85. 直向き(ひたむき)
俺達は女神像に向かって、祈りを捧げた。
すると、坂井隊長の身体が薄く光っている。さっそく鑑定して確認することにした。
ジロウ・サカイ Lv2
年齢 23
状態 通常
HP 36/36
MP 4/4
筋力 16
防御 12
魔防 4
敏捷 13
器用 13
知力 4
【特殊スキル】 時空間魔法
【スキル】 槍術 (1) 鑑定(3)
【祝福】 ユカリーナ・サーメクス
ほうほう。んんっ。時空間魔法(ダンジョン)?
初めて見るが、おそらくダンジョン限定なのだろう。 明日検証だな。
しかし、MPがこれではな。仕方ない、シロでドーピングするとして。 あとは、魔法のブレスレットで何とかするか。
女神さまから祝福も授かっているので、レベルも格段に上がりやすくなるだろう。
そして、得物だな。 これは自衛隊ということで、ズバリこれ。ミスリル合金製のシャベルだ。
これなら、普段から持っていても違和感が少ないだろう。
そんな訳で、坂井隊長には自分で鑑定してもらいながら、いろいろ説明していく。
そして、出来るだけ協力してもらえるようお願いしておいた。
しかし、自衛隊の中ではなかなか難しいよな。最悪、秘密さえ守ってもらえばいいかな。
そして、次の日。茂さんの訓練に合わせて、坂井隊長にも来てもらった。
シロのドーピングにより魔力操作も3まであがっている。
俺の革鎧姿に目を見張っていた坂井隊長も、茂さんの甲冑には、
「おおおっ!」 と、さすがにのけ反っていたな。 大型偃月刀も携えているしな。
茂さんやタマ達を見送って、俺と坂井さんもダンジョンへ潜っていく。
坂井さんに伺ったところ、自衛隊の皆さんは 今現在3階層の半ばまで攻略を進めているようだ。
そして俺達は5階層に出て来た。もちろんパワーレベリングのためである。
いつものようにシロが先導し、ゴブリンやホブゴブリン ウルフなどを相手にポンポン手や足を飛ばしていく。
坂井さんはミスリル合金のシャベルで、ボスボス止めを刺して回るだけの簡単なお仕事だ。
初めは、本当にこれで良いのか? と言う目で、訴えかけていたが。
レベルが上がり。強くなっていくのが分かると、文句も言わず黙々と攻略を進めていった。
レベルも上がり、慣れてきたところで魔法も使っていく。 発動キーは俺の場合と同じようだ。トラベルが長距離ジャンプ。 スキップが短距離ジャンプだ。
MP増量のブレスレットを渡し、いろいろ試した結果。
トラベルは階層越えも出来るようだ。使用MPは7。 2人転移だとMPは9となるようだ。
次にスキップだが、見通せる範囲なら戦闘中でも念じれば即発動してくれるようだ。
ただ、使用MPは1回ごとに6と少し高めになっている。 それでも、十分切り札にはなってくれるだろう。
それにしても、坂井さんはとても嬉しそうだ。 やはり、魔法は ”男のロマン” でもあるからな。
まあ、調子に乗ってスキップを使い過ぎ。MPが切れてヘェーヘェー言っていたのは、みんなには内緒にしておこう。
そんな感じで、朝食も 昼食もダンジョンの中で済ませ、まるまる1日ダンジョンに潜っていたことになる。
レベルも2つ上がって Lv.4 になった。 しかし、さすがは自衛隊の叩き上げである。ダンジョン攻略が終わったあとも、”どうということはない” といった顔つきだったなぁ。
このように直向きに頑張る人間は嫌いではない。 また機会が有れば、とことん付き合ってやろうとおもう。
そして、ダンジョンから神社に戻り。夕飯を食べたあと、坂井隊長は意気揚々としてベースに帰っていった。
それから3日。豊洲ではラットを見たという報告もなく、都内でモンスターが暴れるようなこともない。
東京から来ている楓と、久実さんを指導しながら過ごしていた。
そして満月を明日に控え、俺は帰り支度をしていた。 今回サーメクスに渡るメンバーは、俺とシロ ヤカン タマ 慶子 楓 久実さんの5人と2匹である。
まあ、楓と久実さんは、マリアベル(葵)に会いに行きたいと強く求められてのものだ。
半分は物見遊山だとは思うのだが、マリアベルを喜ばしてあげたい気持ちも有り許可したのだ。
そして慶子は、今回も冒険者ギルドへの魔石の売却。
そして、前回頼まれていた手鏡やコンソメを中心に買付けを行なっていたようだ。今回も抜かりはないようである。
一方で、居残り組のフウガには、東京の状況を詳しく調べておくように念を押している。
また影達には、茂さんや高校生組が無理をして怪我しないようフォローを頼んでおいた。
夕食を済ました後、それぞれ準備を終えて裏庭に集結する。
今回はフウガ達も顔を見せ、見送ってくれるようだ。
「それでは、5日で戻ります。後はよろしくです」
すると、茂さんはゆっくりと頷いている。 よし、帰ろう。―――トラベル!
「ただいまー。戻って来たよ」
「お帰りなさいませ。ご主人様」 とシオンが迎えてくれる。
「え~。ホントに一瞬なんだ! 服も違うし、人数も増えてる」 と、サキが驚いている。
「こっちでは一瞬に見えるが、向こうで確り20日過ごして来てるからな」
「じゃあ、紹介するぞ。こっちの2人は本条久実さん そしてこっちが楓。親子だ」
紹介を済ませると俺はみんなをリビングに置いて、執務室へ向かうのだった。
10.25 日曜日
10.26満月 .11日ダンジョン




