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40. 神さまナイフ

 お祈りした後に鑑定してみると、マリアベルの家族には全員女神さまの加護が(さず)けられていた。


 シロにもちゃんと家族認定されてるようで、まずは一安心。


 魔法属性(まほうぞくせい)まで付いていてちょっとビックリしたけれど、これらも聖獣(せいじゅう)であるシロが判断しているのであれば頷けるよな。(女神さまとどういう取り決めなのかは定かでないけど)


 続いては魔法属性の方だけど……。


 え~と、お父さんの剛志(つよし)さんは……。


 おっ、これは珍しいな、(かみなり)属性がついてるよ。


 この雷属性や氷属性、それにアンデッドに特効(とっこう)がある聖属性はレア属性と呼ばれている。向こうのクルーガー王国にいる貴族だって、ほとんどが 風・火・水・土・回復のどれかだったからね。また、光属性というのがあるけど、こちらは王族限定のようで他では目にしたことがない。


 そして、お母さんの久実(くみ)さんは風属性。妹の(かえで)は土属性。


 それぞれに違う属性(ぞくせい)がついたようだね。家族でパーティーを組んで協力し合えば、ダンジョン探索も楽に進められそうだな。


 ここでも少し時間をいただいて、加護や魔法適性を授かっていることを話していく。


 「チャトやったよ、魔法が使えるんだって!」


 「……にゃ~ぉ」


 チャトは本来念話で会話することが出来るのですが、しばらくは黙っているようです。いろいろめんどくさいので。


 「あなた魔法ですってよ。どうしましょ」


 「そうか魔法か……。都市伝説では30歳まで童貞だと魔法使いになれるというが……。これで私にも打てるのだな。サンダーボルトが、ミノタウロスめ待っていろよ……フフフフフフッ♪」


 「…………」


 みなさ~ん喜んであるところ悪いんですけど、ダンまち(・・・・)のベルくんみたいに、そんな簡単ではありませ~ん。


 魔法に関していえば、(しげる)さんや紗月(さつき)だって地下の練習場で猛特訓(もうとっくん)しているけど、実際のところはちょぼちょぼだしね。


 人間より強力なモンスターを倒すのだ。ある程度使えるようにならないと実戦ではまったく役に立たない。


 それから考えると、すでに治癒魔法(ちゆまほう)をガンガン使いこなしている慶子(けいこ)異常(いじょう)だな。魔法センスの(かたま)りみたいなやつだよ。


 それでもって、魔力操作(まりょくそうさ)がいかに重要になるかをとくとくと説明していき、魔力感知のできた者から魔力操作の訓練を()していった。


 「ええ~、めんどくさ~い!」


 『ローマは一日にして成らず』ですよザーボンさん。(誰だよ!)


 毎晩おこなってもらう、長~い戦いの始まりである。


 まあ、女神さまから授かった加護の力は魔法全般にも影響(えいきょう)(およ)ぼすし、俺たちが付いているのだ。魔法をものにするまでそんなに時間は()からないだろう。


 ただ、簡単に考えてもらっても困るんだな。


 魔法ひとつで、何人もの人間を一瞬で(ほおむ)ることだってできるのだ。


 認識(にんしき)の甘さから、間違って大量殺人(たいりょうさつじん)なんて、ホント洒落(しゃれ)にならないから。






 あとコレね、


 キロ    Lv.19


 年齢    18

 状態    通常

 HP    54/54

 MP    25/25

 筋力    43

 防御    35

 魔防    25

 敏捷    36

 器用    28

 知力    23

【スキル】   短剣術(3) 魔力操作(4) 魔法適性(風)

【魔法】    身体強化(2)

【称号】    盲目の少女、借金奴隷、変えられし者、影の軍団、ゲンの女、

【加護】    ユカリーナ・サーメクス



 食っちゃってんじゃん!


 ああ、まあ、それはお察しだと思うので横に置いといて……。


 注目してほしいのはスキルの欄。そう、見てわかるとおり【魔法適性(風)】を取得しているのだ。


 ――やったね!


 しかし、隣にいた兄のフウガには何も変化がない。


 やはりこの現象は【加護】持ち限定だったか。フウガの持っている【祝福】ではダメだったようだね。


 んっ、なんで兄妹なのに加護と祝福で、授かったものが違うのか?


 それ聞いちゃう……。


 以前はフウガもキロも共に祝福で同じだったんだよね。それがある日をさかいに……ごにょごにょごにょ。


 ということで、今は兄よりも全然強いキロたんなのでした。おわり。






 続いては新メンバーの得物(えもの)選びへと移る。


 まず、剛志さんが選んだのはバスターソード。


 本人(いわ)くソードマスターを目指すそうだ。


 (……ソードマスターってなんだっけ?)


 ゆくゆくは大剣を背中に(かつ)ぎたいのだろうか?


 いや違うな。剣聖(けんせい)になるということかな? 


 ざっくりしていてよくわかりません。なんか雰囲気で言ってるような気もするけど。


 剣聖を自称(じしょう)したいならアーツ先生よりは強くなってもらわないとね。


 アーツ先生より(たた)き込まれし剣技(けんぎ)の数々を、(それがし)(あま)すことなく伝授(でんじゅ)してしんぜよう。


 久実さんは土木スコップを選んだようだ。


 うん、これも良い選択(せんたく)だね。


 三角の持ち手は初心者でも取り扱いが楽だし、ダンジョンでの鉱石採取(こうせきさいしゅ)はもちろん、お花摘みにも便利なアイテムだよね。


 指導のほうは慶子(けいこ)におまかせしよう。


 ……と言うか、先ほどから二人の会話が(はず)んでますけど。


 壮年期(そうねんき)における女性にとって ”アンチエイジング” は共通の話題でもあるらしい。


 その二人の横には尻尾をふりふりシロがくっついている。


 慶子からビーフジャーキーをもらえてシロも上機嫌のようだな。


 妹さんの(かえで)は大型ナイフを指定。


 詳しく話を聞いていくと……。


 ――あのナイフのことでした。


 ダンまちのベルくんが使っているやつね。


 眼帯(がんたい)をはめた鍛冶神(かじしん)が打ったナイフだったよな。ツインテ・ロリ巨乳と一緒に。


 このラノベ脳はお父さんの影響をかなり受けているとみた。


 紗月とも気が合いそうだよな。年齢も一緒みたいだし。


 (…………)


 よし、ベルくんの【神さまナイフ】完コピしてやろう。


 ブレードの素材はミスリル合金を使用したものになるが。


 ヒエログリフもそれらしく刀身に彫っておいてやろうかね。


 古代エジプト文字 (ヒエログリフ) で『腹が減ったら牛丼たべよう!』とでも。(^^♪


 どうせ読めやしないのだ……、雰囲気(ふんいき)だから。雰囲気。


 魔力を通すとヴウォン! と文字が赤く発光するようにもしておくね。


 (どんなに使い続けてもナイフが成長することはありません)


 いかん! カンゾー (ダンジョン) に発注をかけてたら俺も1本欲しくなってきたぞ。


 予備(よび)も含めて3本作らさせることにしよう。うん、そうしよう♪






 得物(えもの)における細かい仕様や要望(ようぼう)については、各自聞き取りをおこないメモをとっていく。


 これ見よがしに偃月刀(えんげっとう)を取り出して、みんなにアピールしていた茂さん。


 しかし、誰も偃月刀を選ぶことはなかった。


 (みんな興味は示していたのだが、長物を振りまわすにはダンジョンの通路は(せま)すぎるのだ)


 「僕が使う偃月刀って時代おくれなのかねぇ……」


 「まあまあまあ」


 「孤高の存在というのも有りだと思いますよ」


 落ち込む茂さんを、俺と剛志さんが(なぐさ)めていたのだが。


 そこへ、


 「ゲンさーん、話を聞いてもらえますか?」


 紗月と楓が一緒に押しかけてきた。


 ――次はなんだぁ?


 「うち、ライトアーマーがほしいです!」と楓。


 (ダンまちのベル君が着ているものを言っています)


 軽鎧 (ライトアーマー) ? 


 ああ~、ナイフに合わせる感じでね。


 二型でいいのかな? 


 赤いラインの入ったヤツが二型だったよね。たしか。


 軽くするために材質はチタンがいいかな。それを白に()って……。


 カンゾー (ダンジョン) のやつ、着色なんかできるんだろうか?


 カラーチタンなら何とかなりそうだけど。


 あれはチタンの表面をバーナーなどで(あぶ)って変色させているのだったか。


 最悪、色塗りはこちらでやるとして…………。






 「ゲンさん、私もお願いしたいことがあります!」


 今度は紗月が横から乗りだしてくる。


 (だ、だから、おめーさんは顔が近いんだってばよ)


 紗月のおでこに指をあて、すこし押しかえす。


 「できる、できないは別として話は聞くけども」


 なになに、ヴァレン何某(なにがし)くんの? ふんふん……。


 (ダンまちのアイズたんが着ているものを言っています)


 対抗してきたなぁ、おい。


 でもあれって、ほとんど(よろい)になってないだろ。


 ふたりして厨二病(ちゅうにびょう)発症中(はっしょうちゅう)である。


 いっそのこと、それ着てビッグサイトを目指してみるのはどーよ?


 すると、それを聞いてた茂さんが、鼻の穴を大きくしてにじり寄ってくるではないか。


 ……こちらも顔が近くて怖いっす。


 と に か く みんなスト――プ! 


 両掌(りょうてのひら)を前に広げ、俺は一旦ストップをかけた。


 「みんなちょっとまって! 今は得物(えもの)が優先だから。(よろい)や防具の相談(そうだん)は夕食後にゆっくり聞かせて欲しいかな」 


 バスターソードと現場スコップ (チタン製) はインベントリーに予備があったのでそれをテーブルに並べる。


 楓には当面ショートソードで戦ってもらうとしよう。


 刃物なので取り扱いには十分気をつけるように(うなが)し、それぞれに得物となる武器を渡していった。


 まあ、使ってはみたけれど、やっぱり合わなかったということもあるし。


 それは今晩にでも聞いてみることにしよう。


 次は革のコンバットブーツを合わせてもらう。


 これは各サイズが俺のインベントリーの中に(そろ)っている。微調整(びちょうせい)用に各種中敷(なかじ)きの用意もある。


 合わせてPUグローブをみんなに配っていく。(ポリウレタングローブ)


 このPUグローブも最近では常用(じょうよう)に成りつつあるなぁ。


 革に比べたら耐久性は落ちるが低階層ならコレで十分なはず。






 では、そろそろダンジョンに行ってみるとしますかね。


 ブーツを()いてもらって裏口より外に出た。


 本条家みんなの得物はインベントリーが使えるマリアベルが預かっている。


 裏口すぐに設置してある転移台座(てんいだいざ)の前にみんなを集める。


 シロもチャトも居るな。


 転移陣を作動させ、俺たちはダンジョン・カンゾーの1階層、階段下にある踊り場に出てきた。


 さーて、レベリングの開始だな。


 ビシバシいきまっせー。


 まずは効率(こうりつ)を考え、初心者を3組に分けて編成(へんせい)する。


 俺・剛志さん・キロ


 シロ・お母さんの久実さん・慶子(けいこ)


 マリアベル・(かえで)・チャト


 メアリー・紗月(さつき)組は基本自由だが、上限は10階層までとした。


 探せば宝箱もまだまだ見つかるだろうし、楽しみながらレベルアップできればそれが一番だからね。


 女性組は1階層から()らしていくらしい。シロが居るから案内も完璧だろう。


 俺たちは2階層からスタート。剛志さんも(ひざ)を気にしなくていいので、すこぶる張り切っている。


 昼休みは特に(もう)けておらず、各自ダンジョン内で適度に休憩(きゅうけい)を取るように言ってある。


 これはダンジョンに早く()れさせるためだな。


 なにぶん今回は一週間の滞在(たいざい)で、あまり時間がないときている。


 ダンジョン探索は夕方までおこない、帰りはダンジョンマップで位置を特定し、みんなを集めて神社に戻っていく。


 さすがに初日は(こた)えたようだ。本条家の人たちは口数も少なくフラフラしている。


 夕食のあとは温泉にはいり早々に休んでもらった。



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挿絵(By みてみん)
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