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小春日和 終章2

 同日早朝。


 小春は七海の寝顔を見ていた、普段なら逆の立場なのだけど昨日妹を押し倒して彼女が気絶するまで攻めたのは初めてだったが最後に良い思いでが出来た。

 皺くちゃになったシーツを握りしめた七海の寝顔を見ながら手紙をしたため封をする前にペンダントを入れた。


「行ってきます」


 軽めのシャワーを浴びて紅緒おばあさまの部屋に向かうだけ。

 小春は左肩に手を当てる、昨夜七海が付けてくれた歯形を触れるとまだ痛むが妹の所有物に成ってる自分に酔いしれる事が出来た。

 離れの屋敷に向かうと紅緒が薄紅梅色の小紋を用意していて小春は袖を通した。

 半衿と帯揚は白に近い物が用意されていた。



「このお見合いは白城家の未来が掛かっています」

「……はい」


 紅緒は小春の後ろに回ると、御太鼓を広くした名古屋帯で留めた帯留めがキツく胸が苦しかった。


「少しくらいキツくしないと見映えが悪くなるからね」

「……は、い」

「後はコレを持っていきなさい」


 帯と帯留めの間に先端部が紅い黒塗りの櫛を挟む。


「これは?」


 小春は櫛を見るがそれほど高価な物でも無いし、着物の色に合わせるには不自然な光沢のある黒と朱である。

 櫛預ける理由を紅緒に聞きたかったが表に車が停まる音が聞こえた。


「今は解らなくても良いけど、櫛を無くさないように……いいね」


 小春は言葉には出さなかったが肯定の意味で首肯した。

 小春の髪は後ろで一本に纏めて根元を小紋と同色の端切れで蝶結でとめる。

 端切れとはいえ紅白の梅の花が刺繍されてあり、リボンを使う孫を紅緒は普段より優しい眼でみていたのを小春には気付く余裕は無かった。




 車に乗り着いた先は、隣街の日本料亭だった。

 重厚な門に入ると左に緋毛氈ひもうせんが敷いてありその上では野点の用意もされてあった。


「茶会は午後からですが……良かったら覗いていかれますか?」


 小春はその隣の東屋を見ていたが、反対側から声を掛けられ驚きの声を出していた。


「……い、いえ……その……」

「白城でございます、本日は御世話になります」


 しどろもどろで要領を得ない小春を横に紅緒は中居に見合いの部屋の案内を頼んだ。

 中居は小春より少し年上ともとれる目鼻立ちがハッキリした女性で、その眼は猫を思わせた。


「今日は本当に天気が良くてお庭に出るのも良いかもですね!」

「先方は?」

「既に到着しております……葉月の間でございます」


 玄関から暫く縁側を歩いた先に小さな朱塗りの橋があり、離れの欄間には葉月と書かれた看板が掛かっていた。


「ようこそいらっしゃいました」


 中居は入口で正座をすると両手で襖を開けて小春達を招き入れた。

 中に入ると一段上がって襖障子があり、小春は紅緒にならって中に入る。

 部屋はそんなに広いわけでは無いのだけど天井が高いからか圧迫感は無く、左に大きな窓があり縁側に続いていて右側には明かり障子が軟かな日差しを部屋に入れていた。

 ただ左の窓際に男が独り座っていた。

 この男が見合い相手なのだろうか?

 座っているから正確な身長は分からないけど、男は小春より少し高いだけだと思った。


「……覆面?」


 入室に気付いた男が顔を上げるが、白い覆面で隠されていた。


「こんな不躾な格好で申し訳御座いません、しかし覆面を外してお嬢様を怖がらせてしまうよりと考え有っての事ですのでどうか頼み申上げます」


 男は丁寧に頭を下げる。

 その様子に紅緒は腹を立てるでもなく普通に上座に座った。

見合い話が長くなりそうなので中断します。


月刊ペースになってしまった。


また次回ですね。

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