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番外の2 届かない太陽。

えっと。


血塗れ系が駄目な方は注意。

痛い描写は控え目のマイルド仕様にしてますが…


駄目ならごめん。

 悪い思考はやがて言葉になって出るだろう。


  悪い言葉はやがて行動になるだろう。


  そして行動はやがて習慣化して…


  習慣は人生そのものになる。


  先ずは思考から改めよ。



 さちの日常は向日葵によって非日常へ塗り替えられた。

 シャワー室で奪われて以来、葉月 向日葵の行動は大胆になっている。


「向日葵。こんなのおかしいよ!」

「おかしいって、何処が?」

 ここ数日さちは自宅と葉月家の交互で朝を迎えていた。

 こんな爛れた生活は嫌だとばかりに必死に訴えるが向日葵には届くことはなかった。


 キスも出来る程の距離にいるのにどうして届かないの…?。

 清水 さちの素直な気持ちだった。


「私は七海のことが好きなの!」

「私はさちだけを見てきたわ。」

 だから知ってると向日葵は答える、さちには想定内の答えだ。

「さちは七海が好き…私は、さちが好き。これの何処が間違ってるの?」

 文字通りに視たら間違ってはいないのだろう。

 でも、根本的に食い違っているのだ。

「私は向日葵の気持ちに答えられないの…ごめんなさい。」

「さち。幼馴染みの私にそんな嘘が通ると思うの?」


 ――本当に嘘をついているのは、誰?――


 ――真実は知りたくない!…苦しいから…――


 ――だから――


 …………だから。


「向日葵。…だから…もう。」

 泪を浮かべながらも真っ直ぐに見つめる。さち。

 それが酷く辛かった。

 悲しかった。

 憐れんで欲しくなかった。


 だから。



「 もう。…遅いよ!頭の天辺から足の爪先まで髪の毛一本だって…さちは私のだから!!」

 突然豹変した向日葵に対応が遅れたさちは簡単に倒された。

 それでも悲鳴一つ上げないでさちは向日葵を見つめていた。

 乱暴に唇を重ねても…胸を揉みしだいても、さちは抵抗すらせずにされるがままでいた。


 馬乗りになっていた向日葵の動きが停止する。

 それと同時にさちの右手が優しく向日葵の頬を撫で上げ髪の毛で隠れた顔を晒した。

「なんで襲ったほうが…泣いてるの?」

 向日葵は指摘されるまで泣いていることすら気付かなかった。

 涙はさちの手のひらをつたいポタリと落ちる。


 さちは向日葵の背中に腕をまわすと優しく包こんだ。

 向日葵の身体は重力に逆らわずにユックリさちに被さっていった。


「向日葵。もう、大丈夫?」

 向日葵の頭を撫でながらさちは話し掛ける。

 向日葵の首は縦に動く。


「…でも、私の身体も髪の毛一本まで向日葵にあげる約束してないよ?何かと交換なら…いいよ。」

 向日葵の身体がピクンと動く。そんな単純な彼女をさちは可愛く思えてきた。

「さちが望むなら何でも…何でもあげるから。」

 向日葵はすがるように見つめる。


「なら…。」

 さちの言葉に耳を傾ける度に向日葵の顔色はどんどん悪くなっていった。後は、さちから離れるとフラフラっと立ち上がり部屋から出ていった。


 ★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


 さちは学校の屋上で景色を眺めていた。

 ここからは見馴れた町並みが見えている。

 今は授業中で、さちは初めてサボタージュした。


「さち!」

 声の方に向きを直して見つめた。

「来てくれたんだね。ありがとう……七海。」

 あれからずっと避けられていた七海に罠を仕掛けた。美術図鑑の上に乗せた檸檬くらいの破壊力の罠だ。

「それよりも約束…。」

「男女問わずがっつき過ぎるのは良くないわよ?」

 チラリと屋上の扉に目を向けると七海に視線をもどした。

「見損なったよ!…まさかこんな手段取るとはね!」

 七海は写真を突きつけてきた。

 さちが早朝から七海の机の中に入れてた手紙の内容物の一つだ。

「綺麗な仕上がりでしょ?あまりにも良かったからお裾分け♪」

 七海と小春の校内での接吻写真。

 本人達は注意深く行動してるつもりでも非日常が日常に成ってる彼女達には分からない…気付きもしないのだろう。

「七海は手紙も読んでくれなかったの?これじゃあ私が脅迫してるみたいじゃない。うふふ。」

 さちは七海を見ながら後退をしてそのままフェンスに寄りかかる。

「残りの写真とネガを渡して!」

「本来写真もネガも七海あなたの物じゃ無いって解って言ってるの?ただじゃないのよ!」

「お金なら払うから…」

端金はしたがね貰ったって仕方無い。そこらの四歳児だってマシな買い物するわよ?」

 七海の顔が苦渋に歪む…さちはこの顔を見たかったのだと。

「…な、何を笑ってる!」

 さちは驚いた。

 確かに自分は笑っている事に。

「そんなに取引したいならしてあげる…私にキスをしなさい!…もちろん七海からね♪」

 七海は眉を少し動かすとさちを捕まえるために動く。


 ――無理をしてるのはバレバレですね。膝が震えてます。――


「するぞ!」

 怒りを露にしてるのだろうけど…眼が血走り息が荒いと強姦魔とかわりませんね。

「がっついてくれるのは嬉しいですが…折角キスなさるのですから。気のきいた言葉くらい欲しいですわ。」

 頭一つ伸長差があるから見上げる形になるのは、さち。

「…くそったれ!」

 被さるように乱暴な口付け。


 向日葵に受け身のキスを教え込まれた身体は七海の舌を絡めて受け入れた。


 上顎を舌でなぞられる感覚は気持ち良かった。


 口腔を動物的な動きに対して広がる香りはまるで果物のようだ。

 甘い果汁にさちは喉が鳴った。


 そんな中で目の端に光る何かをさちは見つけた。役者は揃った!


 さちは七海に抱きつきながら身体を回転させてフェンスに押し付ける。

 七海の前方から呻き声が聴こえて、目の前が明るく成った。

 栗色のショートカットの女生徒が腰を曲げてガタガタ震えていた。

 下を見るとさちが倒れていた。

 右肩に何か棒が刺さっていた。


 七海は状況が把握出来ずにいたがただならぬ空気に呑まれた。

 さちの意識があるか確認するように側により声をかけようとする。

「…さわるな!」

 その声はさちでは無い。先程震えていた女生徒だ。

「それは、私のだ!汚い手で触るな!!」

 女生徒はさちに声をかける。

「…約束は守ったよ。さち。」

 さちは女生徒の耳元で何かを呟く。

「白城…後で話があるから!」

 女生徒はさちの肩に触れないように注意をしながら抱えると屋上から離れていった。


 一人残された七海はその場でペタリと腰を落として目の前の染みを指先で触れてみた。

 指先は紅く染まった。


「………」


 血液だった。



 その後は七海は何をしたのか分からなかった。

 ただ常に携帯だけは握っていた。

 そんな携帯にメールが届いたのは夕方だった。


 そこにはただ総合病院のロビーで待つとだけ書かれていた。


 七海は急いで現地に向かって移動した。


 病院に着くとそこには屋上で会った女生徒がいた。

「白城。こっち!」

 七海はこの女生徒を好きにはなれないけど名前を知らないのも不都合だと考えた。

「貴女、名前くらいは教えてくれない?」

「名前を名乗ってからが常識だろ?」

「私は白城 七海。一年生です。」

「知ってる。」

 やはり好きになれそうに無い。七海だった。

「私は、葉月 向日葵。二年生。」

 名乗ってる間に病室に着いた。

 中に入るとベッドは一つ。個室のようだ。

「七海。驚かせてごめんなさい。」

 さちはベッドを起こして座った形にしている。本当は起き上がるのも困難なのにと七海は考えたが理由を知りたい好奇心が先に出て口には出さなかった。

「事態が掴めないのだけど。大丈夫なの?」

「ありがとう。奇跡的に神経を一本も切って無いって…でも沢山の人から怒られた。」

 あははとさちは笑った。


「あっそうだ。忘れないうちに。」

 さちは、七海の手に半透明の切手サイズのケースを渡した。

「これは…?」

「写真のデータ。安心して複製もネットにも流してないよ。」

 ケースは血液を拭き取った後があった。

 七海はポケットに仕舞うとさちに視線をあわせる。


「今回私は七海を巻き込んだとは考えて無いからそれ以外の謝罪になるわね。」

「巻き込む?というか、葉月さんってさちを刺した人だろ?」

「そこは安心して、向日葵は私の所有物だから望まない限り攻撃はしないわよ。」

「…でも。」

「あれは、私を狙うように仕掛けたから。最初から七海を怪我させる積りはなかったわ。」

「何故私の前である必用があった?」


 ――必用。これは必用。――


「私の私である為に必要なけじめ。七海を忘れる為に必用な儀式なの。」

「ならこれからは友達として…」

 そう、これからは友達としてやっていけるはずだ。


 しかしさちは首を横に振る。

「それは無理。七海を見る度に傷が痛むから。」


 だから。


「退院したら…私は転校します。だからお別れです。」


 想い出をありがとう。

 本当に初めてだったの。

 人を好きになったのは初めて…。










さて番外ですが本編でもあります。


やっと話がすすんだね。


展開は君の想像通りか答え合わせだ!


では。また次回。

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