだろう。
……とにかく。
生き残るためには近寄らない事が一番。
ついこの前サタン様付きになったラーナも、可哀想ではあるがそろそろだろう。
もともと、少しおっちょこちょいな所がある娘であったからな。
そういえば、あの娘が何か言っていたな。
この城の掃除が何とか……。
サタン様直々に掃除されるらしいが、果たして手伝いたい者がいるかどうか。
気まぐれで勝手な事をされても、正直迷惑だ。
サタン様の手を煩わせて職務怠慢だと、ベルゼブブ様から処罰されるのだろう。今回は何人が減るのか。
これまでに死んでいった部下達を考えると、目頭が熱くなる。
管理者という事を利用して、誰かを身代わりにする事もできる。
だが……
これ以上、見たくないのだ。
嫌とも言えずに死にに行かなければならない、あの顔を。
……これが最後の仕事になるだろう。
大丈夫。
息子もしっかりと育ってくれた。
後任になるカルロには申し訳ないが、この老いぼれの後、頼んだぞ。
◇◇◇◇
俺とラーナ、ベルゼとベルちゃんという、まあいつものメンバーだな。
その四人で手分けして二階を片付けていた。
不在とはいえ近付くと危険だって事で、アスタロトの部屋の近くはベルゼが、俺は一番離れたベルゼの部屋付近を担当する事になった。
何百年も放置されていたという事もあって、荷物は一度全部外に出して床を綺麗にした後必要な物だけ運び込む事にしたんだけど……
うん。城の庭がヤバい事になっちゃった。テヘッ。
悪魔だからか、普通は持てないくらい大きなテーブルだったり、重たい石像だったりを一人で運べたのは良かった。
元々予定してた時間が短縮されて、すっからかんにするまでが三日で終わったからな。
ああ、そうそう。
使用人の助人だけど、なんと! トップの人が手伝いに来てくれる事になりました!!
なんか予定があるとかで、今日の午後から参加してくれるらしいんだけど、もうね、嬉しすぎるよね。
誰も手伝ってくれるとか思ってなかったし。だって逆の立場だったら俺だってヤだもん。
トップになるぐらいだから、きっと凄い人なんだろうなあ。
人数も増えるし、上手くいけば明日にも終わるかもな!




