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休日2

「あなたは?」


 静かな声にぼうっと見惚れるように見ていたユリアは我に返り慌てて口を開く。もう壊れた人形の様にぎこちないけど大丈夫なのかな……。


「――え。はいつつ。ゆゆゆゆ、ユリア・メソッドといいますっ。アドラー様にはおおおお、お日柄もよく」


 大丈夫ではないらしい。目を白黒したまま話している。そんなユリアを相変わらずニコニコと見つめているアドラー。


「僕の事を知っているの?」


「もももも、もちろん。全女子のあああ、憧れの的ですから。そこの王子と勢力を二分する――」


「誰が王子だ」


 不機嫌そうに突っ込みを入れたのはシュガーだ。王子と言うのは女子の間で――男子からは揶揄い混じり――付けられたあだ名だった。まぁ外見は正統派な王子様のようだし、外面も良いので自業自得だとは思う。


 本人は不機嫌さを表に出している通りそのあだ名は嫌いらしいが。


 ちなみに私は姉弟と言うことに気付かれていない事すらある。時折、私の存在に気付いた女子が『何様』とか言ってくるけど名乗るとなぜか顔を引きつらせて、励まされるのはなぜだろう。


「へぇ、人気者なんだ。王子?」


「あ?」


 アドラーが揶揄うように言ったので、険悪な雰囲気が増す。いや。アドラーもなのかい。という突っ込みは置いておいて、私はシュガーの手を引っ張っていた。ぐらりとバランスを崩したのかシュガーの顔が近くなる。


「姉さま?」


「丁度いいや。シュガー。前、約束したよね。私の友達を可愛くしてくれるって」


「シャロ?」


 耳元で内緒話をするかのような姿勢。思わず小声になっているため、雑踏にかき消されて少し離れたところには聞こえにくいようだった。ユリアは不思議そうに首を傾げる。そのユリアをちらりとシュガーは見た。


 なぜ自身が『人気者』に視線を向けられたのか分からずユリアは肩を揺らす。


「……うん。でもそれは祭りの後では?」


「色々買わないとでしょう? とりあえず今から服とか買い出しに行くから――シュガーは」


 最後まで言う前にシュガーの手にポンっと財布が置かれる。もちろん私のではない。頑丈そうな麻の財布。それを目を瞬かせてシュガーは見、アドラーに目を向けた。そのアドラーはなんか良い事思いついた少年のように満面の笑みで在る。


 なんだろう。嫌な予感しかしない。


「なんだ? コレ」


「それあげるからその計画実行しておいでよ。ただし、メソッドさんと二人で、ね?」


「は?」


 その声はユリアが発したものか、私か。それともシュガーか。重なったため分からなかった。何言っているんだろうと全会一致で見つめる中アドラーだけが超ご機嫌であった。


「いや、私はシャロと」


「顔が似てるんだから同じですよね?」


 笑顔で暴論を言わないで欲しい。基本は似てるけど、似ていないし。何言っているんだと言う顔を一様にしているがアドラー自身は気にならないようだ。


「いや、私はユリアと――」


「俺は姉さまと」


「では。そう言うことで」


「てめえ、この#$#%#&'%U#7Z(!!!!――ふざ……」


 ぐっと握られていた腕が引っ張られる。それと同時にぐらりと目の前の空間が歪んでいた。空間の向こうで罵詈雑言が聞こえたような気がしたが――私の天使はそんなこと言わない。言わないと現実逃避を再びしていた。

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