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第二部・第20話 交渉点を潰すという発想

策は、

ひらめきでは生まれなかった。


静かな部屋で、

主人公は机に向かい、

紙に向かってペンを走らせていた。


書いているのは、

作戦でも戦力配置でもない。


条件だった。


「……何が、

 交渉点になっている」


声に出して、

自分に問いかける。


一つ目。

自分。


第一部の特異点。

世界を止めた実績。

勇者エレギオンが直接会いに来た理由。


これは、

消せない。


二つ目。

妹。


未成年。

能力の最適化。

交渉材料になり得る立場。


これも、

今すぐ消すことはできない。


三つ目。

自分が妹を守ろうとする意思。


ペンが、

そこで止まる。


(……ここだ)


勇者は、

妹そのものを脅したわけじゃない。


管理側も、

妹を拘束しようとしていない。


彼らが見ているのは、

自分の判断だ。


「妹を守る → 選ばされる

 妹を守らない → 交渉点が消える」


単純すぎる図式。


だが、

現実はそれを許さない。


「……守らない、

 なんて選択肢はない」


言い切った瞬間、

ペン先が震えた。


「なら」


「守るという行為を、

 交渉点にならない形に変える」


書きながら、

自分でも無茶だと思う。


「どうやって」


ペンが走る。


・距離を取る

・役割を変える

・守る主体を分散する

・“一人の判断”にしない


最後の一行で、

手が止まる。


(……一人の判断じゃなければ)


勇者は、

自分を見に来た。


一人で世界を止めた男として。


なら。


「一人で守らなければいい」


紙に、

強く書く。


「交渉点は、

 単独の意思に集中すると成立する」


「なら」


「意思を、

 分割する」


管理側。

協力者。

世界。


妹を守る判断を、

自分一人のものにしない。


だが。


(……それ、

 できるのか?)


第一部の自分を思い出す。


誰にも頼らず、

誰にも決めさせず、

一人で背負った。


結果、

世界は助かった。


同時に、

誰も責任を分けられなかった。


「……今回は、

 逆をやる」


小さく呟く。


守る判断を、

個人から切り離す。


妹を、

「守る対象」から

「意思決定者」に近づける。


(……だから、

 あいつは役割を変えようとしたのか)


第二部・第19話の会話が、

頭をよぎる。


隣に立つ。


それは、

感情論じゃない。


「交渉点を、

 “家族”から

 “陣営”に変える」


書いた瞬間、

胃が重くなる。


それはつまり。


「……妹を、

 巻き込む」


守るために、

戦わせる。


選択肢を与えるために、

責任を分ける。


それが、

本当に守ることなのか。


ペンを置き、

椅子にもたれる。


「……くそ」


第一部より、

よほど汚い。


だが。


勇者エレギオンの言葉を思い出す。


「内戦は、必ず全滅を生む」

「外への戦争は、止められる可能性がある」


自分は、

何を止めたい。


世界か。

家族か。


違う。


「……選ばせる構図そのものだ」


交渉点がある限り、

誰かが選ばされる。


なら。


「選べない構図に、

 書き換える」


それが、

自分にできる唯一の反撃。


時計を見る。


時間は、

残っていない。


そのとき。


端末が、

静かに震えた。


通知。


【外縁部・異常発生】

【高出力現象】

【分類:固有魔法使い級】


「……来たか」


紙の上の文字を、

もう一度見下ろす。


策は、

まだ完成していない。


だが。


考える猶予は、

 奪われた。


交渉点を潰す策は、

“詰める段階”から

“現実と競争する段階”へ移った。


雪花が、

動き出す。

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