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第27話 準備体操は、国でやる

最初に降り立った場所は、空港だった。


正確には、

かつて空港だった場所だ。

滑走路は割れ、管制塔は半壊し、空は灰色の煙で塞がれている。

それでも、地図上では“空港”と呼ばれる地点。


少女は、そこに立った。


背は低い。

年の頃は、十代前半に見える。

服装は簡素で、戦場に似合わない。


手には、何も持っていない。


「……ここ、広いね」


独り言のような声。


誰に聞かせるでもない。

誰の反応も、待っていない。


次の瞬間、

銃声が響いた。


遠距離からの一斉射撃。

警告ではない。

確認でもない。


排除だ。


少女は、

振り向かなかった。


弾丸は、

届かなかった。


正確には、

届く前に意味を失った。


空気が、歪む。


銃弾が、

減速する。


減速ではない。

価値を失う。


少女は、

小さく首を傾げた。


「……あ」


「これ、

 人類にとって“悪”なんだ」


その理解が、

強化条件だった。


次の瞬間。


空港の一角が、

消えた。


爆発ではない。

破壊でもない。


そこにあったものが、

“無かったこと”になった。


兵士も。

装備も。

遮蔽物も。


叫び声は、

上がらない。


理由は単純だ。


叫ぶ前に、終わる。


「……ふーん」


少女は、

興味なさそうに周囲を見渡した。


「人類って」


「壊れるの、

 早いんだね」


次の部隊が、

前に出る。


戦車。

装甲車。

無人機。


理論上、

対個人戦力としては最上位だ。


少女は、

一歩、前に出た。


「……準備体操」


それだけ言って、

手を伸ばす。


戦車の砲身が、

歪んだ。


金属が、

内側から折れ曲がる。


「……あ」


「人の命より、

 道具を壊す方が軽いんだ」


理解。


強化。


次の瞬間、

戦車が“素材”になった。


ばらけない。

散らばらない。


まとめられる。


「……もったいないな」


少女は、

倒れた兵士を見下ろす。


「まだ、

 使えそうなのに」


その言葉が、

戦線全体に伝播した。


アメリカ軍のログは、

ここで壊れた。


交戦時間:不成立

損耗率:急上昇

敵被害:測定不能


少女は、

歩く。


走らない。

急がない。


「……んー」


「頭、

 どうしようかな」


その一言で、

空気が凍った。


「脳ってさ」


「人類の“個性”が、

 一番詰まってるでしょ」


「それを、

 生きたまま使えたら」


少女は、

楽しそうに笑った。


「……杖、

 作れるよね」


その瞬間。


アメリカ戦線の指揮系統が、

完全に沈黙した。


これは、

侵攻じゃない。


試運転だ。


少女は、

最後に一度だけ空を見上げる。


「……次は」


「ちゃんと、

 相手してくれる人がいいな」


その願いは、

まだ軽い。


だが、

その軽さこそが、最悪だった。

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