第2話「逃避行」
登場人物紹介
・ニューアスメリア合衆国
「ティナ・タイラン」
19才・女、看護衛生を担当する。割りとお人良しな面がある。
性格は凛としていて頑固、そのため柔軟性に欠ける事もある。
マイキーとは同期でもある、趣味は観葉植物を育てる事。
・カルナダ連合
「ガフガン・ストロース」
31才・男、特殊部隊≪デスゲルイズ≫隊長。愛国心が強い。
目的達成のためには手段を選ばないが、部下を見捨てるようなまねはしない
趣味はワインをたしなむこと。
「トロン・ハート」
24才・女、S・Sの一人、通称「ブルー・ボルト」雷を操ることができる。
理性的だが体内の雷を抑えるための薬の副作用で頭痛に苦しむ。
趣味はトライアスロン。
トロンは15才の頃、自宅に帰る途中、雷で全身を打たれる、奇跡的に一命をとりとめるが、どういう訳か彼女の体には電流が残留しており慢性的に放電するためひどく苦しんでいた。そのため、その特異な能力に目を付けた軍との取引で雷を制御する術を得る代わりに軍属となった。
S・S
「ブルー・ボルト」能力所有者:カルナダ連合「トロン・ハート」
特徴
・雷を操った攻撃をする、また雷を纏う事もできる。
・発電など色々応用する事が出来る。
短所
・所有者自身に雷を貯めておく限度がある。
・障害物(木、建物等)があると不利
・狙った攻撃が苦手で、両腕に付いている腕輪を破壊されると雷が制御できなくなる(所有者自身の問題)
―――カルナダ連合・前線基地廃墟
トラックが到着してから小一時間が過ぎようとしていた。兵士達は先程の戦闘がなかったかのように着々と金塊を積みこんでいく。
ふと先程の戦闘で捕虜にしたかと思われる敵兵を横目にしながら、大柄な黒人男性が親友に口を開く。
タイラー「本当に脱走するのか?プランはあるのか?俺はてっきりジープが故障してくだらねぇ冗談だと思っていたんだが。」
ダン 「お前も見ただろうが、プランは…まぁ考えてある、大丈夫だ。」
先程の戦闘で負傷した青年チェイスは衛生兵と思われる女性兵に手当を受けていた。
厳しそうな表情をした、女性兵士はテキパキと治療をしながら、心配そうにケガの具合を尋ねる。
ティナ 「弾は貫通してあるから大丈夫だと思うけど他に痛い所はない?あったら遠慮しないでいってね?」
チェイスは心配するティナに心配させないように、安心させるように穏やかな表情で一言大丈夫だ、と言い放つ。
先程から不満そうなマイキーがぶっきらぼうに言葉を遮る。
マイキー「ケガの手当が終わったらさっさと金を運ぶのを手伝え。お前が間抜けだったからこっちは大変なんだぞ?」
どうやらこの少年はティナとチェイスが近い位置にいる事が気に食わないようだ。ティナは険しい表情をしながらマイキーに言い放つ。
ティナ 「ケガ人にひどい事言わないで、あなたこそぶつくさ文句を言ってないで動いたらどうなの?」
ティナの正論に対してマイキーは何も言い返さず作業へと戻って行った。
一方バリーは捕虜に対して尋問を行っていた。
バリー 「本当に作戦内容について知らないんだな?それじゃあ聞くがこのS・Sってのは何者だ?」
「我々は本当に何も知らないんだ。ただ軍の上層部から戦局に左右する積荷があるから回収してくれとしか…」
隊長と思われる横でもう一人の兵隊が口を開く。
「そういえば軍の研究所に超常現象を引き起こすような人物がいると聞いたことがある…」
バリーは冷静に一言続けろと言い放つ
「見たことはない、人づてに聞いた噂が一人歩きしただけかもしれない。そっちにだってあるだろ変な噂の一つや二つ」
バリーはクシャクシャになった煙草を手に取りに火をつけながら、ふっと溜息をつく。
彼は武器の横流しをしていたためにそれなりの規模の人脈を持っていた。亡命先へどのようなルートを通ればいいか等、考えていた。
無線機から連絡が入る、ダンから一度集まれとの事だった。
仲間を一人々見回しながらダンが脱走をする事を声明する。重要機密を知らなかった何人かの仲間は悩んではいたが、手に入れた情報で軍を告発したいと言ったため自ずとみな、ダンに同調した。
それから物資を全て積み込み終わってから、数分の事――――
ダン 「これから俺達6人は東部戦線・東部を突き抜けてアージニア共和国へと向かう。以後の指揮は俺が取り持つ、いいな?」
皆不服はなかった。ダンは続けて喋る。
ダン 「みんな出発の準備をしておけよ。直ぐに出発する」
各自、各々装備品の点検に入る。
ダンは先程捕虜となった3名の所へ向かって言った
ダン 「俺達はもうすぐ出発する、悪いがアンタ等は素っ裸でここに置いていくぜ?多分戻ってこないアンタ等を探しにここまで追って来るだろうしな。」
隊長はうなだれるように喋る。
「命があるだけマシだ、それよりもアンタ等こそ気をつけるが良い…本隊は俺達と違って優しくないぞ!」
ダン 「せいぜい肝に命じとくよ。」
バリーがダンに向かってクイクイっと手を振る。
二人の男は乗って来たジープに乗り込み、残りの四人はトラックへと乗り込み六人の脱走者はその場を後にした……
***
それから何時間経過しただろうか?空はすっかりと暗闇になっていた…
運転席で険しい表情をしながら運転をしているバリーに、眠ったようにしか見えないダンが話しかける。
ダン 「そろそろここら辺で野営するか?」
バリー 「俺の前ではその腹話術をやめろ。」
すまなそうに照れてるダンを見ながらバリーは続ける
バリー 「確かにそうだな、もうかれこれ五時間は運転している流石に疲れる、特にマイキーやティナはまだ若い、休ませてやるか。」
ダンはジープに積んである無線機に放って、そろそろ野営の準備をすると言い放つ。
無線機からタイラーの陽気な声が返ってくる。
タイラー「やっと休めるのか、そろそろ運転にも飽きてきた頃だ。」
と無線機の向こうでタイラーははしゃぐ、ダンは続けて言い放った
ダン 「よし!!車を止めるぞ」
二台の車はその場で止まると辺りを警護しながら、野営の準備を始めた。
ダンとタイラーは周辺探索、残りの四人でキャンプを組み立てる、トラックで調理をしているチェイスにティナが話かける。
ティナ 「ケガしているなら、休んでなきゃだめよ。」
チェイスはプロの料理人の様に食材をさばいていく、それもそのはずだった彼は幼少の頃から自分の親のレストランの手伝いをしていた。心配をしている、ティナをよそに
チェイス「撃たれたとこはあまり痛くはないんだ、それに休んでばかりもいられないしね、ところでこの料理を試食してみないかい?」
と言うと、黙々と料理を完成させていった。
差し出された料理を試食したティナは、その旨さに賞賛するとともに女性としてのコンプレックスを促した。
ティナ 「とてもおいしいわ、でも女性の私としてはちょっと嫉妬するわ、ねぇ
今度料理の仕方を教えてくれない?」
チェイスがうんと頷くと彼女はまた野営の準備に取り掛かって行った。
バリーとマイキーは拠点となるテントを張っていた。野営の場所に対して不満気味のマイキーはバリーに対して不満を言いもらす。恐らくは森林地帯で虫に刺されまくったのだろう。
マイキー「なぁバリー、何でこんな森林地帯なんかに野営をするんだよ、あちこち虫に刺されて、たまんないぜ。」
不満をつのらす少年に対して一言バリーは放つ。
バリー 「マイキー、野営の準備が終わったらお前にはやってもらう事がある、簡単に休めると思うなよ?」
マイキー「えぇー⁉、そりゃないっスよ、先輩」
と喚くマイキーをよそにバリーは着々とキャンプを建設していく。
ダンとタイラーは野営建設予定地から半径1Kmをぐるっと周回していた、不意にタイラーは沈黙に耐えられなくなったのか、ダンに冗談を飛ばす。
タイラー「隊長どの!前方に裸の女性数名がこちらに敵意を向けて近づいております!いかがいたしますか?」
ダン 「よーし、我々はこれから難攻不落の美女達を口説き落とす、童貞を捨ててない奴は死ぬ気で口説け!タイラー曹長、前へ…て、いきなり何言わせんだ恥ずかしい」
冗談を言いながら、二人は笑う、と続けて昔の事を懐かしんだダンが続けて言い放つ
ダン 「軍隊に入ったばっかの時は、よくみんなして上官のまねして叱られてたっけな、お互い国を守っている使命感に燃えたりしてな―――」
タイラー「ささいな事でもすぐ喧嘩になったしな」
二人の男は巡察を終えたとの報告を一報すると、野営地点へと戻る、そこには立派ではないがそれなりのキャンプが張ってあった。
一堂は食事をしながらそれまでの疲れを癒す。食事を大体終えた頃にバリーが今後の部隊方針を伝える。
バリー 「アージニアへの道のりは長い、恐らく俺達を探すため本国からも捜索隊が出るだろう。ガソリンだって無限にあるわけじゃない、取り敢えずは俺とダンとタイラーで見張りをする。夜が明ける前に出発するマイキーお前は今から近くに町か何かある所を探せ、丁度トラックに 一台パソコンがある。他は車で休んでいろ。」
と締めくくると一堂はそれぞれの行動に移って行った。
それからしばらくして、恐らくは深夜すぎだろうか暗闇に不相応な光の前でマイキーはパソコンのキーボードを叩く。趣味がハッキングなためアージニアのネットワークへと易々と侵入していた。
バリーから言われた事は二つだった。一つ目は「クラックス」と言う武器の密売組織と連絡を取る事、二つ目は逃走経路に敵国の基地らしき物があるかどうかだった。
マイキー「ブロックがきついこな、このコードはどうだ?」
少年はさらに続ける。
時は今から遡る。カルナダ連合陸軍特殊部隊≪デスゲイズ≫は廃墟となった自国の前線基地で捕虜の介抱を行っていた。
隊長のガフガンは隊員から報告を受ける。
「死亡が確認された3名を除き、生存者は3名です。」
ガフガン「ご苦労、君は下がって良い。生存者をここに連れて来てくれ。」
「ハッ!、ただいま!」
隊員は来た道を引き返し隊長以下3名を連れてくる。
ガフガンは生存者をねぎらった後に質問をしていく。
ガフガン「まずはすまなかった。けして君たちの能力が低かった訳ではない気に
病まないでくれ。」
先発隊の隊長だった男はねぎらい受けた後に口を開く。
「戦争をしているのです…、仕方ないとしか言えません。それに敵の兵士は捕虜になった我々を無闇に殺しませんでした。任務の失敗は任務で取り返します。」
残り二人の兵士も後に続く、闘志はまだ衰えていないようだった。
神妙な顔つきでガフガンは励ます。
ガフガン「そうかわかった、このまま本体に合流してくれ。所で敵は何人だった?その後どこへ行った?」
そう尋ねるともう一人の隊員が口を開く。
「敵とは実際に戦ったのが4人でした。後から2人増えて6人だったときおくしています。あ、あとそれからS・Sとは何かと問われました。」
と思い出したかのように付け加える。
唐突に無線機から連絡が入る。
「ニューアスメリア軍の兵士10名程がこちらに向かって来ています!!」
ガフガン「察するに恐らくは脱走した兵士を探しに来た、捜索部隊だろう。なんの事はないブルー・ボルト以下5名で敵を撃退しろ!」
森林地帯・捜索隊
ダン以下6名を探しに来たニューアスメリア軍の兵士は捜索隊と思われる隊長に不満をもらした。
「隊長?今日はもう脱走兵探すの辞めませんか?こんな事してる場合じゃないっって…」
「そうだなお前の言う通りだもしかしたら入れ違いにかえっているかもしれん。」
納得そうな顔をしている兵士を見ながら隊長は頷く、別の兵士から連絡が入る
「隊長!何か建物を見つけました!!ん⁉何だ⁉うあああぁ!雷…」
銃声とともに無線が途切れる、隊長は何度もコールを繰り返したが声が返ってくる事はなかった。
「各員、戦闘配備しろ!!敵がすぐ近くにいる!」
隊長が無線機に向かって叫ぶ―――
森の中であちこちに銃声と悲鳴が交互する。ブルー・ボルトと呼ばれた女性は味方の援護射撃を受けながら、敵に向かって手の平から放射線上に雷を放出する。
ニューアスメリア軍の捜索隊は一人また一人と倒れていく
トロン 「これで何人目!?さっさと戦闘を終わらせたいわ…」
「今ので、8人目です!」
そういうと茂みから顔を出した敵兵2人に向かって雷をさらに放出する。
「ああああぁぁぁぁ!!」
「がぁぁ」
断末魔をあげながら敵兵は倒れていく。
更に前方から2人先程愚痴をこぼした、兵士と隊長が銃を乱射させながら迫ってくる、トロンは二人に向けて雷を放つ、片方の雷は兵士にあたりその場で崩れ落ちたが、隊長の方は咄嗟に身をかがめてかわした―――
「カルナダがぁぁぁ!!ニューアスメリア軍を舐めるなよおおぉぉぉぉ!!」
トロンの周辺を警護していた4人の内一人が負傷する。
着実に距離を詰めてくる敵に雷と銃撃を浴びせかける、しかし部下をやられた怒りによって奮戦する。
トロン 「仕方ない、みんな私の後ろにさがって!!」
そう言うと、兵士4人を後ろへ下がらせ、両腕を前にかざした。広い森の中で雷がほとばしる―――
雷の後にはその場で隊長が沈黙して倒れていた。トロン等5人は敵の生存者を捕虜にするために隊長に近づく、隊長は完全に気絶しなかったのだろう。
近づくとトロンに組着き首を絞め上げる―――
周辺警護にあたっている4人は敵に向かって銃を向ける
「ハァ…ハァ…、ニューアスメリアを舐めるな…よ…」
と一言だけ残すとその場で事切れた―――
5人は生きている敵軍を捕虜にガフガンの元へと引き返し森を後にして云った。
トロンは帰還すると直ぐにガフガンの元へと駆けつけ口を開く。
トロン 「トロン以下5名ただいま帰還しました。」
ガフガン「ご苦労だった、捕虜については本国の輸送隊について手配させよう。丁度こちらも敵の逃走経路に予想がついた。このまま作戦を続行する。」
全体に向かって言い放ち、ダン一行を追うため部隊は動き始めた。
再び時間は元に戻る―――
野営での歩哨はローテーションを繰り返し再びダンとタイラーになっていた。深夜にもなり二人の男は口数も減っていた。拠点を警備しているバリーから通信が入る。
バリー 「そろそろ夜が明ける、お前等そろそろ戻ってこい。野営を撤収して目的地へと進路を進める。」
タイラー「わかった後二、三十分後に戻る」
と一言放つとバリーは休んでいる3人を起こす。撤収して出発の意向を伝えると4人はキャンプの撤収を始めた。暫くしてダン達が戻り終えると、すでに出発準備が終えた後だった。
ダンがバリーに向かって耳元でささやく―――
ダン 「かすかだが、車の走行音が聞こえた、タイラーも同じく聞いている、さっさと出発するぞ。」
6人は野営を後にして亡命先アージニアへと向かう―――
この先一人のジャーナリストと出会い6人の運命を変えることとなるがこの時は誰も知らなかった二人を除いて―――
二話目だが読んでくれる奴がいないと泣きたくなるぜ(*_*)
小説は読み手がいないとなぁ