「なろうテンプレ」について
なろうにおけるテンプレについて少しばかり思うところがあるので、触れてみようかと思います。
私自身もまだ未熟で伝わりにくい点も多々あると思いますが、しばしお付き合いください。
よく、
・テンプレ作品ばかりがランキングにのる
・似通った設定、ストーリーばかりで独自性がない
・過去の作品の模倣が多い
といったことが言われます。
たしかになろうのランキングを見れば、これらが事実であることは一目瞭然でしょう。ほぼ全ての作品に
“異世界”“主人公最強”“チート”“ハーレム”“奴隷”“成り上がり”……
例を挙げればキリがありませんが、そういったタグが付いています。
また、世界観も同じでしょう。
中世ヨーロッパ風、剣と魔法、レベルにスキル、転生または転移によるチート、冒険者ギルド、亜人差別。
題名にも法則性が見えるかもしれませんね。スレタイのようだったり、矢鱈と長かったり。少なくとも、一言で作品の内容を表現するような題名はあまり見つからないように思えます。
こういった作品、所謂「なろうテンプレ」が溢れているのは紛れも無い事実だし、「なろうテンプレ」を書けばポイントが入る、というは言い過ぎでも、注目度が段違いなのは確かです。
そして、これにより、マイナージャンルの良作が埋もれているのもまた、確かです。
では、テンプレはダメなんでしょうか?
テンプレへの批判が多いのは恐らく、
テンプレ作品=無個性、あるいは模倣
という図式が成り立つから。そして、そういった無個性な作品によって良作が埋もれてしまう。誰でも書けるような作品ばかりが評価され、独自性のある良作が評価されない。
これが「なろうテンプレ」が批判される理由です。
ですが、私の所感として、最近では、
異世界チートハーレム=テンプレ
と短絡的に判断されているかもしれない。そう感じることが多々あります。
作者は、作品を書く上でまずは『どんな作品を書きたいのか』というものが頭にあります。ここでは、私がファンタジーを書いているので、ファンタジーを例に挙げさせていただきます。
ファンタジーと言うと、ざっくりと分けて3つの方向性があります。
1、異世界
2、現代異能
3、別世界
3の別世界というのは、作者が一から構築した世界に住む人々が、その世界の中で動く物語のことです。なんと呼べばいいのかよく分からなかったのでこの呼称にしました。
作者には描きたい世界があり、それを表現するためにはどんな世界観が相応しいのか、それを念頭に置いて『どのような作品にするのか』を決めていきます。
そして、世界観や設定というのは、作者が描きたいものを描くための『道具』でしかありません。そして、道具ですから、ある程度は決まった『使用方法』が存在します。
「なろうテンプレ」では、圧倒的な“力”によってのし上がっていく爽快感を売りにしたものが多いでしょうか。ここではこれを例に取ります。
この方向性を持つ作品では、“成り上がり”ですから、主人公は社会的弱者でなければなりません。ですが、社会的弱者がそう簡単に成り上がるだけの力を手に入れられるでしょうか?
否です。
力がないから弱者なのですから、そんなことはあり得ません。武力や知力というのは才能ももちろんですが、才を鍛えるだけの余裕がある人物しか持ち得ないのです。
ならばどうするか。
強者を弱者に落とせばいい。
あるいは弱者に力を与えればいい。
前者は難しいですね。強者はそう簡単には落ちませんし、物語の初めにはそぐわない知名度が生まれてしまいます。
ですから後者、異世界転生です。
異なる世界、身分の保証もなく、知識もゼロ。他人とのつながりや金銭をも一切持たない社会的弱者の出来上がりです。
しかし、主人公はそのままでは戦えません。
故に、物語を成り立たせるため、主人公を死なせないための最低限の力が必要となります。
これが努力なしで手に入る力、つまりチートです。
こうして、異世界チートが出来上がります。
また、一般の間に平然と普及する武力。これは主人公が力により成り上がるためには必須の設定です。
ですが、力とは正しく管理されなければならない。そうでなければ世紀末です。
なので、まとめ役が登場します。
冒険者ギルドです。
さて、ギルドには多数の冒険者(名称はハンターでも傭兵でもなんでもいいです。最もメジャーだと思うので、ここでは冒険者とします)が在籍します。集団ですから当たり前ですね。
そうなれば、ギルドの方も管理が大変です。
なので、ランク分けが生まれます。
これには“成り上がり”を明確にする意味も含まれているのでしょう。
さて、異世界転生を果たした主人公は力(=チート)を持っています。しかしギルドでは、戦う力がすでにあるのに新人=低ランクから始まります。
それでは面白くありません。また、売りにしたい爽快感が生まれません。
では、ランクを手っ取り早くあげるにはどうしたら良いか?
簡単です、強い敵を圧倒するところを見せつければいい。
ですがギルドは街の中。魔物なんていません。
じゃあ人に襲いかかって貰えばいいじゃないか?
ギルド登録時のテンプレの出来上がりです。
これ以上書くと冗長になってしまうのでここで切り上げますが、ここで何を言いたいのかというと、テンプレ(=無個性の原因)とはつまり『非常に使い勝手の良い道具』だということです。
そしてその道具には、作られた理由と意味がちゃんとある。
実力のある作者は、異世界も、チートも、ハーレムも、意図があり使用しています。使われている場面、そこには意味があるのです。
ですが、テンプレはあまりにも使い勝手が良すぎる。
意味を理解していなくとも、使えば物語がある程度の形になってしまう。
テンプレはある意味で物語の一つの完成形なのですから当たり前ですね。
これによって生まれた、テンプレという『道具』に頼りきった無個性な作品。意味を理解せず、表面だけをなぞった上辺だけの作品。それでも『道具』の能力が高いので、ある程度の評価を得てしまう。
そして当然ですが、アマチュアはプロよりも圧倒的に多い。故に、未熟な作品が氾濫し良作が埋没する。
これが実態ではないでしょうか。
私は、テンプレと呼ばれる作品群の中にも、きちんと道具の仕組みを熟知し使いこなして作られたものもたくさんあると思っています。というよりも、書きたい場面、表現したい心情などを求めた結果、最適な道具がテンプレだった、そういった作品も多いです。
テンプレだから、それだけの理由で嫌うのではなく、本当におもしろい作品を見つけて欲しいと思います。
また、作者の方へ。
安易にテンプレに頼るのではなく、そこにはどのような意味があるのかを理解し使いこなせるようになれば、出来上がる作品のレベルは一段高いものになるのではないでしょうか。
このエッセイが、そういったことを少しでも考える手助けになってもらえれば嬉しいです。




