正義の味方(三百三十八文字小説)
「キャー!!」
仕事帰りの私の前に現れた男は、荒い息をしていた。手には、血塗られたチェーンソー。ホッケーマスクで顔は見えない。 男が、巷を騒がせる殺人鬼であることに気付き、私は逃げ出した。
追いすがる足音に、私は死を予感する。
「ああっ! 神様助けて下さい!」
その時だった。天から降りてくる凛々しい青年の声。
「あいや、待たれい! か弱き乙女の悲鳴とあらば、即参上!」
逞しい胸板、鍛えあげられた腕、頼りがいがある笑顔。そう、彼こそ街の平和を守る正義の味方
「ブリーフ一丁寒くない。熱いハートが燃え上がる。人呼んでブリパンマンとは俺の事だ! かかって来い、殺人鬼!」
真っ白なブリーフパンツ一丁で、勇猛果敢に頼もしく、殺人鬼に襲いかかるブリパンマン。
だが、私は思った……。 変態がもう一匹増えた、と。