表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/128

49. ダンジョン対策小隊

 その日の夕刻。


 俺・シロ・健太郎(けんたろう)慶子(けいこ)の4人はダンジョン探索を終え母屋(おもや)に戻ってきた。(めんどくさいので、シロちゃんも一人として表現しています)


 シロに浄化(じょうか)()けてもらい家の中にはいる。


 今日の探索で健太郎はLv.5にあがった。


 つまり、健太郎の京都行が確定しましたー。


 攻略階層(こうりゃくかいそう)も8階層をクリア、9階層に移っている。


 ……もうね、成長速度が尋常(じんじょう)ではないのよ。


 ただただ言えることは、【勇者】ぱねぇ――!


 紗月(さつき)も学校から帰えり、みんなで夕食をとっているときに(しげる)さんが、


 「昼ごろ自衛隊(じえいたい)さんから連絡があってね。明日から()まり込みでダンジョン前に張り付くそうだよ」 


 「そうですか。自衛隊もいよいよ動き出したんですね」


 「この裏の駐車場をいくつか借りたみたいで、着いたら挨拶(あいさつ)しに顔を出すそうだよ」


 なんでも、ダンジョンの監視(かんし)及び調査(ちょうさ)のため、陸上自衛隊の春日駐屯地(かすがちゅうとんち)では1個小隊(しょうたい)30人がダンジョン対策部隊(たいさくぶたい)として割り当てられてるそうだ。そして、明日はそこから10名の隊員がこちらへ派遣(はけん)されてくるそうだ。


 へぇ、信じてくれたんだ。それは良かった。


 荒木さんたち、しっかり話を通してくれたみたいだね。


 上を説得(せっとく)するには判断材料(はんだんざいりょう)が少なくて、結構大変だったとおもう。


 今度あったらお礼を言っておかないと。


 いや……、俺が礼を言うのもおかしな話か。


 ダンジョン入り口 (洞窟) に張ってある結界(けっかい)は、シロに言って早々に解除(かいじょ)しておこう。


 初めてダンジョンにはいって、皆さんどんな顔をすることやら。


 ちょっと楽しみになってきた。






 そして次の日。


 俺たちはいつものように早朝からダンジョンに(もぐ)ってレベリングをおこなっていた。


 「師匠(ししょう)、オレいつになったら魔法が使えるようになるんすかー。早く使ってみたいっす!」


 『ファイアーボール!』 などと(さけ)びながらそれらしいポーズを決めている健太郎。


 「バカも~ん! 止めないか。イメージが固まれば発動することだってあるんだぞ。ダンジョンでやるぶんには まだいい、だが家や外では絶対にやるなよ」


 「バカも~ん! なんて台詞(セリフ)、オレはじめて聞いたっす!」


 「お、おう、昭和だからな」


 「さすが昭和一桁(ひとけた)


 「いやいや、二桁(ふたけた)だからな。銭形じゃあるまいし」


 「じゃなくて、魔法っす!」


 「お、おう、今のところはまだ無理だな。魔力操作(まりょくそうさ)のレベルが2以上、攻撃魔法(こうげきまほう)なら3以上は必要だな。毎晩(まいばん)やっている魔力操作の訓練がんばるんだぞ」


 「そーなんすか、先は長いっすね~」


 「ソ――――ナンス!」


 「はいはい、ポケモン乙」


 「ひどっ! フリまで入れたのに」


 「わかんなくて、スルーされるよかいいっしょ」


 「お前な~、まぁいい。 魔法が使えるのは向う (異世界) の人間だって(わず)かに1%なんだぞ。だからもう少しだなぁ…………」 


 「へいへい、わかってますって。魔力操作の訓練がんばりま~す!」


 「あっ、お、おい……」


 走って逃げていきやがった。――子供かよ、まったく!


 向う (クルーガー大国) で10年も生きていると、あのくらいの年齢の者にギャップを感じることがある。


 まぁ向うでは15歳が成人だからな。17歳で子供を持って必死で働いているやつもザラにいるわけですよ。


 さて、朝の探索はこんなものかな。






 昼から予定している健太郎のレベリングにはシロを同行させた。


 俺は居間(いま)で茂さんとだべりながら、自衛隊が到着(とうちゃく)するのを待っていた。


 ――ピンポーン!


 玄関のチャイムが鳴った。時計を見ると午後1時をすこしまわったぐらいだ。


 茂さんが玄関に出て対応している。


 しばらくすると、隊員2名を連れて茂さんが居間に戻ってきた。


 おお、迷彩服(めいさいふく)だ。88式鉄帽(てつぼう) (ヘルメット) を小脇(こわき)に抱えている。


 うん、『ザ・自衛隊』って感じで、かっこいい!


 「こんにちはー!」


 俺はその場で立ち上がると、隊員に向け軽く挨拶(あいさつ)をする。


 そして全員が居間のテーブル囲み腰を下ろした。


 茂さんは茶器をのせたお盆を引き寄せると、手ずからみんなにお茶を()れている。


 「今日はよくおいでくださいました。粗茶(そちゃ)でございますが……」


 「ありがとうございます。頂戴(ちょうだい)します」


 淹れてもらったお茶をひと口(すす)り、一拍おいてから、隊員の一人が口をひらいた。


 「このたび、ダンジョンの監視(かんし)(およ)調査(ちょうさ)を目的としまして、陸上自衛隊・福岡駐屯地(ちゅうとんち)は第19普通科連隊(ふつうかれんたい)より派遣(はけん)されて参りました。ダンジョン対策小隊(たいさくしょうたい)第1分隊(ぶんたい)、隊長の坂井(さかい)と申します。以後よろしくお願いいたします」


 坂井隊長は若くて元気がいい。年の頃は22~23歳といったところか。


 「同じく、士長(しちょう)の太田です。よろしくお願いします!」 


 太田士長。こちらの青年は20歳ぐらいだろうか。


 お互いに自己紹介(じこしょうかい)を終え、これからのことを話していく。


 ダンジョンの構造(こうぞう)やモンスターの存在(そんざい)。ドロップ品や宝箱について。


 そして何より、スキルの発現やレベルアップが可能(かのう)になることもだ。


 「それは(すご)い!」


 「まるで異世界での話のようですね」 


 二人からはそんな言葉も聞こえてくる。


 やはり若いだけあって、その辺の理解は早そうである。






 ダンジョン関連の話は粗方(あらかた)終わったので、今度は実際にダンジョンを見てもらおうということになった。


 茂さんは神社を離れるわけにはいかないので、俺がダンジョンの入口まで案内することになる。


 靴を()いて玄関を出ると、そこには4名の隊員が並んで待機(たいき)していた。


 坂井さんの部下であろうか、こちらに向けて敬礼(けいれい)している。


 「ゲン様、お供いたします」


 音もたてずに、俺の後ろに(ひか)えてきたのはキロである。


 「「「「えっ!」」」」


 いきなり姿を現したキロに、隊員たちは驚いている。


 ――なに、出てきてんだよ!


 キロにはメアリーたちと共に、秘密基地(ひみつきち)からは出ないよう言っておいたはずなのに。


 シロに掛けてもらったんだろう。犬耳と尻尾は光学迷彩でちゃんと隠れているからいいとして、


 そのメイド服が目立つんだよ!


 白襟(しろえり)付き濃紺(のうこん)のクラシカルメイド服。


 日頃から家 (神社) のお手伝いをしてくれているキロ。服装は基本メイド服である。


 神社には似つかわしくない格好(かっこう)なのだが、『これが良い』と本人が言うのでそうさせている。


 「随伴(ずいはん)の必要はない。下がれ」


 「かしこまりました。いってらっしゃいませ」


 玄関前まで下がり、うやうやしく腰を折るキロ。


 「…………」


 戦闘靴(せんとうぐつ)()き玄関から出てきた坂井さん。


 何か言いたそうに俺と目を合わせてくるが、結局なにも口にすることはなかった。


 そのまま隊員たちと共に、神社の裏にある駐車場(ちゅうしゃじょう)へまわり込んでいく。


 するとそこには、自衛隊が使っているHMV (高機動車(こうきどうしゃ)) が()まっていた。


 (HMV:ハイ・モビリティ・ビークル)


 車のまわりに隊員が(ひか)えているせいか、なかなかの迫力である。


 10人乗りだし、分隊の移動(いどう)にはもってこいだよな。


 確かに、この車だと駐車場を2~3台分借りないと間に合わないだろう。


 坂井さんが指示を出すと、隊員達はHMVから自動小銃(じどうしょうじゅう)を取り出し肩にかける。


 現場へ向かうのは6名で、残りの隊員はHMVにて待機(たいき)するようだ。


 まあ、車の中には銃火器が積んであるのだから当然の措置(そち)といえるだろう。






 「お待たせしました。準備が整いましたので、案内をお願いします」


 「それじゃあ、行きましょうか」


 俺は引率(いんそつ)を開始した。


 とは言ったものの、すぐそこなんだよね。


 再び境内(けいだい)へ戻ってきた俺たちは参道(さんどう)の石階段を下りていく。


 そして、階段の中腹(ちゅうふく)に差し掛かると、手すりを乗り越え右手の雑木林(ぞうきばやし)に足を踏みいれた。


 雑木林にはいった俺たちは、一列になり獣道(けものみち)のような小道に沿()って進んでいった。


 そして小道を進むこと5分、俺たちは現場 (ダンジョン前の穴) に到着した。


 草木が生える土手(どて)にポッカリと(ひら)いたほら穴。


 まあ、開けたのはシロちゃんだったりするのだが、勿論(もちろん)ここでは黙っておく。


 「坂井さん、こちらになります」


 俺は振り返りながら、後からついて来ていた坂井さんに声をかける。


 すると坂井さんは他の隊員に手早く指示を出していく。


 坂井さんと隊員1名を残し、他4名の隊員がその場で散開(さんかい)する。


 散開した隊員は、土手の上や草むらを()き分けながらが周りを調査していく。


 自動小銃を両手に持ち、草むらを進んでいく姿は何とも物々しい。


 「こちら……………………感明(かんめい)おくれ」 


 ヘルメットに付いたインカムマイクで情報のやり取りを行なっている坂井さん。


 交信しているのは先程のHMVに残してきた隊員だろうか。


 ………………


 やがて通信が終わり、周りに散開していた隊員達も集まってきた。


 「では、行きましょうか」 


 隊員2名を入口にの残し、ダンジョンへと続くほら穴に俺たちは突入していった。







9月4日 (金曜日)  

次の満月は9月27日

ダンジョン覚醒まで2日・62日



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
プチ プチ(。・・)σ|ω・`)ノ おっ押すな。押すな~!
小説家になろう 勝手にランキング
シロかわいい! と感じたら押してください。シロが喜びます。U•ɷ•)ฅ
挿絵(By みてみん)
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ