小春日和。。。。。。。。。。。
やっと続きを書く気力が出ました。
小春編もあと数話です。
小春との遊園地デートから戻った夜の事を七海は忘れないだろう。
それは甘い夢物語の終止符。
足元を支えていた地面がガラガラと崩れて落ちていく七海の流した泪と伴に。
事の始まりは偶然だった。
七海は夜中に寝付けずにいたのだがそれは小春とのデートで興奮覚め遣らぬからだと少し恥ずかしく…そして心地よいときめきに浸っていた。
隣で寝る小春は日中の疲れか規則正しい呼吸を繰り返していた。
「今日はお疲れ様でした。小春姉さん。」
そっと小春の頬に口付けをすると七海は自分の唇をそっと指でなぞる。
ただなぞっただけでは感じられない甘い痺れが唇を通して身体じゅうに広がっていくような気がした。
「…これでは何時までも寝れませんね♪」
七海は二人で寝るベッドから降りるとナイトガウンに袖を通しキッチンへ向かった。
キッチンへは部屋を出て庭に面した廊下を通って行かねばならないが今夜は月が明るくとても綺麗だった。
「姉さんも一緒ならもっと素敵な夜でしたのに。残念です。」
『―――――――――――――』
遠くから声が聴こえる。
――あれはお婆様。こんな夜更けに誰と―――
『―――小春との見合いは―――手筈はこちらで―――』
―――な、何?……うそ!お姉ちゃんが見合いって……――
私は悪い夢でも見てるのだろう。
そう、思いたかっただけかもしれない。
白城家では紅緒の言葉は絶対なのだ。
だから故、分家との諍いも無く安全で居られた。
「――あはは…夢、そう!悪い夢。」
しかし、私の悪夢は去ることも無く心の奥に小さな闇を落とした…その闇はまるで棘のように刺さり深く潜りながら回りを侵食していった。
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七海との遊園地デートをしてから暫く、学校ではクラス委員の清水 さちさんの入院と二学年の葉月 向日葵さんの事で緊急職員会議やPTA総会、全校集会などで実に慌ただしい毎日を送っていた。
生徒には刃傷沙汰は伏せていたが生徒の数は教師の数より多いのはどの学校でも同じこと。
それに、閉鎖空間では噂話は尽きないもの。
噂話も数を揃えて共通項だけを取り出せば限りなく事実に近いものが浮かび上がる。
開いた口に戸板は建てられないのは当たり前。
その事実から逃れるように終わった小春の教育実習。
そして、今朝。
「小春。紅緒がお話があるそうです。」
「お母さん。」
しかし、静は小春の言葉を聞かずだだ『ごめんなさい』と一言残して去っていった。
小春は紅緒の居る離れに向かった。
――最近の七海。元気無いな…私の実習が終わったからかしら?――
小春は紅緒の部屋の前で正座をすると閉じた襖の向こうにいる紅緒に入室の許可を求めた。
中から返事がくると小春は襖を開けて中に入り襖を閉めてから紅緒に向かい直してお辞儀をする。
「小春よく来ました。」
「お婆様、それでお話とはなんでしょうか?」
紅緒は静に小春を見る。
ただそれだけの事で小春は緊張した。
「小春が白城家の本家に住むようになって随分と経ちましたね。」
「はい。」
「小春も知っての通り現在の白城家には男性の跡目がいません。」
薄々気付いてはいたが、解ってはいたけど改めて言われると小春は辛かった。
――お父さんの存在自体無いものと考えですか!――
小春はそんな気持ちを振り払うように視線を下に落としてから再度紅緒の目に合わせた。
「そこで、小春には婿を取って貰う為に明日見合いをしなさい。」
「………明日って急過ぎます。お婆様。」
「何時なら急じゃなくなりますか?」
その答えは小春には出すことが出来なかった。
ただ黙っているしか無く、痺れを切らした紅緒。
「小春!この程度の内容で言葉を詰まらせる様では白城家は務まらないですよ?明日は車を手配しましたから8時時間厳守分かりましたね!」
「…………………………ハイ。」
小春の抵抗は紅緒の前では泣かない。
それが唯一の抵抗だった。
部屋から出て襖を閉じると涙が溢れてきた。
「………………嫌だよ……七海………。」
やっと思い描いたラストに近づきました。
抗うことも出来ない壁は出てきたのではなく自己によって産み出されたと気付かないうちは越える事は無いのだろう。
そして、どんなピンチも乗り越えるのが格好いいのではない。
どんなピンチもできる前に片付ける奴が一番良いのだ。




