81. 買い取り価格
急に京都行が決まった。周りはバタバタしてる者もいるが、俺はのんびりお茶を啜りながらヤカンをモフっていた。
シロ? シロはダンジョンだ。 ダンジョンマップで場所は分かるので、タマを呼びに行ってもらっている。
今回、此方からの参加者は 俺 シロ ヤカン タマ 慶子 そして佳奈子だ。
集合時間は夜の8時。紗月は短縮授業で昼の1時頃帰って来て、もっか勉強中である。 中間テストは週明けの月曜日からである。 ガンバレ! みんな。
そして、7時を回った頃 慶子がやって来た。 商売の方もボチボチやっているようである。
この前、ポーションの使用期限を聞かれたので、向うでは大体1年位と答えている。
どうやって見分けているのかだが、ズバリ 色である。 古くなるにつれ色がだんだん薄くなっていくのだ。
新しい物と見比べれば分かりやすいが、この世界なら色見本を作って置いておけば良いだろう。魔素の少ないこの世界では、保管はマジックバックを勧めている。
劣化が若干遅くなるのだ。
まあ、インベントリーに入れて置けば劣化はしないので、取りあえずは俺が預かっている。
そして、うちのシロちゃんがいれば、劣化したポーションも復活させる事が可能なのだ。
これは誰にも言っていない。 俺でもまだ、3本に1本しか成功しない難易度なのだ。 とても緻密な魔力操作が要求される。
やり方が悪いとダメになるのだが、もともと廃棄する物なので問題は無い。
だから、みんなに持たせているポーションも定期的に交換しているが、費用が掛かる事はないのだ。
また、魔石に関しては、今のところ劣化したとかは聞いた事がない。
しかし魔道具などで魔力を消費するとだんだん小さくなる。 そして、ある程度小さくなると霧散して消えて無くなるのだ。
それで慶子の買い取り価格だが、小魔石が40円 中魔石が1000円 ダンジョン鉄が50円 低級ヒールポーションは6000円で、引き取っている。
少し安いような気もするが、向うの世界基準でいくとこんな物になるのだ。
冒険者ギルドでの買い取り価格が、小魔石5バース 中魔石が150バース 低級ヒールポーションは売値が銀貨8枚、800バースだ。
ダンジョン鉄に関して言えば、向うでは鉄くずと同じ扱いだろう。 鉄はダンジョンで取らなくとも、普通に魔力を帯びているのだから。
まあ、こちらに冒険者ギルドのようなものが出来れば、どうなるかだが。 どの道1年以上先の話になるだろう。
あるいは、研究機関が独占してしまって一般人が手軽に入れるかどうかも、まだ分からない現状なのだから。
では、今日 佳奈子が獲得したドロップ品を見てみよう。
・小魔石124個 4960
・中魔石が1個 1000
・ダンジョン鉄が34個 1700
・低級ヒールポーション2個 12000
以上である。 慶子が買い取りするなら、¥19660-と言う事だ。
まあ、普通は無理な数字なのだがな。 小魔石とダンジョン鉄のドロップ比率は 124対34か。
需要がある訳だし、もう少しダンジョン鉄の比率を上げた方が良いようだ。
みんなの準備が終わったようなので、茂さんに、「行ってきます」 と挨拶をしてから靴を履いて裏庭に出る。
そして、光学迷彩を掛けて「八坂神社」へ転移した。
「えっ、ええっ。 何処? みんなは?」 佳奈子が慌てている。
「落ちつけ。 光学迷彩で見えてないだけだ。向うの大きい木を一周まわるぞ。 シロに付いて行くんだ」
木を回りながら光学迷彩を解除した。
「わぁ、綺麗! もう京都なんですね」
「そうだ。せっかくだから、お参りして外に出よう」
それから、俺達は東京組とも合流して夜の京都を満喫して、伏見の ダンジョン・イナリ 側の基地に入ったのだった。
ぺしぺし。『さんぽ、おにく、あそぶ、こさめ、いく、おやま』 ――うう。 朝か? 雨が降っているのか。 俺はローブを羽織ると、リビングを確認した。 まだ誰も起きてないようだ。
スッと出口に身体を向けると。 ん、誰か居る。
「散歩か ニャ。 タマも行くニャン」 タマでしたー。
雨が降っているので、ローブを取ってこらせて外に出た。
うわ、暗っ! まあ、じきに明るくなるかな。 ヤカンに道案内を頼み、走って山道を降りて行く。雨は降っているが、シロもヤカンもはしゃぐように駆け回っている。
やっぱり お山は楽しいようだ。 しばらく、お付き合いしましょうかね……。
朝食を済ませ、ダンジョン・イナリ へ突入していく。 組分けは、俺とシロ 佳奈子が5階層から、他の者は8階層からとして、ヤカンとタマに先導を頼んだ。
慶子には東京組の魔法の指導もお願いしている。 さて、ここから行きましょうかね。5階層のボス部屋だ。 もちろん、転移台座に記憶させるためだ。
6階層も順調に進み7階層に入った。ここからはホーンラビットも出るようになるのだが、……何も問題ないようだ。
シロも積極的に ホブゴブリンやホーンラビットに当てて行っているようだが、まったく攻略速度が落ちることがない。
7階層を突破して時計を見ると11時35分。 昼食を取るため、みんなの所へ転移する。 9階層の半ば近くだ。 しばらくみんなの戦い方を後ろで見させてもらった。
佳奈子も魔法を使っての先輩方の戦いを見ながら。
「す、凄いです! 魔法の威力も 皆さんの動きも」
いろいろと刺激を受けているようであった。
10.17 土曜日
10.26満月 .19日ダンジョン




