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20話「遭遇戦」

 俺たちに向かって飛来した弾丸にいち早く対応したのは、スウェルの人格をコピーした軍用ドローンだった。


「あいたたたたたた! 痛いよお!」


 スウェルの人格をコピーした軍用ドローン、敵と判別するためにコイツはスウェル2号としよう、そいつは弾を装甲で弾きながらドローンらしからぬリアクションをとっていた。


「せめて声は抑えろ。社長に不審がられたらどうするんだ」


「だって感覚は無くても実弾なんだよ。怖いよう」


 俺が話しかけたスウェル2号は、スウェルのように生ぬるい発言をした。見た目は違えど、やはり中身はスウェルなのだ。それだけでも頼りなさは普通の100倍だった。


「しばらく盾になってろ。反撃する」


「早く敵を倒してよ。いくら軍用ドローンの私でも辛いんだからね」


「おう……。って、今のはスウェルの方か。ったく、ややこしいな」


 俺はスウェル2号の存在を違和感なく受け取っている自分に少し戸惑いつつも、自前の拳銃を取り出した。


 ノーヘッドの方はお付きのアンドロイドであるマリーを前に立たせ、実弾をさえぎっている。マリー自身も両腕を開いて被弾面積を多くとり、ドレスを突き破る銃弾も意に介せず仁王立ちしていた。


「社長。いけるか?」


「こちらは大丈夫だ。反撃したまえ」


 俺たちはそれぞれうす暗闇の中の発光を頼り、応戦を開始する。


 視えてはいないが放った銃弾によって黒いレースの向こう側から金属の跳弾音が聞こえる。当たってはいるようだが弾かれる以上、相手に致命傷を与えられる様子はない。


「援護する、移動しなさい。右の角を曲がれば食堂だ。開けた場所で迎え撃つ」


「了解、俺も賛成だ」


 ノーヘッドの提案に俺も同意し、銃弾の雨から逃れて案内板に従い食堂に向かった。


 食堂は他の場所と同じく非常灯しかない薄暗い場所だが、十分視界が確保できるし暴れられる広さだ。縦に長い廊下よりもかなり戦いやすい。


 俺たちは手分けしてその辺のテーブルをかたっぱしからひっくり返し、障害物を増やす。そして最後に最奥でバリケードを作り、敵の出方をうかがった。


 果たして廊下の向こう側から対象は現れた。型番はスウェル2号が憑りついている軍用ドローンと同じマイヅル、数は3体だ。


 敵のマイヅルは食堂に入ると横に広がり、一斉掃射を開始する。備え付けの機関銃から発射された弾幕は倒されたテーブルを貫通し、俺たちの元にも届いた。


 辛うじてスウェル2号とマリーの盾で敵の弾を避け、攻撃が収まるのを待った。


 そしてついに、敵のマイヅルは弾倉の弾を撃ち切り、再装填の動作に入った。


「今だ!」


 俺は敵のマイヅルの前に突っ込み、ノーヘッドは後ろから援護を開始した。


 ノーヘッドの射撃は巧みで、敵のマイヅルの1体の視覚カメラを破壊していた。


「ふんっ!」


 俺はサイボーグの腕で前に突き出している敵のマイヅルの頭を殴る。


 マイヅルの頭は俺の凄まじい膂力りょりょくで衝撃と共に引きちぎられ、バスケットボール大の頭部が床に転がった。


 しかしマイヅルは照準を見失ったものの、まだうごいている。どうやら頭脳に当たるAIは胴体に収納されているようだ。


「どっこいしょ!」


 そうなれば話は早いとばかりに、俺は敵のマイヅルを抱きすくめて持ち上げ、裏返しにした。


 マイヅルはひっくり返ると亀のようにジタバタと四肢を動かし、無駄な抵抗を見せた。


 俺は両手を握りしめるとマイヅルの横っ腹を狙い、叩きつける。


 鉄塊のような握りこぶしを受けた敵のマイヅルは装甲ごとへし折れ、動かなくなった。様子を見るに上手くドローンの中枢部を破壊できたようだ。


「迫撃砲!」


 ノーヘッドが叫ぶように、別のマイヅルはそれまで使っていなかった迫撃砲の砲塔を動かしていた。


 俺は素早く動き、狙いを付けているマイヅルの懐に潜り込むと、転がっている椅子を掴んでそのままマイヅルにぶつけた。


 マイヅルは俺の一撃でよろめき、ちょうどいい隙を見せる。


 俺は再び両手を固めると、バッターのように振り抜いてマイヅルの機体を打ち砕いた。


「残り1!」


 俺は戦闘不能になった2体のマイヅルを置き去り、最後のマイヅルを狙う。


 生き残りのマイヅルは接近戦を想定していたのか、前足を振り上げた。


 俺はかろうじて両腕で防ぐも、その脚力は馬並みだ。マイヅルはたった一撃で俺を跳ねのけ、更に迫撃砲を構えた。


「離れたのならちょうどいい」


 俺の接近は迫撃砲の発射に間に合わないが、ノーヘッドは違う。


 装填しておいた銃口下部の円筒形の筒からグレネード弾を発射し、それが放物線を描いてマイヅルの身体に接触し、破裂した。


 炸裂した破片はマイヅルに突き刺さり、痛手を与える。それでもまだ動くマイヅルに対して、俺は近づいて片腕を振り上げた。


 ――ガンッ! と俺の手刀がマイヅルを貫き、ついにマイヅルは動きを止めて機能を停止した。


「これで最後か?」


「分からない。しかしまだ第3地下には相当数の軍用ドローンがいるはずだ。早く移動した方が良い」


 俺はノーヘッドの勧めに反対せず、すぐに食堂を出て目的の階段に移ろうとした。


 だが、俺たちは食堂の唯一の入り口から別の人影が現れるのを目撃するのであった。

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