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第二部・第24話 戦わないという作戦

話す場所は、

特別な場所じゃなかった。


リビング。

夜。

テレビは消えていて、

窓の外は静かだ。


世界の話をするには、

あまりにも普通の部屋。


「……少し、話していいか」


主人公は、

そう切り出した。


声は落ち着いている。

覚悟を決めた人間の声だ。


「はい」


妹は、

椅子を引いて向き直る。


もう、

“何かが来る”ことは分かっている。


「雪花の件だ」


妹は、

頷いた。


「映像、見ました」


「どう思った」


少し考えてから、

答える。


「……合理的でした」


「人類悪とは、

 違いますね」


主人公は、

小さく息を吐いた。


「そうだ」


「雪花は、

 止められる」


妹の視線が、

わずかに揺れる。


「……止められるんですか」


「ああ」


はっきり言った。


「俺なら、

 勝てる」


沈黙。


「でも」


主人公は、

続ける。


「止めない」


妹は、

すぐには否定しなかった。


「……理由を、

 聞いてもいいですか」


「もちろんだ」


主人公は、

テーブルの上に

紙を置いた。


そこには、

簡単な図が描いてある。


【雪花】

→【警告】

→【反応を見る】


「雪花は、

 戦争じゃない」


「勇者が、

 “話を聞く気があるか”を

 確かめるための装置だ」


「止めたら?」


妹が、

静かに問う。


「交渉は失敗」


「次は、

 もっと危険な手が来る」


炎帝。

不可視能力者。

死者が出るカード。


言葉にしなくても、

妹は理解している。


「……つまり」


「勝つほど、

 状況が悪くなる」


「そうだ」


主人公は、

頷いた。


「第一部とは、

 逆だ」


「あの時は」


「止めれば、

 全部終わった」


「今回は」


「止めた瞬間に、

 次が始まる」


妹は、

視線を落とす。


「……じゃあ」


「何もしない、

 ということですか」


「違う」


即答だった。


「戦わないが、

 何もしないわけじゃない」


主人公は、

少しだけ身を乗り出す。


「勇者が使っている構図は、

 こうだ」


【圧力をかける】

→【守ろうとする】

→【交渉点が成立する】


「この三つが揃うと、

 俺たちは必ず選ばされる」


「だから」


「この構図を壊す」


妹は、

静かに聞いている。


「どうやって?」


主人公は、

一瞬だけ黙る。


「……簡単な方法はない」


「でも」


「一つだけ、

 確実なやり方がある」


「それは」


「“俺一人が、

 守る側に立たない”ことだ」


妹の指が、

わずかに動く。


「私も、

 判断する側に入る」


「そうだ」


主人公は、

否定しない。


「妹が、

 守られるだけの存在でいる限り」


「俺は、

 交渉点になる」


「でも」


「妹が、

 選択に参加するなら」


「守るという行為は、

 個人の意思じゃなくなる」


妹は、

ゆっくり息を吸う。


「……それは」


「私も、

 危険を引き受ける

 という意味ですね」


「そうだ」


主人公は、

視線を逸らさずに答えた。


「きれいな話じゃない」


「むしろ、

 汚い」


「戦わないために、

 戦わせる」


「守るために、

 責任を分ける」


沈黙。


妹は、

しばらく何も言わなかった。


やがて、

小さく笑う。


「……やっぱり」


「兄は、

 ずるいですね」


「そうかもな」


「でも」


妹は、

真っ直ぐに言う。


「それなら」


「私は、

 その作戦に

 参加します」


主人公の目が、

わずかに見開かれる。


「……いいのか」


「はい」


即答だった。


「守られるだけで

 交渉材料になるなら」


「選ぶ側に立って、

 交渉を壊した方がいい」


主人公は、

何も言えなかった。


正しさじゃない。

覚悟だ。


「……ありがとう」


絞り出すように、

そう言った。


妹は、

首を横に振る。


「まだです」


「呼び方も、

 変えていません」


「これは」


「準備段階です」


その言葉に、

主人公は苦く笑った。


「ああ」


「本番は、

 これからだな」


窓の外で、

風が吹く。


雪は、

降っていない。


だが、

次のカードは

確実に切られる。


戦わない戦い方は、

ようやく形を持ち始めた。


第二部は、

次の圧力へ進む。

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