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過疎ってる

作者: 暖炉

このお話は私たちが今住んでいる地球という星の事では有りません。平行世界です。平行世界ですから、こんなの有りえねえしとか思っても、スルーしてください。

 時は西暦2,257年。時代は、大きく変わった。世界からは紛争も戦争も姿を消した。理由は簡単。飽きた。ただそれだけの事だった。人類が続く限り延々と続くと思われた争いは2,145年を境にパッタリと消えた。食べ物に飢える事がなくなり、住む場所に困るものがいなくなり、欲しい物を容易に手に入れられるようになって、現実を遥かに凌駕する空想世界が出来た時、人々は現実への興味を大いに失った。


 もはや地球には、人の住む場所で開発していない土地などなく、貧富の差はほとんど無くなった。人々は明日食べるものに困る事はなくなり、住む場所に困る事もなくなった。それには人口の縮小が大いに関係していた。世界規模で進んだ少子高齢化は、世界の総人口を年々減らし、開発した土地に比べて、その土地に住む者の数が足りなくなった。当然、住む者の居なくなった土地は荒れるばかりで、寧ろその維持に金が掛かるだけだった。当然、人々は金が掛かるだけの土地など挙って手放した。だが、買う者はいなかった。人間の居ない放置された土地が増えた。世界には開発したものの人の住まない、利用価値のない土地が増えた。


 その頃、宇宙開発も進んでいた。けれど、一向に見つからない地球外生命体、開発しても誰も住もうとしない星、地球ですら土地が余りきっているのに他の星を開発しても大したメリットはなかった。自然と宇宙開発は、宇宙に行きたいという人が行ったりやったりするだけの趣味のものとなった。


 食べ物や衣類、宝石なども価値が激減した。進んだ科学はあらゆるものの量産を非常に容易にした。進みすぎた科学は魔法のようだった。ボタン一つで何でも出来た。原理も仕組みもからくりも、高度過ぎて進みすぎて行き着く所まで行き着いていた。その中には異世界に行く技術なんてものもあった。けれど何処に行っても知的生命体はいなかった。人類はこの時、自分達は一人ぼっちだと知った。


 2,100年では、2,000年に1,000万はした物が子どものお小遣いで買えるようになった。宝石も車も飛行機も宇宙船も惑星も服もブランド品も家も船も二束三文の値段で買えた。何せ全時代に作り過ぎた物が有り余っているのだ。世界中の人間に配っても余るほどに。2,120年には寧ろ場所を取るから邪魔だと言われた。今もその多くは人間の住まない土地に野晒しにされ、野生動物の巣になっている。


 2,145年、VRシステムと呼ばれる何か凄いのが出来た。それは空想の世界で自由に生きられるというものだった。素晴らしかった。それは人類に希望を与えた。何せ地球ではやる事が無くてただ生きて死ぬだけの血袋だったというのに、空想世界ではやる事が沢山有ったのだ。本当に生きてんじゃねえの?と思うようなリアルすぎる生命体は自分たちよりずっと生き生きとしていた。便利すぎる機械に囲まれた地球では、味わえなかった生きるという事。楽しかった。生まれて初めて楽しいという感情を知った。


 VRシステムは瞬く間に世界中に広まった。世界中の人々が空想世界に行き、すぐに空想世界で骨を埋める覚悟をした。そこで一生を過ごし、そこで死を迎えたら地球に帰ってきた。生命の維持は機械に全て任せていたから、何百年と空想世界で過ごす事が出来た。空想世界と現実では時間の流れが違った。正直、彼らにとって地球はもう生まれ育ち骨を埋める星ではなかった。本当の自分は空想世界に居て、地球は天国のような場所で、次の空想世界に行くまでの短い時間を過ごす世界であった。


 そして数多の年月が過ぎて目を覚ました神様は、地球を覗いた。


「過疎ってる」



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