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魔女は直したい。 〜動かなくなった鉄塊(あなた)と明日を迎えるため、私は世界を塗り替える〜  作者: wattamen
6章:廃棄区画の魔女

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第2節:規格外のバグ

外の死の気配が去るのを待ち、私はようやく部屋の中を見渡しました。そこは、ガラクタの山でした。乱雑に積み上げられた歯車や基板、天井から吊るされた無数のケーブル。そして、部屋を満たすツンとした独特の匂い。花の匂いを無理やり薬液で煮詰めたような、不思議な紫色の煙です。


 ヴィオラさんは、モニターの前から作業机へと戻っていました。小柄な身体には不釣り合いなほど大きな工具ベルトを腰に巻き、片目には幾重にも重なったレンズが微細に回転する「解析用モノクル」を装着しています。


 彼女が椅子を回し、こちらを向いた瞬間――。モノクルの奥のレンズが、カチャカチャと音を立てて焦点を変えました。


「………………ッ!」


 彼女が手に持っていたスパナが、床に落ちて高い音を立てました。ヴィオラさんは、椅子から飛び起きるようにして、真っ直ぐに私とリアへ歩み寄ってきました。


「な、なんだよババア。……今日は一段と目つきが悪いな」


 ヴェールさんが眉をひそめて制止しようとしましたが、彼女はそれを無視して、私の顔を、そしてリアの瞳を、食い入るように見つめました。


「……規格外もいいところね。ヴェール、あんた、自分が何を拾ってきたか分かってるの?」


 ヴィオラさんの手が、震えながら私の右腕――黒い結晶が這い上がる前腕へと伸びました。モノクルの奥のレンズが、高速で回転します。


「マシロ、と言ったかしら。あんた、その器……ただの人間じゃないわね」


 彼女は、次にリアの瞳を覗き込みました。


「そして、そのちいさいの……。黄金(おうごん)の瞳の共鳴係数がありえないわ! 姉さんが、血眼になって探していた『二つ目の鍵』に近いかもね」


「塔が閉じた時に外へ取り残された血が、薄く、薄く伸びて――それが、ここで妙な形で跳ね返った。……」


 ぶつぶつと呟く彼女を、ヴェールさんが忌々しげに見下ろしました。


「おい、独り言ならあっちで言えよ。俺たちは取引に来たんだ」


「まあ、血筋なんてどうでもいいわ。使えるものは使う。それが私の流儀よ」


 ヴィオラさんは、私たちの背後に立つ、錆びついたアイゼンへ視線を移しました。


「……そして、(アルジェント)。いいえ、今はそう呼ばれていないのかしら。……私の設計した子が、こんな、継ぎ接ぎだらけの『愛の成れの果て』に成り果てて」


 ヴィオラさんはアイゼンの首元の青いリボンを指先で弾き、ククッと喉を鳴らしました。


「……面白いわ。設計図プロットにもないバグが、三つも揃って私の工房に転がり込んでくるなんてね」


 ヴィオラさんは地面に落ちたスパナを拾い上げると、壁の錆びついたスイッチを蹴り飛ばすように踏み抜きました。


 ガガガガッ! と天井のレールが悲鳴を上げ、巨大な四本爪のクレーンが、獲物を狙う猛禽のようにアイゼンの頭上へと降りてきます。


「歓迎するわ、世界のバグたち。……まずはその、死にかけの鉄屑を吊り上げなさい。診断チェックを始めてあげる」


 クレーンがアイゼンの肩を掴み、泥にまみれたソリからその巨体を浮き上がらせました。宙吊りになったアイゼン。その無機質な鉄の身体が、ヴィオラの放つ紫煙の中で、まるで解剖を待つ検体のように虚しく揺れていました。

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