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第二部・第22話 雪花という名の合理性

共有は、

淡々と行われた。


怒号も、

非難もない。

ただ、

必要な情報が必要な順に並べられる。


「……対象、

 コードネームを更新します」


会議室の中央に、

映像が固定される。


白い外套。

凍結した地面。

雪の花の痕跡。


【識別名:雪花せっか


「ステイラ側の固有魔法使いの一人」


「高出力・局地制圧型」


「火力は、

 人類悪に次ぐレベル」


その言葉に、

誰も反論しない。


「ただし」


分析官が、

続ける。


「無差別性は低い」


「人的被害を、

 意図的に避けている」


「今回の被害は」


「物流・軍事・インフラに限定」


「避難が遅れた区域であっても、

 人の密集を避けている」


「……つまり」


「破壊は、

 交渉の前提条件」


会議室が、

静かに理解する。


「勇者エレギオンの、

 指示か」


「可能性は高いです」


「雪花の行動は、

 明確な目的を持っています」


資料が、

切り替わる。


【行動目的推定】

・戦力誇示

・反応時間の計測

・交渉価値の再算定


「……再算定?」


「はい」


「我々が、

 どこまで耐え」


「どこで、

 話し合いに出るか」


「その境界を、

 測っています」


「……合理的だな」


誰かが、

低く呟く。


「感情が、

 一切入っていない」


「それが、

 勇者エレギオンの

 やり方です」


責任者が、

言葉を引き取る。


「彼は」


「戦争を、

 目的にしていない」


「内戦を避けるために、

 外への圧力を使う」


「地球侵攻は」


「彼自身の世界を、

 まとめるための“代替戦争”」


その定義は、

重かった。


「……つまり」


「我々は、

 敵というより」


「調整弁として、

 使われている」


否定は、

出なかった。


「雪花が、

 最初に選ばれた理由は?」


分析官が、

端末を操作する。


「理由は三つ」


「一つ」


「視覚的に分かりやすい」


「雪・凍結・破壊」


「誰が見ても、

 “危険だ”と理解できる」


「二つ」


「殺しすぎない」


「人類悪のような、

 回収不能な憎悪を生まない」


「三つ」


一拍。


「引き返せる」


「雪花は、

 撤退を前提に設計されています」


「攻め切らない」


「壊し切らない」


「……警告として、

 最適だ」


責任者が、

静かに頷く。


「勇者エレギオンは」


「この一撃で、

 我々の内部反応を観測し」


「次のカードを切るかどうか、

 判断する」


「次は、

 誰になる?」


会議室の空気が、

一段張り詰める。


「可能性は、

 二名」


「炎帝、

 もしくは」


「接触型の、

 不可視能力者」


誰も、

口に出さない。


だが、

全員が同じ結論に達する。


「……時間がない」


「はい」


「交渉が、

 失敗した場合」


「次は、

 もっと近くに来ます」


「人が、

 避けきれない場所に」


沈黙。


「……特異点本人には?」


責任者が、

問いかける。


「既に、

 概要は共有済みです」


「彼は」


「この攻撃を、

 “警告”として

 正しく受け取っています」


「なら」


「次の一手は、

 彼が動く番だ」


会議は、

そこで終わった。


同時刻。


主人公は、

雪花の映像を

静かに見ていた。


派手だ。

だが、

やりすぎていない。


合理的。

冷静。

撤退前提。


「……勇者の、

 やり方だな」


雪花は、

敵ではない。


**“時間を削る存在”**だ。


交渉点を潰す策は、

もう机上では練れない。


現実が、

一歩ずつ近づいている。


雪は、

まだ降っていない。


だが、

次に降る場所は

もっと人に近い。


第二部は、

次の臨界へ向かう。

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