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83. うさコロ

 ラットが居るとするなら、野生(やせい)はまず無いのでモンスターだろう。 今は魚に目が(くら)んでいるようだが、その内に人を(おそ)いだすだろう。


 注意と警戒(けいかい)が必要だな。 ……待てよ。何もラットだけと決まった訳ではないよな。そうなると今度は幼児失踪(ようじしっそう)事件が気になりだした。


 これも佳奈子(かなこ)に話を通してもらっておこう。 ……こうなってくると、近いうちに東京かな。 出来る限り情報が取れる所に拠点(きょてん)を置きたいところではあるが。


 まあ、軍でも警察(けいさつ)でもないし、この容姿(ようし)ではなぁ。


 これは帰ってから打ち合わせをしながら、積極的(せっきょくてき)に東京の情報を集めていくとしよう。 





 よし、もう一日頑張(がんば)りますかね~。


 そして、次の日。 今日の散歩(さんぽ)全員参加(ぜんいんさんか)だ。


 昨日の話で、みんなで稲荷山(いなりさん)山頂(さんちょう)にお(まい)りしようと言う事になったのだ。


 では、山頂にお参りして、右回りで一周しようという事になった。 ここ「大岩大神(おおいわおおかみ)」を出発し、「末廣大神(すえひろおおかみ)」の横を抜ける。


 分岐点(ぶんきてん)を案内どおり右に進み「一ノ峰(いちのみね)」 そして「山頂」を目指す。


 さすが稲荷山と言うだけあり、山頂へ上がる階段なども赤い鳥居(とりい)でいっぱいだ。 本当に、みんなに愛されているお山だということがわかる。


 参拝(さんぱい)した後は、もとの道に戻り、四ツ辻(よつつじ)を目指してくるりと一周回るだけだ。


 先導(せんどう)はもちろんヤカンがしてくれている。 尻尾をフリフリ心なしか浮かれている感じだ。 こうしてみんなを案内出来る事がとても嬉しいのであろう。





 朝食を済まし、ダンジョンへ(もぐ)っていく。 俺と佳奈子(かなこ)も8階層からスタートだ。


 今日はシロの代わりに、この人 「にゃんにゃニャーん」 タマさんに御同道(ごどうどう)願った。 すると、もの(すご)いスピードで8階層を突き進み。


 今日の課題(かだい)である、「うさコロ」に到着した。 


 短い休憩(きゅうけい)をはさみ、佳奈子に今から行く「ホーンラビット・コロシアム」をルームの柱から(のぞ)いて見るように(すす)めた。


 こちらでは、初めてだったタマも一緒に覗いている。「師匠(ししょう)~。 あれに突っ込むのですか?」 と、ゲッソリ顔の佳奈子。


 「ん。大丈夫にゃ、タマが付いてるニャン」 と、タマはお気楽(きらく)だ。


 さあて、行ってみますかね。 俺達は「うさコロ」に突入した……。


 「よし。いいぞ。 一ヶ所に(とど)まるな! 素早(すばや)く対応すれば、つねに一対一だからな。視線も集中させるな、目を動かさず周りを見ろ」


 と、なかなか(きび)しい注文をつけながら、(そば)で戦い方を確認していく。


 こやつは本当に凄いな。見てるだけで背中がゾクゾクする。


 「これで、最後ニャ。 終わったニャン」


 「おお。そうか。魔法使っていない割に早く片付いたな。さあ、みんなで魔石拾(ませきひろ)いだ」 おっ! ちゃんと「銀の宝箱」が出ているな。





 魔石拾いが終わり、みんなが宝箱(たからばこ)の周りに集まる。


 ……仕方ない。 シロが居ないので、俺が宝箱の(ふた)を開けることにした。


 ――パカッ おお! 金 銀 パール ……ではないな。 あれは白さと香りのヤツだ。 まあ、冗談(じょうだん)はさておき中味を確認する。


 中級ポーション 20㎝角の麻袋(あさぶくろ) シルバーブレスレットの3つだ。


 シルバーブレスレットを鑑定すると、”シルバーブレスレット:防御+5:サイズフリー” とでている。


 まずはタマに選ばせることにした。


 「タマはこれニャ。預かっててほしいのニャ。ご主人様」 と、手渡してきたのは 中級ポーション であった。


 「おう。いいぞ。預かっておこう」


 「じゃあ、後は佳奈子にやって良いか?」 


 タマに(たず)ねるとニコッと笑って(うなず)いている。


 「ほれっ。(もら)っとけ。ブレスレットはすぐ()めろ」


 「えっ、頂いても?」


 「いいぞ。自分で勝ち取ったものだ。そう、これがダンジョンというものだ」


 この後もタマと佳奈子の快進撃(かいしんげき)はとまらず、9階層をクリアし 10階層に突入していった。





 そして、タマがゴブリンライダーに対して使い出したのが、山岳ロープである。すぐクナイを脱着(だっちゃく)できるようにロープの先端(せんたん)には小型のカラビナが付いている。


 どうも、これはフウガに用意させた物らしい。いつの間にか装備(そうび)していたからな。 なるほど。


 ああすれば、クナイを投げても回収(かいしゅう)が楽だな。 また遠心力(えんしんりょく)を利用して遠くの敵を(ねら)ってもいいのか~。――考えたものだ。


そう言えば、同じような武具が中国に有ったよな。 魔法も使えるようになったし、タマはどこまで強くなっていくのだろう。


 などと、いろいろと考えてるあいだに、俺達は鉄の大扉(おおとびら)の前に来ていた。時計を見ると11時30分。


 ……ご飯食べてからだな。 (あせ)っても良い事ないし、タマは入れないしな。クリアしてない者は俺とヤカンだけか。


 では、午後からはヤカンと回らせるか? ただな~。まだ、見えてないんだよな。ヤカンが。


 う~ん、……シロちゃんのドーピングで、魔力操作を即上げするしかないかな~。





 みんなご飯いくよ~と、(むか)えに行くと。 昨日のように観光(かんこう)に行きたいらしい。みんなで基地(きち)転移(てんい)し、シロに浄化(じょうか)を頼んでいる。


 サッパリしたところで、何処(どこ)に行くか話しあう。……そして転移した先は、宇治(うじ)市にある「平等院(びょうどういん)」だ。


 そう、この「平等院鳳凰堂(ほうおうどう)」は世界遺産(せかいいさん)に指定されており有名だ。10円玉の表はこれだからね。


 入場料はお庭と平等院ミュージアム鳳凰館の入館がセットになっている。お池の周りを一周して、ミュージアム鳳凰館にはいる。


 展示物(てんじぶつ)を見て回ったらショップに立ち寄ろう。 学生が多いからだろうか、文具が結構(けっこう)多く置いてある。


 名産の宇治茶(うじちゃ)も置いてあった。 茂さんと高校生組へのお土産(みやげ)に、しおり クリアファイルをいくつか買うことにした。







10.18 日曜日 

10.26満月 .18日ダンジョン




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挿絵(By みてみん)
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