第2回 3人の女子高生①
≪CASE1≫
目の前の大型モニターに映像が流れている。
それを真剣に見ている人はこの場にどれくらいいるのだろう?
多くの人が今置かれている状況を理解するのに必死だった。
かくいう私も何故ここにいるのかわからず困惑していた。
今、私が立っているのはどこかの運動場。
360度見渡してみるも、大型スクリーンとスタートゲートと思われるど派手な門があるのみで、他には建物や遊具など一切なく何とも殺風景なものだった。
見上げると上空が白い何かで覆われていてドーム球場のような感じがした。
どうやらどこかの室内にいるみたい。
上空はゲートの先、はるか遠くまで同じ様な状況となっている。
いったいどれ程大きな施設なんだろう。
そもそも今日はショッピングモールへ出かけていたはずだ。
大好きな彼への誕生日プレゼントを買うためにね。
はじめは1人で買いに行くつもりだったんだけど、前々日ぐらいに瑠美子と沙織に誘われて、結局三人で行く事となったのだ。
正直どんなものを贈れば喜んでもらえるのかわからずに何日も悩んでいたから、そのお誘いはとても有り難かった。
だってまだ付き合い始めて間もないし、私にとっては初めての彼氏だったからね。
それに2人はよく私の恋愛相談乗ってくれていたし、何よりも私よりはずっと男性慣れしている。
瑠美子には幼馴染に男の子がいて、沙織は年上の彼氏がいるからね。
それで、私達は放課後に3人でショッピングモールへ行ったのだった。
いくつかお店を巡り、私が購入したのはスマホケース。
彼の好きなキャラクター入りだったから絶対に喜ばれると思った。2人のお墨付きもあったしね。
そして帰りにお礼としてドリンクを奢るためカフェに立ち寄ったんだけど、注文をして席に着いて話していたらいつの間にか眠くなって…。
そして目覚めた時にはこんな場所にいるもんだから、もうわけが分からない。
でも、瑠美子と沙織が隣にいたのはちょっと心強かった。
それで少し冷静さが保てるというもの。
これでもし1人だったら、確実にパニクッていたはずだしね。
そんな風に今日一日の事を思い返していると、突然体を揺すられた。
「ねぇねぇ、千佳。これってなんかヤバいよね?」
瑠美子は周囲を見渡して少し怯えたような表情をしている。
「だよね。私も凄く嫌な予感がするよ」
賞金が出ると聞いて既にやる気を出している人もいるみたいだが、とてもそんな気にはなれない。
私達は誘拐されたの?
誰かにきちんと説明してほしかった。
「っーか、鉄砲とか意味わかんないし。早くここから出せっての」
ちょっとヤンキーな沙織は地団駄を踏んでいる。
でも2人もきっと私と同じで、内心不安でしょうがないのだろう。
自然と近寄って3人で手を握りあっていた。
「あっ、でもこの靴なんかすごそうだよ」
私は既に履かされた状態だった特別仕様の運動靴を指して言った。
「この紙が説明書かな?一応読んでみよ」
時計・拳銃・鍵と一緒に白い紙が配布されており、それに靴の使用方法が書いてあったのだ。
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・ボタンを押す事で約10分間足の脚力が10倍となる
・使用回数3回
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えっ?これだけ?
なんとも大ざっぱなものである。
とりあえず運動靴を確認すると側面にボタンが3つあった。
どういう仕組みになっているのか想像つかないが、3回使用したとして30分は脚力が上がるのならそれは有り難い事だと思った。
「サイズもぴったりじゃん、すげぇ~」
沙織は何故かサイズがあってる事に感心している。
そんな事をやっていると
≪バン≫
とスタートの合図が鳴った。
ゲートに向かって歩く人もいれば、その場に残ってワーワー文句を言ってる人もいる。
私はといえば『あっ、始まったんだ』ぐらいの感じで、どこかまだ他人事だった。
これからどうしようかな?