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番外の1 静。

色々有りますが、百合展開は有りません。


姉×弟が大丈夫ならどうぞ。


駄目でもこの回無しでも本編に影響は無いですよ♪



 自分は不幸だと口に出して言えるうちはまだまだ幸福なのだ。

 本当に不幸な時は思考すら麻痺している。


 あの当時の私は高校と家の往復で1日は終っていた。いや…寧ろ始まってもいなかったのかもしれない。

 白城 静 17才 高3の夏。


 朝から蝉の鳴き声で起こされ茹だるような暑さともう少し寝ていたいとのイラつきで少々不機嫌気味で洗面所に向かった。


 家の水回りは他の家より早く上下共に水洗を入れていた。


 顔を洗うと少しスッとする。


 食卓に向かうと弟のみのるが味噌汁を啜っていた。


「なによ、実。暑いんだから扇風機くらい使いなさいよね!」

 私は扇風機のダイヤルを強にすると自分に向けた。

「姉さん。悪いですが風をこちらに向けないでくれますか?」

 弟はどうもアナログな部分があり機械で何かをするのがあまり得意では無いらしい…便利なのに…。

「…分かったわよ。貴方も少しは文化に触れてみなさいよね。」

「堕落しない程度に文明を楽しみますよ。…その内にね。」

 実はお茶をずずっと飲むと食器をまとめて洗い桶に突っ込んで出かける準備をしていた。

「実。今日は早いのね。」

「日直だからね。朝から多いんですよ、やることがね。」

 私はポップアップトースターがチーンと焼き上がった合図で弾け飛ぶトーストと出かける弟を同時に眺めてから頂きますと呟いた。



「行ってきます。」

 私は誰も居ない空間に合図だけした。

 私と実の居る母屋から離れた平屋に母は入ったまま出て来ようとはしなかった。

 世間では戦争は終っていたのに母の中では終わっていなかったのだ。

 戦争から帰った父には両手足が腐って落ちてしまっていた。見た目は乱歩の芋虫かカフカの幼虫なのだが違うのは、芋虫みたいに父は自害したわけでも幼虫みたいに忘れてピクニックにも出掛けていないのだ。

 ただ父は介護のかいもあって三年前に不帰の客となったのだから…。




 女学校に着くと周りは浮かれていた。

 そう、明日からは夏休みで今日は終業式だからだ。

 とはいえ授業は普通にある。

 教室の窓は全開にしても暑くて仕方がない。

 はしたないとは思うが教師にばれない様にスカートの中を下敷きで煽って涼を得ていた。

「静さん大人ですね~」

「恵ってばヤダ~。」

「なになにどうしたの?」

「静の下着がエロいって話♪」

「ヤダヤダ~エロく無いって止めてよ~!」



 ★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


 授業が終わり学校帰りの道で雲行きが怪しくなってきた。

 私は降りだす前に帰ろうと走って帰る事にした。

「この公園を抜ければ近いんだけどね…」

 児童公園と違って所々に木や芝があり晴れた日にはピクニックには丁度良いのだけど…。この曇り空で少々薄気味悪い。

 でも、濡れるよりはマシと園内を走り抜けることにした。


 園内に入って直ぐに後ろから突き飛ばされて芝生に転ばされて…起き上がろうにも目隠しをされて両手と両足は誰かに押さえつけられて動けなかった。

 助けを呼ぼうにも恐怖とパニックで声が出なかった。


 ただ時間が過ぎるのを待ち…『殺さないで』と強く願うしか出来なかった。


 放心状態から回復したときには辺りは暗くなっていて家につく頃には夜になっていた。

 玄関を開けるとそこには実の姿があった。


「姉さんどうしたのですか?」

 実は驚いていた。

 当然だろう。朝はキチンと制服姿だったのが帰宅時には僅かな布切れを引っ付けただけの裸で靴は片方しか無いのだから。

 私は弟に抱きつくと箍が緩んで泣き出した。

 ただ弟は黙ってされるがままでいてくれた。


「姉さんどうしたの?」

 その声はとても優しかった。

 私は今話たらまた泣いてしまいそうだった。


「…食事は?」

 私は首を横に振った。


「…お風呂にしようか?」

 私は首を縦に振る。

 弟は脱衣場まで連れてくると「じゃあ」とばかりに方向転換をするが、私はそれを引き留めるようにシャツの裾を掴んだ。


「…おねがい。一人にしないで…。」

 振り絞ってやっと出した蚊の鳴くような声だったが引き留めるには十分だったらしい。

「…わかった。姉さん。」


「…私…汚れ…ちゃた…。」

「姉さんは汚れてなんかいないよ。少しは泥が付いただけだよ。」

 実の言葉が心に沁みた。

 弟の前で肌を晒すのは不思議と恥ずかしく無かった。

 脱衣場で布切れを剥がすと私はまた恐怖した。

 自分の身体に触れるのが怖くなったのだ。

「…私は汚れてる?」

「大丈夫。安心して。」



「…私恐くて…自分じゃ…駄目なの…だから」

 洗って欲しいと伝える。

 躊躇した実は少しの間眼を閉じると、穏和な顔つきになり。

「…綺麗だよ。姉さん。」


 そう言って手のひらで石鹸を泡立てるとタオルを使わずに優しく洗ってくれた。

 男達に無理矢理された事実は消えないが…弟の優しさで少しは救われた気がした。



 その日の夜から弟と布団を共にしないと眠りに就けなくなっていた。

 一人で眼を閉じると無理矢理されたのを思い出すからだ。


 そしてソレを忘れる為に弟と男女の仲に成るのも時間は掛からなかった。


 夏の間は実は私の傍にいてくてた。

 肌を重ねて互いの温もりを交換しつづけた。


 母にバレるのも時間は掛からなかった。



 夏休みが開ける頃には私は碧葉家に行かされていた。



 翌年、私は女の子を産んだ。



 小春と名付けた。


 この子の父親は多分………。





今回番外でナンバリングしたのは、百合では無いのと構成が二律背反に成ってないからです。


普段から成ってないと言われたら身も蓋も無いのですがね…。


ではまた次回。

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