小春日和。。。。。。
江戸から明治に変わった頃、人々は自由に職業が選べるようになった。
白城家は当時土地を多く所有する、いわゆる土地成金だった。
初めは土地の貸し借りから行い小売や卸売業などで売り上げを伸ばしながら多くの著名人や武家や公家などの華族達との交流も増やしていった。
そして、顧客の知り合いから質に出ない物を購入しないかと誘われた……。それは爵位を金で買える事を意味していた。
正確には位階なのだが、位階も正一位から始まり従八位までの16段階あった。
位階は天皇から賜った由緒ある位であることは変わらないのだけどだからといって裕福であるって話ではなかった。
末端は一般人とさほど違わないかむしろ貧していたと…ゆえに位が売りに出されたとか。
華族会の扱いが宮内庁で行うようになりさらに簡略化され、公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵にわかれた。
白城家は金を積み重ねて従四位つまり男爵にまで登り詰めていた新華族だ。
当時は『勲功華族』『成金男爵』と比喩する声もあったが成金が居るため他の貴族も生活出来たのだ。
結局様々な時代を過ぎて残ったのは白城の名前と屋敷だけだったが、紅緒は先祖からの家を守るのが大事と言われ続けていた。
紅緒自身も正確には白城の正当な血筋ではないけど亡き夫から家を預かった身。本家としての威厳を保たなければ成らないと常に気を張ってきた。
「静。例の話は私が進めておきました。」
「お母様…あんまりではないでしょうか!」
「これは静の贖罪でもあるのですよ。」
静の祈りも虚しく紅緒は冷たく言い放った。
「ならば私が…」
静は畳の後が残るのではと思うくらい額を擦り付けるが紅緒が赦すはずも無かった。
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「さち。いい加減シツコイよ!」
今日これで何度目のアプローチだろうか…事ある事にさちは小春を口説いていた。
その度に七海は律儀に対応していた。
初めは周りのクラスメイトも二人の行動に反応を示していたのだけれど、今では囃し立てる者やニヤニヤと眺める者や関係無く爆睡するのもいるくらいに平常に成っていた。
「シツコイと思うなら七海が手を退きなさいよね!」
「なんで私が退かなきゃいけないの?」
七海はさちの事は嫌いな分けでは無かったが姉が絡むのであれば別問題だった。
「こうでもしないと七海には勝てないじゃない!」
「勝つって何によ!さちは委員長だって任されてるじゃない!」
「任されてる?私が?だとしたら勘違いよね!」
「勘違いってなんで?…ってか何に言ってるのよ!話をすり替えないでよ!」
「…関係あり!大有りですわ!」
さちの目には感情の表れか大粒の涙が滲んでいた。
「委員長の選抜は学業の優秀者が相応しいとLHRで決めたのに…。」
「だから、さちなんじゃない!」
「ふざけないで!…最初クラス委員長の名前が上がったのは七海でしょ!忘れたとは言わせない!!」
「…でも、さちがやってるんだから私より優秀って話だよね?」
七海は入学式が終わって二組の教室でクラス委員長の選抜を思い出していた。
「ではクラス委員長を決めたいのですが立候補が有れば優先しますが…いますか?」
松山先生の声は教室の奥の方に居る七海の場所からもハッキリ聞き取れた。
委員長なんて面倒な仕事を好んでやる人もいない。「居ないのなら白城さんお願い出来るかしら?」
松山先生はお願いという強制を七海に言ってる…理不尽だ。
「…あの…その…私…お姉ちゃん居るからご免なさい!」
七海の発言のあとクラスは静になったが松山先生の吹き出した音につられて教室は爆笑の渦にのまれていた。
「あんな…あんな下らない理由で私が委員長をやってるって考えたから!白城先生と私が付き合えば七海に勝てるのよ!」
七海は納得いかなかった。
さちが小春の事が好きで言い寄ってるならまだ少しは許せた…。
お姉ちゃんに一目惚れするのは解るし理解も出来る!
「お姉ちゃんを復讐の道具にしないで!」
七海はさちに掴み掛かった。
小春の事を本気じゃないと言われたからなのか、道具に見られてるからなのか解らないけど七海は腹を立てていた。
「白城先生には申し訳ないと思うけど…こうでもしないと私が惨めだからよ!」
七海は衆人環視の中、さちに唇を奪われた。
逃げよう…離れようとする度に舌は絡め取られ二人の息は重なり合っていった。
※時代背景など全く正確ではないので、突っ込まれても作者の悶え顔しか見れませんので注意してください!
七海は総受けですが…なにか?