とりとめのない日常茶飯事
部活の風景といえば聞こえはいいもしれないが、やってることはただの話し合いだ。しかも要領のえない。
「文章を綴るにおいて大切なのは起承転結でしょ?」
「うん」
「起で物事を起こして、承で、……承ってなに?しょう、承る、太朗?……まぁ、ひとまずおいておきましょう。お次は転なわけですが、これはいわゆるピンチな状態だよね。これをクリアしてスッキリ爽やかに結に繋げると。んー、やっぱ問題は承の存在だよね。これを解明できたときにワレワレの道が開けるのであーる」
「……」
少なくともこいつは仕切り役ではないな。ヒマワリを横目でみながら、結城はあくびを噛み殺した。
「やっぱりさー、やりたいことだけやってたんじゃ人の心は掴めないと思うんだよねー」
「猫の目のようにコロコロ話題が変わりますね」
桃は読んでいた本をパタンと閉じ、ヒマワリを煩わしそうに睨み付けた。集中して本が読めないことに苛ついているようだ。
なら帰れ。と辛辣な言葉をはきかけた結城の横で冥利がバッと高らかに右手を挙げた。
「……またとっち狂った提案をする気か?」
「議長、発言の許可を求めます」
皮肉は受け付けていないらしい。
冥利の言う議長こと、桃ちゃんは眉間にシワを寄せながら小さく「許可します」と呟いた。
「青春小説が題材の作文部の活動、ストーリーは今だに決まっていないのが問題。みんな書きたいものがバラバラだから。なので私は考えた」
「なんかラップみたいだねー」
「ヒマワリ茶化さないで」
体言止めが趣味なのだろう。
「それぞれが一回、書いた作品を持ち寄ってみてはどうだろうか」
ズバリとまん中をい抜く冥利の発言に一同はキョトン言葉を失った。
一瞬の沈黙の後、
「それがいい。そうしましょう」
桃が両手を叩いて賛同の声を挙げた。
「そもそも、毎回毎回こんなとこに集まる必要はないのです。モデルは文芸部なんですから、部員がそれぞれが個人的に活動して文化祭とかで会誌を発表すれば」
「それはだめ、ちゃんと集まって今後の展開とか相談しないと」
「いえ一人でじっくり考えるほうが」
「一人では面白いものか判断がつかなくなってしまう」
納得がいかないながらも桃は静かに頷いた。
「だから、それぞれに合った作風をここで決めたいと思う」
珍しく稲葉は鼻息が荒い。そんな彼女にヒマワリは小首を傾げた。
「それってどういう意味?」
「その人以外の他の三人がその人に合ったジャンルを提案するの。選ばれたジャンルをあくまで青春小説という枠組みで作る」
少しだけ面白そうだと思う自分を戒め、結城は唇を引き結んで考えた。
好きなものだけ書いてきたけど、それが自分の肌にあっているかなんてわかりはしない。もしかしたら意外なジャンルが案外天性だったりするもんだ。
「なるほどねー、んじゃ冥利はアクションバトルね!」
「え?」
「絶対ピッタシ!冥利の書くハードボイルドが読んでみたいのさ」
ヒマワリの能天気そうな顔は何を考えているのかわからなかったが、その瞳は単純な好奇心に溢れていた。
「いや、私は恋愛小説を」
「学園異能バトルにする?それとも学生スパイとか?あーあー、あんまり展開を言わないでね!ネタバレになっちゃうから」
「わたし、は……」
ヒマワリの猛攻に助けを求めるよう冥利は結城に半分涙目になった視線を寄越した。が、いつもやられてきた仕返しができるのだ、ここでやり返さないわけがない。
「いいな、学園異能バトル!絶対稲葉に合ってるよ!」
「ええ、私も前々から冥利のアクションバトルを読んでみたいと思ってました」
焚き付けられた稲葉はがっくりと肩を落とし、うらめしそうな瞳で、
「ヒマワリはシリアスなミステリ」
ボソッとした反撃を行った。
「はにゃ!?」ヒマワリは間抜けな声を上げた。
「いやいやなにを仰ってはるんですかー、私はかねがねコメディ小説をですねー」
わたわたとした声を無視し、
「決定だな」
「決まりですね、冥利はアクション、ヒマワリはミステリ。それぞれ頑張ってください」
結城と桃が対岸から援護射撃を行う。
「だっからー、私はやるんだったらコメディ小説をね!というか私は文章なんて書けないよ、しかもシリアスな固い文は無理無理」
「やる前から諦めてたんじゃダメ。それに、」
真剣な表情で渋るヒマワリに冥利は続けた。
「コメディは桃ちゃんの領域だから今回は諦めて」
「はい!?」
いきなり舞台に上げられた桃はすっ頓狂な声をあげた。
「ち、ちょっと待ってください!私はやりませんよ!絶対にコメディなんて無理です」
「やる前から諦めてたんじゃダメ」
ヒマワリにかけた言葉と同じ文脈で冥利は涼しげだ。
「桃ちゃんはコメディ、決定」
「それはいいね!頑張ってね桃ちゃん!」
裏切りを忘れてはいないらしい、ヒマワリはニヤニヤと冥利に同意した。
「まあ、各々頑張ってください」
嫌な予感しかしなかったが、部外者的な発言で誤魔化そうとした結城を桃は睨み付けた。
「結城さんは、そうですね、どんなジャンルがいいでしょう」
「いやまてよ、おれはやらんぞ」
冷ややかな彼女の視線を降りきろうと顔を横にふる。
「せめて、やるんならホラーとかスプラッタとか」
「ユーユーはねぇ、」
おい、やめろ!結城の叫びよりヒマワリの声のほうが早かった。
「ラブロマンスねっ!」
「は?」
いやいやいや、と否定の声を挙げようとする彼をキラキラとした視線の矢がい抜く。
「恋愛小説!素敵!」
「素敵じゃねーよ!絶対嫌だからな」
「ユーユーにはぴったりだと思う」
「……」
真っ直ぐな冥利の瞳は、意見を全く受け付けていなかった。
この瞳には、かなわない。
哀しみというより、諦めか。少しだけ楽しそうに彼はため息を着いた。
お疲れさまです、読了ありがとうございました。
これで終わり?と思われる方がいらっしゃるかも知れませんが、これで終わりです。飽きたわけではありません、日常に戻った、という普通の物語です。ええ、飽きたわけではありません(大切なことなので二回言いました)。
大々的な中二要素を描写するのに多少の羞恥心というものがございまして、 逃げの一手の折衷案が、妄想をフィルターとした夢という形でございました。
予想外なことをしでかす主人公をコンセプトに綴らせていただきまして、 そのため心情をあまり明らかにしない神視点の物語となりました。
実験の割合が大きく占める作品でしたが、楽しめていただけたなら、ワタクシ感涙でございまする。
ちなみに向日葵が今まで綴ってきたキャラクターで一番のお気に入りです。どうでも良いですか、そうですが。
感想等ございましたらお気軽にお送りください。小躍りします。それでは。




