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第二部・第32話 影を、避ける

変化は、

被害ではなく

間隔に現れた。


影対策が導入されてから、

数日が経過していた。


高照度。

複数光源。

影の重なりを常に監視する配置。


その結果、

接触事案は激減した。


消失、ゼロ。

記憶欠落、ゼロ。

不可視の気配は、

まるで消えたかのように見えた。


だが。


「……“消えた”のは、

 事案だけです」


分析官が、

低い声で報告する。


「存在そのものが、

 確認できなくなったわけではない」


「どういう意味だ」


「……近づいていない」


会議室に、

一瞬の沈黙が落ちる。


「パレントは、

 影のある場所を

 “選ばなくなった”」


「正確には」


「影が生まれる条件を、

 避け始めています」


資料が切り替わる。


照度の低い路地。

逆光になる時間帯。

単一光源の空間。


「……昼間」


「はい」


「影が、

 薄くなる時間帯」


「パレントは、

 そこにしか

 現れていません」


つまり。


こちらの対策を、

 “前提条件”として

 学習している。


「……学習速度は?」


「早いです」


「影対策が共有されてから、

 三日」


「既に、

 無効化され始めています」


誰かが、

苦く笑った。


「……さすが、

 勇者の切り札だな」


同時刻。


市街地、

昼下がり。


曇天。


影が、

ほとんど地面に落ちない。


駅前広場で、

人が行き交っている。


何事も、

起きていない。


そのはずだった。


ベンチに座っていた

老人が、

ふと首を傾げる。


「……あれ?」


隣に座っていた

はずの孫が、

いない。


「……?」


視界は、

正常だ。


音も、

騒音もある。


だが。


“いなくなった”

 という事実だけが、

 遅れて認識される。


三秒。


次の瞬間、

孫は

何事もなかったように

ベンチの反対側に座っている。


「……じいちゃん?」


「……あ、ああ」


老人は、

笑って誤魔化す。


理由が、

分からない。


だが、

胸の奥に

説明できない寒気が残る。


同時刻。


管理側の端末に、

新しい報告が上がる。


【影検知:なし】

【接触推定:あり】

【照度:低】


「……影が、

 出ていない」


「でも、

 触れている」


分析官が、

言葉を選ぶ。


「……パレントは、

 “見せない接触”に

 移行しています」


影を出さない。


光を遮らない。


触れる時間を、

極限まで短くする。


「……三秒から、

 さらに短くなっている?」


「はい」


「一秒未満」


一秒。


気づく前に、

終わる。


「……これは」


「被害抑制策が、

 “追いつかなくなる”

 前兆だ」


同時刻。


主人公は、

報告を受け取り

静かに目を閉じた。


「……来たな」


影は、

万能じゃない。


分かっていた。


だからこそ、

“時間を稼ぐ”策だった。


「……でも」


「時間は、

 ちゃんと稼げた」


炎帝を止めず。

パレントを捕まえず。


それでも、

世界は一歩ずつ

対応している。


だが。


「……次は」


「対策できないカードが

 来る」


影も。

誘導も。

配置も。


すべてを

無視できる能力。


主人公の脳裏に、

一つの言葉が浮かぶ。


時間。


妹は、

兄の表情を見て

察していた。


(……もう、

 “見える敵”じゃない)


(次は、

 世界そのものが

 止まる)


パレントは、

学習した。


影を避け、

光を選び、

時間を削る。


それは、

彼自身が

“次の手番を

 譲る準備”でもあった。


見えない敵は、

もう十分に

仕事をした。


あとは。


見えないまま、

 すべてを止める存在が

 出てくるだけだ。


第二部は、

クライマックスへの

直線に入った。

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