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2. 青龍

 あと、ガンツな。


 あいつがデレクの町に来たのが、たしか俺が代官になった翌年だったとおもう。


 なんでも王都で入植(にゅうしょく)の希望を出しながら、知り合いの鍛冶屋(かじや)を手伝っていたとかなんとか。


 ガンツが名の通った鍛冶職人だったことから、割と早くに入植の許可が下りたらしい。


 今は近くに住んでいるので、よく一緒に酒を呑んだりもしている。


 「お互い何年経っても変わんねぇーなぁ」


 昨日も呑みながらそんなことを言ってたよ。


 ホントに変わんないよドワーフ。 歳いくつだよ!


 今だに知らないのだ。今さら恐くて聞けないまである。


 鑑定すればすぐにわかるが、友には使いたくないだろ。


 約束だった剣も打ってくれたぞ。


 実に素晴らしい出来だ。


 鑑定すると、


 ”ミスリル超合金(ちょうごうきん)バスターソード:ミスリル複合量(ふくごうりょう)30%:A+:製作者・ガンツ”


 重さといいバランスといい最高の一品だ!


 まあ、ガンツのオーダーメイドだからね、さもありなん。






 そしてアーツ。


 この前、久しぶりに会ったが元気にしていたようだ。


 あれから数回、モンソロのスラムから子供たちを引き受けている。


 モンソロ教会の方も積極的に孤児院(こじいん)収容(しゅうよう)してくれているようだが、どうしてもあぶれる子供は出てくるんだよな。


 そしてこちら、デレクの孤児院(こじいん)では、成人した子たちがどんどん町に出て働いたり冒険者になったりしている。


 孤児院でやってる屋台(やたい)も今では5台を数え、町中やダンジョンへの参道などに出店している。


 ひとつの屋台に子供たち5人と、熊人族のヘルパーさんが一人付いてもらっている感じだな。


 冒険者の数は多いが町の治安が良いせいか、トラブルも少ないようだ。


 それでも、流れ者がはいった時なんかは揉めたりもするのだが……。


 近くには邸 (うち) の(かげ)が一般人に(ふん)して屋台や露店(ろてん)を出しているのでトラブル対策も万全である。






 それから……、そうそうマクベさんな。


 転生直後はさんざんお世話になったモンソロの町の商人である。


 町で店をかまえる(かたわ)ら、行商人としても近くの村をまわっている。


 ダンジョン・サラが稼働(かどう)を開始してからは大忙(おおいそが)しなのだとか。


 このダンジョン・サラのまわりには(すで)に小さな町 (村) ができており賑わっているらしいが、


 モンソロから半日程の距離なので飛地(とびち)のような扱いになっているそうだ。


 なんでも、マクベさんは冒険者ギルドからの要請(ようせい)でミスリル鉱石の専売(せんばい)を任されているらしいのだ。


 うんうん、ガンバさんは(しっか)り約束は守ってくれたようだね。


 (ガンバさんはモンソロの町にある冒険者ギルドのギルドマスターです)






 そして俺のステータスがこちら、



 ゲン・ツーハイム  Lv.37


 年齢     27

 状態    通常

【従魔】   シロ(フェンリル)

 HP   206/207

 MP   315/318

 筋力    153

 防御    142

 魔防    162

 敏捷    131

 器用    114

 知力    194


【特殊スキル】   時空間魔法(U)   身体頑強    状態異常耐性

          ダンジョンマップ

【スキル】     鑑定  (7)    魔法適性(全)  魔力操作(9)

          剣術  (6)   格闘術 (5)  槍術  (6)

【魔法】      風魔法 (8)   氷魔法 (6)  身体強化(7)

          結界魔法(7)   回復魔法(6)  雷魔法 (5)

          聖魔法 (3)

【称号】      転生者、シロの契約者、迷宮管理者、メアリーの家族、

          ドラゴンスレイヤー、英雄、ドラゴンを統べる者、

          虫キラー、伯爵位、亡霊殲滅者、青龍を育てし者、

【加護】      ユカリーナ・サーメクス



 はい、もはや人間のステータスではありません。


 女神さまから(さず)かった加護(かご)影響(えいきょう)と、従魔であるシロからの経験値(けいけんち)もガンガン入ってくるから。


 俺は何もしてないんだけどね、シロさんは手を抜かない主義だし。


 変わったところでは『鑑定』かな。


 鑑定のレベルがあがったお陰で5m以内であれば詳細(しょうさい)を見れるようになった。


 鑑定さんもここまできたよ。初めはさんざんだったけどねぇ。


 それと(せい)魔法が使えるようになったんだ。


 ホントようやくといった感じだよ。


 これがないばかりに、アンデッドやゴースト系が出現する階層が大変だったのだ。


 普通の斬撃(ざんげき)が通用しないヤツもたまに出るんだよなぁ。


 まあ、俺はダンジョンの管理者なので襲われることはないのだけれど……。


 ――なんかムカつくだろ!


 あとは……、


 ――青龍(せいりゅう)を育てし者――


 ああ、これな!


 邸 (いえ) で飼ってるから……。


 たまに町の上空を飛んでるなぁ。 緑のシェンロンみたいなやつ。


 (うろこ)がグリーン (みどり) でも青龍(せいりゅう)と言われるらしいのだ。


 名前は ”アオチャン” ね。


 そんな、まんま(・・・)な名前ってどうなの? とも思ったがメアリーが「これがいい!」というので仕方がない。


 覚えやすいから、まあいいけど。


 『アオ』ではなく『アオチャン』な!


 アオと呼んでも見向きもしないから。






 あれはそう……、今から2年程前だったか。


 朝の散歩を終えて(やしき)に戻ってみると。


 「ゲンパパ、見てー! 拾ってきちゃった!」


 メアリーは直径1mはあろうかという大きなタマゴを頭上に(かか)げていた。


 「メアリー、さすがにそれはダメだよ。親が(おそ)ってきたらどうするんだ? 元の所に戻しておいで」 


 俺の言葉にメアリーは顔をふるふる。タマゴは持ち上げたままだ。


 ――かなり重いと思うのだが。


 詳しく話を聞いてみると、


 この卵はある鉱石群の中に(うず)もれるように置いてあったそうで、もう30日程放置(ほうち)されたままらしいのだ。


 しかしなぁ、う~ん。


 何のタマゴだろう? このデカさだし。


 タマゴが(かえ)って、俺たちをエサだと勘違(かんちが)いして襲ってきたらどうすんのよ。


 うう~~ん。


 メアリーを見ると、目をうるうるさせて『すてちゃうの~?』と(うった)えてくる。


 あぁ――――っ、もう! わ か り ま し た。 


 ――俺は根負(こんま)けしてしまった。






 「タマゴから何が生まれてくるのかわからないけど、(しっか)りと自分で面倒を見るんだぞ」


 「うん、大事に育てるね。ゲンパパありがとー」


 馬屋の隣に新しく小屋を建て、敷き詰めた(わら)の上にタマゴを()えた。


 それからというもの、


 メアリーは散歩に出かけるたび、今度は(あお)鉱石(こうせき)採取(さいしゅ)してくるようになった。


 話によると、タマゴはこの蒼い鉱石と一緒にあったそうなのだ。


 う~ん? 環境(かんきょう)(ととの)えようとしているのかな?


 まあ、害はなさそうだしメアリーも楽しそうだから、このまま好きにさせとくか……。


 俺はやさしく見守っていた。


 ところが、それから40日程たったある日。


 アランさんの要請(ようせい)により、メアリーは王都の魔法学校へ通うこととなった。


 その為、王都にあるアランさんの屋敷に戻ってしまったのだ。


 やれやれ、結局俺かよぉ。


 タマゴのある小屋を見にいくと、例の蒼い鉱石がギッシリと敷き詰められていた。


 よくもまあ、これだけ集めてきたものだ。


 俺はその鉱石を一つ手に取ってみた。


 んんっ、これって見たことあるかも。


 生前だったが、趣味で天然石のブレスレットなどを作っていたことがある。


 いろんな鉱石をネットで買い集めていた時のことを思い出した。


 【ラピスラズリ】 ?


 いや、もっと色が濃いかな……。


 【アズライト】 だ!


 パワーストーンとしても人気が高かったはずだよな。


 少々お高くて、なかなか手が出なかったんだよなぁ。(なつ)かしい。


 確か『(りゅう)が好んで食べていた』なんて伝説もあったような……?


 いやいや、ただの伝説だから。 あちらの世界での。


 「…………」


 いやいやいや。



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挿絵(By みてみん)
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