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第二部・第26話 止めない前提で、被害を止める

会議室の空気は、

すでに張り裂けそうだった。


映像は止まっている。

だが、

数字だけが更新され続けている。


【負傷者:増加】

【避難遅延区域:拡大】

【炎帝:継続行動中】


「……もう限界だ」


誰かが、

絞り出すように言った。


「このままじゃ、

 死者が出る」


「迎撃を──」


その言葉が、

最後まで届く前に、

主人公は立ち上がった。


「迎撃は、しない」


一瞬、

全員の視線が集まる。


「……正気か?」


「止めなければ、

 人が死ぬぞ」


主人公は、

否定しなかった。


「死ぬ」


「だから、

 別の場所で止める」


ざわめき。


「……意味が分からない」


主人公は、

テーブルの中央に

一枚の図を置いた。


そこには、

簡単な矢印だけが描かれている。


【炎帝】

→【人がいる】

→【被害】


「炎帝は、

 人を殺すために来てない」


「判断を急がせるために、

 人の近くを燃やしている」


「つまり」


「人がいなければ、

 彼は“効率が悪い”」


誰かが、

眉をひそめる。


「……だから?」


主人公は、

次の矢印を書き足す。


【炎帝】

→【人がいない】

→【効果が薄い】


「炎帝を止める必要はない」


「炎帝が“意味を失う場所”へ

 誘導すればいい」


沈黙。


「……誘導?」


「はい」


主人公は、

視線を上げる。


「炎帝は、

 連射型だ」


「逃げる人を追う」


「避難路を焼く」


「つまり」


「人の流れを、

 彼に見せている」


会議室の誰かが、

息を呑む。


「……人を、

 動かす?」


「そうだ」


「炎帝の前で、

 “人が消える”状況を作る」


「避難を、

 ランダムにしない」


「見せる」


「彼が見ている方向から、

 人が消えるように」


「……そんなことが

 できるのか」


主人公は、

即答しなかった。


「できるかどうかじゃない」


「やるしかない」


端末を操作し、

別の資料を表示する。


【能力者配置案】

・視覚撹乱

・誘導音

・熱源偽装

・情報遮断


「炎帝は、

 合理的だ」


「燃やしても意味がない場所を、

 燃やし続けない」


「だから」


「人が“いそうで、

 いない”場所を作る」


「……囮か」


「違う」


主人公は、

はっきり言った。


「舞台装置だ」


「人を守るために、

 人を見せない」


「炎帝を倒さず」


「炎帝の判断を、

 誤らせる」


会議室に、

静かな理解が広がる。


「……それなら」


「交渉は、

 壊れない」


「止めていないからな」


主人公は、

小さく頷いた。


「そうだ」


「勇者にとって、

 これは“観測可能な継続”だ」


「だが」


「被害だけは、

 止まる」


「……成功率は?」


主人公は、

正直に答える。


「100じゃない」


「でも」


「迎撃よりは、

 確実だ」


沈黙。


やがて、

責任者が口を開く。


「……実行可能か」


分析官が、

短く答える。


「可能です」


「ただし」


「判断は、

 現場で即時に

 修正が必要」


その言葉を聞いて、

主人公は言った。


「現場判断は、

 俺がやる」


空気が、

一段重くなる。


「……前に出るのか」


「出ない」


主人公は、

首を横に振る。


「戦わない」


「ただ」


「構図だけを、

 書き換える」


誰も、

反論しなかった。


なぜなら。


これは、

今この瞬間に

一番“死なない”案だったからだ。


同時刻。


別室で、

妹は状況を聞いていた。


「……止めない前提、

 ですか」


説明役が、

頷く。


「はい」


「あなたの兄が、

 出した案です」


妹は、

目を閉じた。


(……やっぱり)


あの人は、

戦わないことで

前に出る。


なら。


(私は)


妹は、

小さく息を吸う。


次は、

 判断する番だ。


炎は、

まだ燃えている。


だが、

“意味のある炎”では

なくなりつつあった。


第二部は、

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