第4話「調達」
二人の男がカルナダ連合軍駐屯地前で今か今かと、潜入のタイミングを伺っている。
ダンはタイラーと昨晩立てた作戦を思いだしていた―――
ダン 「良いか?俺がカルナダ軍の格好をして何気なく基地へ潜入する。目標は車両の奪取と武器の調達…、あと地図だな。」
タイラー「んで俺はこの拡声機を基地内周辺にばらまけばいいと…」
作戦はこうである、二人はカルナダ軍の兵士を装おり、タイラーが拡声を仕掛ける。自分達の情報を拡散する事によって基地に混乱を発生させる。
そして混乱に乗じて物資を頂き脱出するというものだった。
この拡声機はマイキーお手製のものでありジープに大量に積んでいた。
2人の男はまじまじとカルナダ軍の駐屯地を見つめる。
ダン 「結構なでかさだな…」
タイラー「これなら、嘘の一つや二つ位大丈夫かもな」
ダンは何かを決心した様に話す。
ダン 「よし、そろそろ行くか。」
2人はカルナダ軍の門衛所まで近づく。門衛所では2人の兵士があくびを掻きながら見張りを行っていた。
1人の兵士が近づくダンとタイラーに向かって。
「おい、止まれ。」と言って
「何だ、味方か…。巡察かい?ご苦労なこって…」
タイラーが自然に会話を膨らます。
タイラー「たまには体を動かすのも悪くねぇぞ?お前らも一緒にどうだ?」
軽く談笑して門衛所を通り過ぎようとすると。
「おっと…、身分証を確認するのを忘れてた。」
2人は動じずにサッと身分証を差し出す。兵士は軽く見て一言
「よし、通ってよしと…」
2人は門衛所通り抜けると溜息をついた後言葉を交わす。
ダン 「あいつらから徴収した身分証のおかげで助かったぜ。」
タイラー「警備は割とざるなようだな。しかし…俺の格好を見て奴ら何も思わなかったのか?」
ダンはタイラーの格好を見て笑いそうになったがグッこらえた。タイラーの体が大きかったためサイズが合ってないのである。
逞しい筋肉のおかげ服はパツンパツンとなっていた。
2人が通った後に門衛所のもう1人の兵士が口を交わす。
「あんな奴基地にいたっけか?」
「さぁ、新しく転属して来たやつらじゃないか?それよりも俺はでかい奴の格好に笑いそうになったよ。」
「あの格好はなぁ…、まともな被服を支給されなかったのか?」
と門衛所からはのんきな笑い声が聞こえてくる。
2人は門衛所をチラリと見ると…。
ダン 「のんきな奴らだな…。さて、と。俺は物資の場所を確認してくるからお前は作戦通りの行動に移れ良いな?」
タイラー「分かった。何かあったら無線で連絡をよこしてくれ。」
2人はそれぞれ自分の仕事に取り掛かる、ダンは基地内の探索を、タイラーは所々に拡声器を仕掛けていく。
基地内では新しく転属されてきたばかりと思われる、兵士達が司令の前で待機していた。
「君たちが我が基地に配属された隊員かね?」
と全体を1人1人見渡していく。
「トッシュ・アンドリューズ.Jrはいるか?」
はいと言う返事が部屋にこだまする。
トッシュ「私に何か御用ですか?」
「君がS・Sの一人、≪イグニス・ヴォルケイノ≫か?力を見せて欲しいのだが?私はミーハーなものでな…」
トッシュは手の平の上で炎を噴出させてみせる。たちまち部屋内では司令の歓声が響き渡る
「素晴らしい!私もそのような力を持ってみたいものだ。ここでも変わらずに任務の遂行を発揮させてくれ。
ダンは基地の宿舎で地図やらなにやらをくすねる。
タイラーから通信が入る拡声器のばらまきが終わったとの事であった。
タイラー「ダン、こっちの作業は終わったぞ次はどうすれば良い?」
ダン 「こっちは物資の調達中だ、使えそうな車両があったら持ってきてくれ。終わったら連絡するせいぜい見つかるなよ。」
通信は途切れる。先程会議を終えて出て来た。何気なく歩いていた転属さればかりの兵士2人がダンを見つけて話かける。
トッシュ「今日から中央部から転属して来た。トッシュ・アンドリューズ.Jrだよろしく。よかったら基地の案内をしてもらっても良いか?」
レクソン「同じくレクソン・ディミトリーアズだよろしくな。」
ダン 「あ、あぁよろしく…、俺はこれから仕事があるんで失礼するよ。」
ダンはつたない返事をした後に2人を振り切る。
後に残されたトッシュ等2人は先程の兵士に対して愚痴をこぼす。
トッシュ「挨拶くらいまともにできないものかねぇ…。せっかく自己紹介して交流を深めようと思ったのに…」
レクソン「まぁいろんな奴がいるさ、気にするな。」
ダンはタイラーに連絡をする。
ダン 「タイラー、そろそろ行動を開始する。手際よくやれよ?場所はさっきのところで落ち合おう」
タイラー「分かった、お前こそ気をつけてな…」
静寂した基地内にダンの声が響く―――
≪俺はニューアスメリア軍のダン・クーリッジだこの基地のいたる所に爆弾を仕掛けた―――今から20分後に爆発するよう設定した―――≫
基地内の兵士達はこの放送を聞いた後、慌ただしくなる。
トッシュ等2人は先ほど会話した兵士の事を思い出していた。
トッシュ「クソッ!敵はどこにいるんだッ⁉」
トッシュは敵に対し怒りを感じている。その傍らでレクソンはさっき会話した兵士の事を思い出していた。
レクソン「…、もしかすると案外この基地にいるかもしれん。トッシュ!入り口を封鎖するぞ!!」
ダンはタイラーのとの待ち合わせ場所を目指して走っていた。瞬間ダンの目の前を炎の柱が横切る間一発かわして立ち上がり…
ダン 「雷の次は炎か何でもありだなこりゃ、お宅ら何か人間以外の物でもいるのか?」
レクソン「やっぱりお前か…、お前アスメリア訛りが酷いんだよ。」
ダン 「っへ、そうか、今度から直しとくよ。」
トッシュ「御託は良い、コイツでどうだ!」
トッシュはダンに向かって火柱を浴びせかける、これも何とかかわして凌いだが、徐々に建物隅へ追いやられていく。
レクソンはダンに銃を向け。
レクソン「どこの部隊だ?誰に頼まれた?」
ダン 「ハァ…ハァ…、俺達は脱走中だ、誰にも命令なんてされてないぜ…」
息をきらしながらダンは応える。
レクソンがダンに向かって「達?」と問いかけた瞬間トッシュに向かってロケットランチャーが放たれる。
タイラー「オーイ、ダン大丈夫か?」
撃ったのはタイラーだった。
トッシュは慌てて炎の防壁を作りだし相殺させる。
2人がダンに目を追いやると。ダンは2人に向かって何かを投げつける。
そう手榴弾である。
トッシュ「こんな物オレに利くわけ…」
トッシュの手から炎が放たれる、投げた手榴弾と炎がぶつかりあった瞬間―――
辺りに目を覆いたくなる様なフラッシュが広がる。ダンが2人に向かって投げた物は閃光手榴弾だった。
2人は目を覆いその場にうづくまる。
トッシュ「チッ!目がッ!!」
レクソン「クソッ!さっさと撃ち殺すべきだった。」
ダンは急いでジープに乗り込む、そしてトッシュとレクソン2人の後ろにある給水タンクを打ち抜く。2人に対し大量の水が覆いかぶさる―――
ダン 「これで簡単にはそのおかしな能力も使えねぇだろ!逃げるぞタイラー!」
タイラー「よし、このまま門衛所を突破するぞ!」
2人はその場を後にして門衛所を目指す。
ジープは勢いよく門衛所を突っ切り、広い荒野へと姿を消していった。
それから間もなくして2人は何気ない場所でジープを止める。
ダンは不思議そうに後ろ周辺に目を追いやる。
ダン 「おかしいな?追っての1人や、2人来てもおかしくはないのだが…。」
タイラーが自慢気な顔で話す。
タイラー「安心しろダン、残りの車両は全部ぶっ壊しといた。奴ら今頃ぶっ壊れた車を見て歯ぎしりしてるだろうぜ…」
基地ではトッシュ等数名が愚痴をこぼす。
「駄目です。車両はどれもこれも全部破壊されています!」
「治すのにはそれなりの時間がかかります。」
レクソン「敵にしてやられたな…」
トッシュ「あぁ…、あの兵隊オレの他にも同類を見てたらしいしな…。」
カルナダ軍基地の兵士達は基地の修復作業に追われるハメになった。
ジープ内でダンが地図を広げる。
ダン 「ここら辺に向かってみるか…、どうせあいつらも死んじゃいねぇだろうしな…」
タイラー「バリーが付いてんだ大丈夫さ、そろそろ出発するぞ。」
2人の男は夕日が照らす荒野の中、車を走らす。
仲間達を目指して…