第1回 スタート
《ジャン、ジャン、ジャン、ジャン…》
突然ど派手な音楽が鳴り、ステージ上に可愛いライオンの着ぐるみが登場した。
ライオンはマイクを握っていて、音楽が鳴りやむのを待って話し出した。
『レディース&ジェントルメン!』
その声と同時に一瞬の静寂が訪れる。そして周囲の人々の視線が声の主に注がれる。
『さぁさぁ、今から‘追跡者レース'を開始しまぁ~す』
そう言ったと同時に一斉に怒号が起こった。
「ふざけんな!」
「ちゃんと説明しろ」
「ここ何処だよ」
……
飛び交う声を完全に無視してライオンは話を続けた。
『こちらのスクリーンに注目~』
ライオンが指さす方に大型スクリーンが現れ、画面上には下から上に文字が表示されてくるのだった。
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≪ルール≫
・ゴールゲートを通過すれば勝ち
・スタートは8時(現在:7時56分)
・追跡者は8時30分から追跡を開始する
・タイムリミット内にゴールしなければ負け
・タイムリミットは20時 ゴールゲートは12時から開放される
・所々に設置されてる看板にゴールへのルートが記載されている
・ゴールした者には賞金300億円 ただしゴールした者全員で山分けとなる
・参加人数300名
・スタート時に時計・拳銃(弾なし)・1本の鍵を配布
・ハンデとして女性・子供(12歳以下)には特別使用の運動靴を支給
・最初の追跡者はランダムで選ばれる
・随所に宝箱が設置されていて入手したアイテムは自由に使用可
・配布されている鍵を使い宝箱の解錠が可能 ただし鍵は1度きりの使い捨て
・死亡したら負け
………
……………
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「え?もう始まるじゃん」
「家に帰りたいよ」
「うわ、腰に拳銃がある」
「何この靴?」
「本当に賞金でるのかよ~」
「総距離を教えろよ!」
「死亡したら負けって何だよ!」
周囲のざわめきを余所に、目の前に設置されている大型スクリーンには次々と下から上にスクロールされ文字が流れている。
一通り文字が表示され終わると、この空間で唯一の出入り口であろう大きなスタートゲートが開いた。
『質問は一切受け付けませ~ん。死亡しても安心して下さい。ちゃんと事故死に見せかける準備はできてますから~』
あえて挑発するように言うライオン。
その言葉に怒号は大きくなるばかりだった。
『では、みなさ~ん。追跡者につかまらないようゴールを目指しましょうね~。そろそろ行きますよぉ~』
ライオンがいつの間にかスターターピストルを構えていた。
『位置 について………よーい………』
≪バン!≫
スタート合図の鉄砲が鳴った。
こうして多くの人が状況を理解できぬまま‘追跡者レース'が開始されたのであった。
普段は「異世界で出逢う大切な人」というファンタジー作品を執筆しています。
この度、別のジャンルでも作品を書いてみたいと思い投稿しました。
ただ作者遅筆と最近多忙の為、更新頻度は遅めとなります。ご了承の上お楽しみ頂ければと思います。