人生二週目
世界は不思議なもので溢れている。そう例えば――空気がなぜあるとか、空はなぜ青いとか。鳥はどうやって飛ぶのだろうとか。
人生二週目で、頭に前回の記憶が在るとか……。前世ではない。前回だ。これが前回で無ければ私のがただ、ただおかしいと言うことになる。尤も、悔しいことに前回のことは断片的でよく覚えてない。ただ覚えているのは『誰かの為に満足して死んだ』と言う事だろうか。
……馬鹿じゃないのかな。私。死んだら贅沢出来ないじゃん。え? 贅沢。そりゃあ私の好きなお菓子をお腹いっぱいに。
まぁ。相変わらず贅沢とは程遠い世界にいるのだけど。
それにしても、今回は前回とは少し違うんだよね。これが同じ世界なのかと思うくらいには。
前に無かったものとして、この世界には『怨妖』と言うものがいる。何だっけ。強い呪いによって生まれる獣みたいなもの。呪いと言うのは――まぁ。よくわかんないけどその怨妖は人を殺す。食べる為だけではなくて、殺すために殺す。そんな感じで。まぁ対抗は普通にしてるけど、人間もごく普通に対抗はしてるけど、奴ら人を殺すだけでなく、取りつく(・・・・)んだよね。つまりそうやって個体数を増やしていく特殊な生殖方法――取りつくのは人だけではない――だった。それを払う――浄化できるのは隣国デリアスの神官のみだって聞いた。……だってこの地で実際に見たことないから。神官はそれほど数が居なくて民を救う余裕なんてない。
それにしても。
前は戦争だけだったのに。いや、それよりはマシなのかなぁ。どっちもどっち。そして私の国は何も変わらなくて、相変わらず貧しい。国が貧しいので国民が貧しい訳で。私たちはまたもや大人に棄てられるしかなかった。
別にいいけど。大人の気持ちは分かんないけど、二回も傷つかないもの。
ただ弟が可哀相、と思ったら今回弟が強い。おかしい。泣き虫で私の後ろに隠れる様な子だったのに。そう。言うなれば天使。天使だった。その弟が殺意を身に着けて殺伐としているんだけど。いや、それもかわい……ごほん。
兎も角として、私は一度目とは違う道を探したんだ。だって、町で大人たちから逃げ回って、残飯を食べて怯えて暮らすのは弟の為に良くない。大体そのせいで前回弟は片腕失くしたような……。
とにかく。
この世界に怨妖が居る為にそれに対処する戦士たちと言うのが存在してる。その養成所に入ればただでご飯が食べられて、ただで布団が手に入る。追い出されることはない。と言うことで、私たちはその養成所に転がり込んでいた。僅か六歳。あ。私と弟は双子なので天使な弟も六歳で。
死ぬような思いで生き残ったんだ。
それから気付けば六年が経っていた。