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第二部・第29話 触れられてから、気づく

最初に異変として処理されたのは、

失踪ではなかった。


戻ってきたからだ。


市街地の交番に、

一人の男性が保護された。


衣服は乱れていない。

外傷もない。

脈拍も正常。


ただ。


「……覚えて、

 いないんです」


何を、と聞かれても、

答えられなかった。


「気づいたら、

 ここにいました」


「さっきまで、

 何をしていたか」


「……分からない」


時間は、

わずか三分。


だが、

その三分が

丸ごと欠けている。


管理側は、

事例を並べた。


同様の報告が、

同時刻に三件。


場所は違う。

年齢も性別も違う。

共通点は、

一つだけ。


“人が多すぎない場所”。


駅の裏道。

夜の公園。

閉店前の店舗。


「……炎帝の逆だな」


分析官が、

低く言った。


「目立たない場所を、

 選んでいる」


映像が、

再生される。


監視カメラ。


人が歩いている。

問題ない。

次の瞬間。


その人が、

 フレームから“抜け落ちる”。


倒れない。

逃げない。

消える。


「……編集?」


「違います」


「フレームは、

 連続しています」


「存在だけが、

 消えています」


室内に、

沈黙が落ちる。


「……触れられたか」


その判断に、

誰も反対しなかった。


同時刻。


市街地の別の場所。


女性が、

スマートフォンを見ながら歩いている。


画面には、

メッセージ。


〈今どこ?〉


返事を打とうとした、

その瞬間。


指先が、

**“空振り”**した。


触ったはずの画面が、

そこにない。


「……え?」


スマートフォンは、

消えていない。


持っている。


だが、

見えない。


「……?」


次の瞬間、

背中に

軽い違和感。


誰かが、

肩に触れたような感覚。


「……すみません?」


振り返る。


誰も、

いない。


スマートフォンが、

見える。


時間は、

三秒。


それだけ。


女性は、

首を傾げながら

歩き出した。


何が起きたか、

理解できないまま。


管理側に、

新しい報告が届く。


【接触感覚あり】

【対象消失:三秒】

【周囲の視認:不可】


「……三秒」


分析官が、

数値を強調する。


「偶然じゃない」


「意図的な時間だ」


同時刻。


主人公は、

その報告を見て

目を細めた。


三秒。


短い。

だが、

十分だ。


「……触れた対象を、

 透明にしてる」


「しかも、

 自分も透明」


「……数は?」


報告書を、

めくる。


制限なし。


「……厄介だな」


消せる。

触れられる。

記憶を残さない。


炎帝のように、

派手じゃない。


雪花のように、

分かりやすくもない。


「……交渉点を、

 直接掴みに来てる」


主人公は、

ゆっくり息を吐く。


「……勇者は」


「俺たちが“守らない”選択を

 したのを見て、

 次に進んだ」


管理側の会議で、

ついに名前が出る。


「……ステイラ側の

 不可視能力者」


「識別名、

 パレント」


その瞬間。


別の街で、

もう一人が

“消えた”。


三秒。


短く。

正確に。

痕跡を残さず。


これは、

殲滅じゃない。


選別だ。


「……まだ、

 殺してない」


誰かが、

そう言った。


「……でも」


「いつでも、

 殺せる」


同時刻。


妹は、

玄関で

靴を履く兄の背中を見ていた。


「……行くんですか」


「ああ」


「見えない敵が、

 日常に入った」


「もう、

 家にいるだけじゃ

 意味がない」


妹は、

何も言わなかった。


ただ、

一つだけ

確信する。


(……これは)


(私の判断が、

 必要になる)


パレントは、

名を名乗らない。


姿も、

見せない。


だが。


世界に、

 “触った”という事実だけを

 残し始めた。


第二部は、

次の局面へ進む。

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