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第34話 気づかれないのは、理由がある

爆弾は、最初から完成品ではなかった。


むしろ逆だ。

完成させないことが、最初の条件だった。


地下施設の一角。

隔離された区画で、能力者が一人、黙々と作業をしている。


爆弾限定強化能力者。

年齢も、所属も、今は意味がない。


重要なのは、

この男が“爆弾にだけ”異常な補正を掛けられるという事実だ。


「……数値、もう一段上げます」


能力者が、静かに言った。


「やめろ」


俺は、即座に止める。


「これ以上は、

 完成度が高くなりすぎる」


能力者が、怪訝な顔をする。


「……威力は、

 高い方が――」


「違う」


「完成した兵器は、

 “気配”を持つ」


俺は、

モニターを指した。


表示されているのは、

人類悪の行動ログ。


「彼女は、

 兵器を見ていない」


「人を見ている」


能力者は、

口を閉ざした。


爆弾は、

“強いほど目立つ”。


だが、

人は違う。


「爆弾は、

 未完成のまま俺に組み込む」


「威力は、

 起爆直前にだけ確定」


「それまでは」


「ただの重りだ」


能力者は、

ゆっくり頷いた。


「……理解しました」


作業は、

再開される。


次に詰めるのは、

なぜ気づかれないかだ。


分析担当が、

資料を表示する。


「人類悪の感知傾向ですが」


「彼女は、

 敵意・殺意・抵抗意思を

 極端に優先して認識しています」


「逆に」


「“諦め”や“受容”には、

 ほぼ反応しません」


俺は、

小さく息を吐いた。


「……子供だな」


誰も、

否定しなかった。


「純粋な悪人であり、

 同時に純粋な子供です」


分析担当が、

淡々と続ける。


「“遊び”に集中している間」


「周囲の危険評価は、

 著しく低下します」


「特に」


「人を殺す瞬間」


空気が、

一段冷える。


「その瞬間だけは」


「世界が、

 “獲物”しか見えなくなる」


俺は、

その言葉を噛み締めた。


「……だから、

 爆弾を持つのは俺だ」


「兵器が歩いてきたら、

 即気づかれる」


「だが」


「死にに来た人間なら、

 ただの“素材候補”だ」


分析担当が、

視線を伏せる。


「……気づかれない理由は、

 それだけではありません」


次の資料。


「人類悪は」


「人類を、

 “対等な存在”として

 認識していません」


「強いか、弱いかではない」


「“使えるかどうか”だけ」


俺の名前が、

画面に表示される。


「あなたは」


「戦線では、

 運任せで生き残るだけの存在」


「英雄でも、

 指揮官でもない」


「危険評価が、

 最低ランクです」


俺は、

静かに笑った。


「……好都合だ」


次に詰めるのは、

近づき方。


「正面からは無理だ」


「だから」


「人を殺している最中に、

 近づく」


誰も、

反論しなかった。


「彼女は」


「殺すこと自体に、

 補正を得ている」


「だから」


「殺しに集中している間が、

 一番無防備だ」


倫理的に、

最悪の事実。


だが、

戦争は倫理で止まらない。


最後に。


「起爆後」


医療担当が、

小さく言う。


「……生存確率は」


「低い」


俺は、即答した。


「だが」


「即死ではない可能性がある」


「悪運が、

 そこを拾う」


「拾った結果」


「全身火傷で、

 生き残る」


誰も、

安堵しなかった。


生き残ること自体が、

地獄だからだ。


「……それでも」


医療担当が、

震える声で言う。


「それでも、

 やるんですね」


俺は、

頷いた。


「気づかれない理由は、

 もう揃った」


「彼女は」


「悪に夢中で、

 子供で、

 人を見下している」


「そして」


「俺は、

 爆弾に見えない」


これでいい。


準備は、

整った。


あとは。


百%を、

 押すだけだ。

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