小春日和。
短編 二人三脚。よりずっと前。
白城 雪もまだ居ない。
小春と七海…二人の姉妹の物語。
「ねぇ小春姉さん起きなよ遅刻するよ!」
小春は朝が弱い。
だからベッドには4つ目覚ましがある。
ぺんぎん、くま、爆弾、ベルの大きな目覚まし時計だ。
その内の一つは彼女の自前だけど残りは誕生日に寝坊助な姉に七海が贈った物だ…でも、6時に大合唱してるのに起きるのは同室の七海一人だけだった。
だからといって七海に不満は無かった、小春の寝惚け顔は七海のご褒美だからだ。
「そろそろかな。」
七海は携帯をカメラモードにして小春の顔に焦点をあてる、サン、ニイ、イチ…携帯の画面は画像をメモリーカードに保存しましたと出て再度撮影モードになるが画面の小春が半目を開けてムニャってしたからファインダーから外すしてライブで楽しんだ。
「…七海酷いよ、起きてるならお姉ちゃんも起こしてよ!
」
小春はたっぷりバターを塗ったトーストを食べつつも文句だけはやめなかった。
「おいおい!あんまり動かないでよ大事なところなんだからなぁ」
朝一番の寝顔を写して彼女の髪に櫛をあてるのは七海だけの日課で楽しみだ。
短く癖っ毛な七海は小春の艶やかで絹の糸と思える黒髪が大好きだった。この黒髪に包まれて眠りたいほどだ。
「いつもお姉ちゃんばかりお世話されるのは嫌なの!七海と朝ご飯用意したり…食べさせっこ…」
「はあぁい完成!今日も小春姉さんは可愛いぞぉ」
「それじゃ誤魔化されないんですからね。」
小春は椅子から立ち上がって七海の方に向いてニッコリと笑った。
七海の顔が紅くなって視線を反らすのを確認して満足感を得ることが出来た。
「…え、と。小春姉さん…ちょっとこっち。」
「なんですの?」
七海は小春の右頬の口近くをペロリと舐める。
「パンがついていたよ」
小春は耳元でそう囁かれ七海以上に紅くなっていた。
「…もっと、もっと沢山のパンが貴女についてます…わ」
「…さすがに…」
七海は困惑気味に返答するが。
「ついてるって言ったら…ついてますの!…ついてなきゃダメなの!!」
恥ずかしさに瞳をうるうるしてる小春に完全敗北した。
「…ならパンが無くなるまで頼むよ」
小春は初めは弱々しく口から遠い両頬から啄むように梨香の侵略を始めた。
〈七海の頬っぺたはスベスベしてとっても甘いの知ってますの?〉
「まだパンはついてるかい?」
〈これ以上は遅刻だよ。パンどれだけついてるんだよ!パンに頭から突っ込んだのか?〉
「まだついてる…例え鏡に写らなくても…私には見えるんだからぁ!」
普段はおとなしい小春が大声出すのはそうはないから七海には嬉しく思うだが…。
小春に抱きつき唇を重ねる…姉は抵抗するが七海の勢いはとまらなかった。
もう逃がさないとばかりに姉の顔が近づくように自分の舌が深く入るように固定した。
小春は息がしづらくて抵抗するが形ばかりだとじぶんでも知っていた。だから七海のキスで腰が抜けそうになる自分の身体が怨めしかった。妹の背中に自分の爪痕を残すのが小春の唯一出来た抵抗だった。
「…小春姉さん…ごめん。遅刻。」
「え!?…ゴメンじゃないよ!私今日から」
慌ただしくも、白城の屋敷を後にした。
えっと、二人三脚を膨らませたのが欲しいと要望がありましたのでやってみました。
でも、ただ膨らませるなら小春と七海には悲恋は外せないかなって…。
少々お付き合い下さい。