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第36話 百パーセントは、裏切らない

指は、迷わなかった。


迷う理由は、

もう全部、前の話数で削ってきた。


確率指定の行。

その横に並ぶ、数字。


1%

10%

50%

――100%


俺は、

100%を選んだ。


押した瞬間、

世界が派手に変わることはなかった。


音もない。

光もない。

視界も揺れない。


天運は、

 “演出”をしない。


ただ、

「そうなる」だけだ。


少女が、

一歩、踏み込む。


その動作は、

いつも通りだった。


遊びの続き。

殺しの延長。

評価対象が、近づいてきただけ。


「……ねえ」


「本当に、

 逃げないんだ」


声は、

最後まで無邪気だった。


俺は、

答えない。


答えたら、

それは対話になる。


天運は、

対話の余地がある事象を嫌う。


結果が一つであること。

それだけが、条件だ。


少女が、

手を伸ばす。


指先が、

俺の胸に触れる。


少女はつぶやく

「もし幸運の能力者の頭部を生きたまま杖〈アーティファクト〉にしたらわ」

何かをいいかけたその瞬間。


世界が、

 正解を選んだ。


音は、

遅れて来た。


まず、

白。


視界が、

完全に塗り潰される。


次に、

圧。


全方向から、

叩き潰される感覚。


熱。


焼かれる、

という認識すら、

遅れて追いつく。


原子爆弾は、

 想像より静かに始まる。


少女の姿が、

一瞬だけ見えた。


驚きはない。

恐怖もない。


ただ。


「……あ」


理解だけが、

そこにあった。


人類にとって、

 明確な悪である行動。


それを、

実行しようとした瞬間。


上書きされた。


光が、

全てを消す。


衝撃波が、

街を平らにする。


建物も。

瓦礫も。

意味も。


“人類悪”という概念は、

その場で終わった。


爆心地に、

彼女はいない。


いた、という過去だけが、

確定する。


天運は、

結果を残す。


「人類悪は死んだ」


その一文だけが、

世界に刻まれた。


それ以外は、

どうでもいい。


だから。


俺は、

どうでもよくならなかった。


意識が、

一度、切れる。


だが。


切りっぱなしには、

ならない。


悪運が、

 最後に働いた。


「即死しない」


それだけが、

選ばれる。


肉体が、

燃え尽きない。


骨が、

砕けきらない。


内臓が、

完全には失われない。


結果。


全身火傷。


皮膚感覚、

消失。


筋肉、

壊死一歩手前。


呼吸、

不可能。


視界、

暗転。


だが。


生きている。


それが、

最悪だった。


爆風に吹き飛ばされ、

瓦礫の中に叩きつけられる。


意識は、

浮いたり沈んだりを繰り返す。


音が、

遠い。


時間感覚が、

壊れる。


どれくらい経ったか、

分からない。


ただ。


誰かが、

叫んでいる。


「……見つけた!」


声が、

震えている。


「……生きてるぞ!」


その言葉を聞いた瞬間。


俺は、

初めて思った。


――しまった。


これは、

勝利だ。


だが。


俺が生きている限り、

 後始末が始まる。


放射能。

熱傷。

壊死。

不可逆損傷。


回復能力が、

何人必要になる?


何人が、

危険に晒される?


俺一人のために?


意識が、

再び落ちる。


最後に残ったのは、

その疑問だけだった。

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