小春日和。。。
高校合格発表。
学生時代の誰もが初めて秤に掛けられ…篩で選別されて生き残って。一喜一憂する。
そして、今日3月18日張り出された番号で七海は勝者である事を高まる気持ちを抑えて右手を小さく握って喜びを表した。
この気持ちは小春姉さんに伝えて初めて成立するんだ!
嬉しさの興奮はただ志望校を合格しただけではない。かつて姉が通っていた高校に自分も入る事が出来た…これが、彼女が努力してきた結果の表れであり誇りだ!
帰宅するとまず自室で待っているであろう姉の所へ走った。お婆様に見つかったら大目玉だけど事情を話せばきっと喜んでくれる。
七海はそう確信していた。
「七海!廊下を走るなんて白城家の女性にあるまじき恥ずべき事!」
「お婆様。ごめんなさい!これには深い…」
「言い訳無用と言いたいですが…話なさい!」
よし!お婆様もきっと喜んでくれる。今日は機嫌がいい♪
「実は、第一志望の高校に合格しましたぁ!」
今日は誉めて貰える!
「それが何か?」
七海の気持ちと紅緒お婆様とでは大きな開きがありけして交わる事はないくらい差があった。ありすぎていた。
きっと、第一志望では伝わらなかったのかもしれない…そう思った七海は再度話してみることにした。
「小春姉さんの母校に受かったんだ…よ?」
「そんなの白城家の人間なら当たり前なこと!そんな事で浮かれているから七海は静と同列なんです!わかりましたか?」
お婆様の言葉の槍は七海を貫き足下の全ての床も地面もガラガラと崩れ去りポッカリ空いた穴はどす黒く七海の足を掴み呑み込もうとするような…こんなのは嫌だ七海はこの場所に居たく無かった…目の前に居るのはお婆様の姿の化け物だ!
七海は、倒けつ転びつ自室に逃げ込んだのだ。
後ろから紅緒お婆様の声がしたけど今は…もう聞きたく無かった。
布団の中でただひたすら姉に助けを求めて泣いていた。
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結局二人が高校の門を通り抜けたのは時計の針は9時を回っていた。遅刻!アウト!
「やっぱダメかぁー。小春姉さんゴメン!」
頭の上で両手を合わせて頭を下げる七海。
申し訳ないと思う気持ちは小春も同じだったがここで水飲みのみ鳥みたいにお辞儀の繰り返しでは余計時間がかかってしまう。
「いいのよ。七海ちゃんも早く行かないと一時限に間に合わないよ♪」
「じゃあ小春姉さん頑張ってね!」
両手を前で拳を作って上下に振って姉にエールを送っていた。
「七海。急ぐのもいいけど、怪我はしないでね!」
七海の後ろ姿を見てから軽く深呼吸をするとよし!と小さく呟くと職員室へ向かった。
「貴女は本当にあの白城 小春さんですの?同姓同名じゃなく?」
遅刻した上に連絡すらしなかったのだから怒られても当然なのだけど…指導教官が鬼の松山とはついてないと小春は思った。
「申し訳ありません。鬼…松山先生」
今日から教育実習で母校に帰ってきたのだけど、卒業して3年先生の移動とかもあり多少変わっていた。
小春は後輩にも好かれる学生時代を送っていたが、その時も松山 依子は行かず後家の鬼の松山。通称 鬼松と生徒から恐れられていたが、当時の彼女は小春を気に掛けていて良くしてもらっていた。
「白城さんには1年2組のクラスに入って貰います。クラス担任は私です。」
「…宜しくお願いいたします。」
「とかく問題が有るとは思いませんが何か有ったら相談すること!」
「はい。」
小春は松山先生の後をついて教室へ向かった。
「今日から白城先生になるのですから、気持ちだけでもしっかりしてくださいね。」
「はい。」
「ところで…白城先生は恋人はいらっしゃいますか?」
「…えっ?えぇ…まぁ。」
「そんなハッキリしない返事だと生徒にやられてしまいますよ。」
そうだった…これから向かうのは恋ばなにうるさい学生達なんだ。
1年2組の扉が開かれる。
近くに居るのに遠すぎる。
教師と生徒の壁。
七海の高校生活を初めて知る小春。
次回:小春日和。。。。
地味なほのぼのを続けてますけど…百合してますか?