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第二部・第21話 雪は、警告として降った

最初に異変が報告されたのは、

都市外縁の物流地区だった。


工場と倉庫が並ぶ、

人の少ない区域。

避難計画上、

「後回し」に分類されていた場所。


「……気温、急低下?」


観測員の声は、

半信半疑だった。


「数値がおかしい。

 局地的に、

 マイナス二十度を超えてる」


「降雪は?」


「……してないはずです」


その直後だった。


監視カメラの映像が、

白く染まった。


雪だ。


ただの雪じゃない。


粒が、

異様に大きい。

速度が、

速すぎる。


「……雹?」


「違う、

 形状が……」


次の瞬間、

倉庫の屋根が砕けた。


音は、

爆発に近い。


だが、

爆炎はない。


あるのは、

 一瞬で凍結する衝撃。


金属が、

悲鳴を上げる。

コンクリートが、

ひび割れたまま固定される。


「……攻撃だ」


誰かが、

ようやく言った。


「これは、

 攻撃だ」


雪は、

広がらない。


一直線に、

区域をなぞる。


工場。

倉庫。

道路。


人がいない場所だけを、

 正確に選んで。


「……被害予測」


「人的被害、

 今のところゼロ」


「……意図的だな」


その言葉が、

現場に重く落ちた。


雪は、

降り続けている。


だが、

街全体を覆う気配はない。


必要な場所だけを、

壊していく。


「……まるで」


誰かが、

呟いた。


「見せつけてるみたいだ」


次の映像。


冷却された道路が、

一瞬で脆くなり、

装甲車が横転する。


爆発はない。

炎もない。


だが、

動けない。


「……熱源を、

 徹底的に奪ってる」


「火力じゃない」


「制圧だ」


そのとき。


空から、

“形”が降りてきた。


人影。


白い外套。

舞い落ちる雪と、

完全に同化している。


「……確認」


「目標、

 人型」


「識別不能」


人影は、

地面に降り立つ。


足元で、

雪が花のように広がった。


一瞬で咲き、

一瞬で凍る。


「……あれが」


「固有魔法使い」


誰も、

その名前を知らない。


だが、

理解は早かった。


「……撃て」


迎撃指示が出る。


弾丸が、

空を切る。


だが。


弾は、

途中で砕けた。


凍結。


撃ち落とされたのではない。

 “成立しなかった”。


「……通らない」


「熱量が、

 全部奪われてる」


人影は、

動かない。


ただ、

周囲の雪が増える。


降らせているのではない。


存在しているだけで、

 環境が書き換わっている。


「……撤退」


即断だった。


「被害を、

 これ以上拡大させるな」


装甲車が、

動かない。


だが、

人影は追わない。


ただ、

一歩前に出る。


その足跡から、

巨大な雪の花が咲く。


「……あれ」


「攻めてきてるんじゃない」


「示してる」


どこまで来れば、

壊せるか。


どこまでなら、

壊さないか。


雪は、

境界線を描いていた。


やがて。


人影は、

空を見上げた。


そして、

何も言わずに消えた。


雪だけが、

残る。


数分後。


降雪は、

止んだ。


気温は、

ゆっくり戻る。


被害報告が、

集計される。


人的被害、

ゼロ。


建造物被害、

甚大。


「……完全に」


「警告だ」


その評価に、

異論は出なかった。


同時刻。


遠く離れた場所で、

主人公は報告を受け取る。


写真。

映像。

解析データ。


「……雪花」


誰かが、

その名を口にした。


高火力。

制圧型。

非無差別。


合理的で、

 冷静で、

 交渉前提の破壊。


人類悪とは、

違う。


だが。


「……次は」


主人公は、

静かに呟く。


「もっと近くに来る」


交渉点を潰す猶予は、

さらに削られた。


雪は、

降らなかった。


だが、

世界はもう

冬を知ってしまった。


第二部は、

次の圧力へ進む。

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