表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
124/129

第三部・第34話 そこだけ、雪が降らない

雪は、降っていなかった。


前線一帯。

高度。

風向き。

湿度。


どれを取っても、

雪が降っておかしくない条件は揃っている。


だが、

そこだけ、降らない。


雪花は、空にいない。


地上にもいない。


前線でも、後方でもない。


少し外れた地点に、視線を固定している。


管理側の観測画面には、

ただの空白が映っている。


「……何もないな」


「施設も、部隊も、

 避難所すらない」


「じゃあ、

 なぜあそこを?」


答えは出ない。


だが、

読者には見える。


そこは、

**八乙女いろはが“いない場所”**だった。


正確には、

“さっきまで、いた”。


配置換え。

安全確保。

後方移動。


理由は合理的。

説明も通る。


だが、

その移動の瞬間。


雪花の視線が、

ほんのわずかにズレた。


(……違う)


雪花は、内心で思う。


(ここじゃない)


雪を降らせる準備は、

できている。


力もある。

理由もある。


それでも、

降らせない。


「雪花、攻撃準備なし」


観測ログが更新される。


・降雪:未実施

・対象:不明

・理由:判断保留


前線では、

炎帝が動かない。


管理側は、

配置を疑い始める。


だが、

誰も“そこ”を疑わない。


いろはは、

校舎の一室で、

服の袖を整えている。


新しい布。

ほつれのない縫い目。


紬が選んだ服。


「……雪、降ってないね」


誰に言うでもなく、

呟く。


その瞬間。


雪花の視線が、

完全に止まる。


(……ああ)


雪花は、

確信する。


(ここが基準だ)


雪を降らせれば、

汚れる。


基準が、

歪む。


だから、

雪は降らない。


管理側のログには、

何も残らない。


だが、

戦況だけが静かに変わる。


・前線:意味喪失

・火力:抑止不能

・敵行動:保留


雪花は、

次を考えている。


「次は、

 違う」


その“違う”が何かを、

この時点で知っているのは、

読者だけだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ