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31. 実家は東京

 俺はカンゾー (ダンジョン) に指示を出し、神社の真下(ました)に地下秘密基地を建設していた。


 まず、転移スペースを持つ玄関口から幅2.5m・高さ3mの廊下を一本真っすぐに通す。


 その廊下の左側を各個人の部屋に、右側をリビングや食堂といった供用スペースに仕上げていこうとおもう。


 個人部屋の広さは六畳ほど、シャワー・トイレ・クローゼット付で、とりあえず10室で作るようにした。


 部屋の内装を仕上げた後は、入口に木製の扉をつけて、ベッド・机・椅子などといった家具類を大まかに作っていく。


 この基地づくりは向う (クルーガー王国) のダンジョンでも度々やってきている。


 ”ダンジョンが理解しやすいイメージ” というのがどのようものか分かっているので、スムーズに作業を進めることができた。


 あとは……、


 閉鎖空間(へいさくうかん)だと気が滅入(めい)りそうなので、ダミーの窓を壁に2ヶ所ほど設置することにした。


 一方は上の境内(けいだい)を映しだし、もう一方は石階段から望む景色を映すようにする。


 勿論、リアルタイムの映像である。


 希望によって、映し出す方向や場所を変えることも可能だ。


 水と温泉は地下から()み上げているので、お風呂は天然温泉かけ流しの大浴場にした。


 厨房(ちゅうぼう)も大きく作ったし、食堂はみんなでパーティーもできる広さだ。


 ランドリー室には乾燥機能つきの洗濯機を配置する予定にしている。


 そして、みんながゆったりと(くつろ)げる広いリビングルーム。


 んっ、照明 (灯り) や空調 (エアコン) ?


 そういうのは全部カンゾー任せだな。


 食品を置いておく保冷室や勝手に氷が出てくる冷凍ストッカーだってある。


 う――――――ん、快適快適! (まだ住んでいません)


 だけど、いくつか問題もある。


 地下だとスマホの電波が届かないのだ。


 そこで、明日以降になるがレピータ (電波増幅器(でんぱぞうふくき)) の設置を検討(けんとう)している。


 屋外アンテナからケーブルを伸ばしレピータに接続すればどうにかいけるはずだ。


 あと、家電を使うから100Vのコンセントが必要になってくる。


 こちらも今のところは、上の神社から引いてくるしかないだろうね。


 ああ、そうか!


 テレビのアンテナもいるなぁ。パソコンを使用するならWi-Fiルーターの設置もしないと。


 (向こうのクルーガー王国と違って日本はいろいろと面倒だよな~)


 地下秘密基地への出入りは転送台座(てんそうだいざ)を介して行うことになる。


 外に通じる転送台座は、母屋(おもや)の勝手口 (裏口) の側に置かしてもらうことにした。


 母屋の裏側なら垣根(かきね)(おお)われているし、目立たずに行き来することができるだろう。


 ちなみに、その転移台座からはダンジョン・カンゾー各階層(かくかいそう)へ転移することも可能である。


 この転移台座には認識阻害(にんしきそがい)結界(けっかい)を張ってあり、関係者以外は使用できなくしている。






 いよいよ明日から(しげる)さんのダンジョン探索とレベリングがスタートする。


 茂さんはこの神社の宮司(ぐうじ)である。


 いろいろと(いそが)しいとは思うけど、これも神社の為、気合を入れて頑張ってほしい。


 ダンジョン関連も数年後には整備されていき、一般人が探索者として出入りし始めるかもしれない。


 そうなれば、一攫千金(いっかくせんきん)を夢見る者もたくさん出てくるだろう。


 それとは逆に、身の程を知り諦めていく人間もいるだろう。必死にしがみつこうとする人間もいるだろう。


 また、そうした者をカモにする人間も……。


 ダンジョンがあるということは、そこには必ず人が集まってくる。


 その集まってくる人間は(ぜん)の者ばかりではないのだ。


 よからぬことを考える(やから)も、かならず混じってくるだろう。


 そんな輩の矛先(ほこさき)が、いつ、この神社へ向けられるともしれない。


 だから自衛できるだけの力は持っておく必要があるのだ。


 一般人がダンジョンに入るようになったら、神社の境内には防犯(ぼうはん)カメラが必要になってくるだろう。


 場合によっては『影』を常駐(じょうちゅう)させてもいいけど。


 まあ、その時になって考えればいいかな。






 おっ、夕飯ができたようだ。


 居間のテーブルには卵焼き・コロッケ・ウインナー・ナポリタンまである。


 その他にもいろんな料理が並んでいく中で、最後に登場したのが、大皿に沢山(たくさん)並んだ ”おむすび” だった。


 なるほど、お(はし)が使えない者もいるからね。


 ご飯だけを皿に盛られても、『なんじゃ こりゃ?』ってなるよな。


 それに、おむすびは手で食べられる日本のソウルフード。


 みんながおむすびに手をのばして、美味しそうに食べていれば、お米を知らない者でも自然と馴染(なじ)んでいくよね。


 ………………


 夕飯をみんなで頂いたあとは、地下秘密基地の案内かたがた温泉大浴場にてひとっ風呂()びる。


 ~~~ カポ――ン ~~~ 


 入浴後は冷えたビールと扇風機が欲しいところだよなぁ。


 メモして、明日には用意するとしましょう。


 俺は(すず)むため、Tシャツにジャージ姿で表に出てきた。


 シロも一緒についてきて、目の前でブルブルしている。


 ふぅ――、あついあつい!


 サンダル履きでペタペタと参道を歩いていると、誰かが階段に座っているのが見えた。


 んっ、誰だ……?


 あんな所に座っていたら、()餌食(えじき)にされるぞ。


 変な心配をしながら近寄ってみると、茶トラ猫 (チャト) を(ひざ)に抱えたマリアベルであった。


 「隣、良いか?」 


 背中に声を掛けながら、俺はマリアベルの隣りに腰を下ろした。


 「…………」


 「電話はしたのか?」


 「できる訳ないでしょう。死んだ人間なんだから」


 「まあ、そうだよなぁ……。兄弟とかは居ないのか?」


 「居るわよ、妹が一人。えっと5年前になるから……今年17歳ね」


 「その妹さんと連絡はとれないのか?」


 「だからどーやってよ!」


 「い、いや、フェイスブックとかのSNSは何かやってんじゃないかと思ってな」


 「あ、そ、そうね。明日にでも調べてみるわ」 


 俺はマリアベルが()でているチャトに目を移し、


 「なんだ、お前もちゃんと小さくなれるのな」 


 すると、チャトは返事をするように「ウニャン」と鳴いてマリアベルのお腹に頭を(こす)りつけていた。


 「実家は東京だったか?」


 「そう、豊島区(としまく)千早(ちはや)。学校も歩いて行ってたわ」


 「おー、千早かぁ。知ってるぞ! 東長崎駅だったか」


 「え、そうよ。西武池袋線(せいぶいけぶくろせん)のね。でも、なんで知ってるの?」


 「ああ、高校を出たあと東京の専門学校に行っててな。大学に通ってた友達がその辺のアパートに住んでたんだ」


 「じゃあ、転移で連れていってよ。おねがい!」


 「お、おう、連れていってやるぞ。ただ、距離があるから転移ではちょっと無理だな。満月の夜なら行けそうな気がしないでもないが……」


 「……そう、無理なの……」


 「まあ、その、なんだ。俺がちゃんと連れていってやるから。気を落とすな、なっ!」


 「うん、ありがとう」


 そう言ってマリアベルは俺の(ほほ)にそっとキスしてくれた。






 そして翌朝……、いや、まだ夜中だ。


 3時を少し回ったとこだな。


 ――朝ダンジョンである。


 メンバーは俺とシロ、茂さん。そして飛び入り(・・・・)でキロが一緒についてきた。


 なぜ、そうなったかは………… すまん察してくれ。(汗)


 時間もないので、さっそくダンジョン・カンゾーの2階層へ転移した。


 先頭は案内役のシロ、続いて偃月刀(えんげっとう)を両手に構えた茂さんだ。俺とキロは少し離れてついていく。


 前では茂さんがへっぴり腰でスライムやコボルトに対応している。得物 (偃月刀) に振り回されるといった感じだな。


 あまりに(ひど)いようなら、軽い槍でも持たせるかな?


 そんな茂さんを(なが)めながら、こちらはこちらで、カンゾーと打ち合わせをしながら進んでいった。


 宝箱や低階層のドロップ品 についても検討(けんとう)していくつもりだが、最初に(もぐ)るのは自衛隊か機動隊になるだろうから、そこまで急ぐこともないかな。 


 ………………


 そろそろ7時になるか……。初日はこれぐらいにしておこう。


 汗をかいた身体はシロの浄化でスッキリ爽やか。


 朝食を済ませると、茂さんは神職(しんしょく)が着る平服に着替えて、社務所へ移っていった。


 廊下(ろうか)を歩く際、少しよろけていたが大丈夫だろうか?


 レベルがあがってくれば安定するとは思うけど。


 さて、遅くなったけど、散歩に行かないとシロがうるさいからね。


 希望者を(つの)ると、メアリーの手があがった。


 じゃあ、今日は3人で行きますか。


 メアリーにはとりあえず光学迷彩(こうがくめいさい)を掛けてついてきてもらった。そのうち、犬耳と尻尾だけを隠せるように頑張ってみるから、待っててほしい。


 まずは、いつものように牛丼集めからだね。(ぶれません)


 牛丼も12個と大漁(たいりょう)にゲット。しかもスマホ予約なので待ち時間なし!


 だけどメアリー。


 一緒に店内へ入るのはいいけど、(よだれ)をたらすのは勘弁(かんべん)してね。周りには見えてないけど。(笑)


 散歩が終わると、獣人組と軽く朝稽古(あさげいこ)


 場所はもちろん地下訓練所。


 広さはバスケットボールのコート程で、照度は日中ぐらいの明るさに調整してある。


 どぶんと朝風呂につかり汗を流したら、慶子(けいこ)が来るまで母屋の居間(いま)にて待機(たいき)する。


 時計が10時をまわったところで、ようやく慶子が顔を出した。


 まずは金の地金やネックレスといった物の換金(かんきん)しにまわり。


 そのあとは買い物の手伝いをお願いした。


 市内の移動についてはカンゾーが転移で飛ばしてくれるので、とても楽になった。


 飛行場も新幹線の駅も主要な所はだいたい10キロ圏内にあるのでかなり便利だ。


 地図と座標を教えるのに、けっこう骨が折れたが、大切なことなので丁寧(ていねい)におしえた。


 こちら (日本) の場合、ちょっとでも座標にズレがあると車にひかれちゃうからね。


 そうやって地金の換金を終えたあとは、電気店・家具屋・ふとん屋・ホームセンターなどをまわって生活に必要なものを買い(そろ)えていった。







8月7日 (金曜日)  

次の満月は8月28日

ダンジョン覚醒まで30日・90日



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