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プロローグ


 『推し』


 令和の中高生となれば、一度くらいは口にも耳にもするでしょう。

 私の推しは乙女ゲームの悪役令嬢でした。


 乙女ゲーム『Sacred Lovers』

 魔法や魔物が存在するファンタジー世界を舞台とした恋愛シミュレーションRPG

 主人公は平民でありながら高い魔法素養を見込まれ、貴族達の通う学園に入学し魅力的なイケメン達と出会い、魔物と戦ってはイケメン達と仲を深め、自分の運命に向き合いながらイケメン達に励まされ、決戦前にもイケメン達に慰められされ、気付けばイケメン達に溺愛されるのが当たり前……とにかくイケメン達と恋愛するゲームです。


 私ももちろんプレイしましたとも。

 現実の男性にそこまで魅力を感じたことの無い私でしたが、乙女ゲームは大好きです。

 『Sacred Lovers』もまた、パッケージのイケメン王子目当てで発売日に購入し、半年後の大学受験から目を背けながらプレイしたわけですが──。


 そこで出会ったのです。


 悪逆非道・傍若無人・邪智暴虐の化身。

 プレイヤーを怒りと悲しみ、絶望に叩き込む為だけに生まれたとしか思えない存在。


 数多くの悪行でプレイヤーのヘイトを買い、全てのエンディングで徹底的な制裁を受ける事となる本作の悪役令嬢、レイシア・フォン・クリスティウスに──。



 以下、彼女の悪行の一例です。


・主人公の入学前から根回しし、寮に入居できないようにする。

・取り巻きに指示して主人公の教材を破く。

・魔法の実習で意図的に主人公に危害を加えようとする。

・課外実習では主人公を孤立させ魔物に殺させようと仕向ける。

・パーティーで主人公のドレスを破く。

・魔導具で魔物を誘導し、主人公の義父母のいる村を襲わせる。

・終盤、自身も王子の婚約者という立場でありながら、最も主人公と仲のいいイケメンを誘惑する。


 etc……えとせとら……。


 あまりにも……酷すぎる……。

 外見と声以外に、いいところが一つとして見当たりません。

 かと言って『敵役』としての魅力もないんです。

 人気のある敵役には信念や一貫性、善悪で測れない『正義』『カリスマ性』を感じる何かがあり、この作品のラスボスにもそれはあったわけですが……レイシアにはそんなものありません。


 なんて酷いヘイト役……プレイヤーの誰もが、一秒でも早くレイシアが退場してくれることを祈っていたことでしょう。

 しかしです。



 推せる


 このキャラ推せる!!



 私もびっくりしました。はい。

 一体レイシア様のどこに惹かれたのかさっぱり分かりません。

 別にレイシア様のこと好きじゃありません。

 他に魅力的なキャラはたくさんいましたし、SNSでレイシア様へのヘイトスピーチを見つければ「だよね〜」とか言います。


 むしろ、半端にレイシア様を擁護する声にこそ反論したくなります。

 意味が分かりませんよね。私も分かりません。


 これが私の、レイシア様への『推し』みたいです。


 好きとか、嫌いとかじゃなくて。


 正しいとか、正しくないとか。善とか、悪とかじゃなくて。


 もちろん恋とかでもなくて、親しみでもなくて、共感でもなくて。



 レイシア・フォン・クリスティウス様は、私の『推し』なんです。




 受験を無事に乗り越え、入学式。

 大学生活に期待と不安を抱きながらの登校中。


 視界が真っ暗闇に染まる中、遠くの誰の叫び声が聞こえた。

 今迄の思い出は全てが夢だったかのように、目を覚ますと理解しました。



 私の名前はミーティア・ライズヴェール。

 『Sacred Lovers』の登場人物。



 レイシア様の取り巻きのモブキャラです。

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