第二部・第23話 止められるという無意味
映像は、
何度も再生された。
凍結した道路。
砕けた倉庫の屋根。
雪の花が咲いたまま、
時間が止まったような現場。
主人公は、
一つ一つを
注意深く見ていた。
派手だ。
だが、
無秩序ではない。
「……範囲が、
きれいすぎる」
破壊は、
線で引いたように止まっている。
広げられたのではなく、
選ばれている。
人的被害、ゼロ。
偶然ではない。
偶然を排除する設計だ。
「……止められるな」
声は、
独り言に近い。
雪花は強い。
だが、
人類悪ほどではない。
火力は高い。
しかし、
一点集中型。
攻撃は、
溜めがある。
発生も、
完全に予測不能ではない。
「……俺なら」
第一部の感覚が、
自然と浮かぶ。
悪運で、
最悪を回避する。
幸運で、
位置を合わせる。
天運で、
一度だけ、
確実に刺す。
(……勝てる)
戦術的には、
成立する。
犠牲も、
最小限に抑えられる。
それなのに。
主人公は、
次のページを
めくらなかった。
「……で?」
止めて、
どうなる。
雪花を倒す。
撤退させる。
拘束する。
その結果。
何も、終わらない。
雪花は、
“警告”だ。
一枚目のカードに、
すぎない。
「……次が来る」
炎帝。
連射型。
火力は下がるが、
継続戦闘向き。
あるいは、
不可視能力者。
接触型。
対策が遅れれば、
確実に死者が出る。
「……止めたら、
早まるだけだ」
雪花を止めれば、
交渉は失敗したと判断される。
勇者エレギオンは、
そう設計している。
「……だから」
「止められるが、
止める意味がない」
その結論は、
冷静で、
正しくて、
どうしようもなく苦い。
第一部では、
止めれば終わった。
今回は、
止めた瞬間に
次が始まる。
「……交渉点を潰さない限り」
「何を倒しても、
同じだ」
椅子にもたれ、
天井を見る。
雪花は、
“敵”ではない。
時間を削るための装置だ。
倒せば、
装置が壊れる。
だが、
装置は何台もある。
「……勇者は」
「本当に、
戦争を終わらせに来てる」
内戦を止めるために、
外を殴る。
その外が、
自分たちだ。
「……だから」
「俺がやるべきは」
雪花を倒すことでも、
次の敵に備えることでもない。
「交渉という構図そのものを、
成立しなくすること」
ペンを取り、
紙に書く。
【雪花:止められる】
【結果:悪化】
線を引く。
【交渉点:家族】
【構図:個人の意思】
ここに、
丸をつける。
「……妹が、
役割を変えようとした理由」
ようやく、
腹に落ちる。
守るだけでは、
負ける。
戦うだけでも、
負ける。
「……選ばせない」
それが、
唯一の勝ち筋。
そのとき。
端末が、
短く鳴った。
【次段階予測:48時間以内】
【新規接触の可能性】
「……時間切れ、
近いな」
立ち上がる。
「……まだ、
妹には言えない」
だが、
伝えなければならない。
止められる敵を
止めない理由を。
世界の前で、
戦わないという選択を。
それを理解できるのは、
もう家族だけだ。
第二部は、
次の決断へ進む。




