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12. 転移現場

 夕食のあと(しげる)さんは神社各所の点検に、紗月(さつき)は洗い物をしてお風呂に入るそうだ。


 結構大きな地震だと思ったんだけど、ぜんぜん(あわ)ててないのな。


 たしかに()れている感じはするけど……。慣れるほど地震が起きているのが不安である。


 俺は玄関を出たところでダンボール箱を片づけている。


 居候(いそうろう)だからね、これくらいのお手伝いはどうということはない。


 それが終わると、ついでとばかりに木剣(もくけん)を出して振っている。


 シロはお座りして俺の素振りをじっと見ていた。


 ふぅ――――っ!


 素振りを終えた俺は境内(けいだい)に置いてあるベンチに腰掛け、火照(ほて)った身体をクールダウンさせる。


 昼は暑かったが、この時間になると割とひんやりして涼しいものだ。


 夜空を見上げると、東の空には半分に欠けた月が浮かんでいる。


 俺は久しぶりに日本の月を(なが)めていた。


 シロを見やると、月の光を受けて薄白(うすじろ)く光っているように見える。


 魔力かな? 薄暗いところにいるからだろうか……。


 さっきニュースでも見たが、本当に地震が多いんだな。


 ほとんどが直下型らしいけど、それって怖いよな。


 いきなりドーン! とくるのが直下型だから。


 緊急地震速報きんきゅうじしんそくほうが間に合わない場合もあるそうだ。


 緊急地震速報は最大震度(しんど)が5弱以上と推定した際。強い揺れ (震度4以上) が予測される地域に出されるものらしい。


 まあ、耐震強度(たいしんきょうど)が上がっている現代の建物なら、あの程度の地震ではビクともしないだろうが。


 今以上に規模が大きくなってしまうと、この先どうなってしまうのやら……。


 おっ、もう9時をまわってるのか。家に入ろう。


 明日はパソコンでもいじってみるかな。






 そして翌朝。


 シロと一緒に散歩へ出かけ、帰りに吉牛とスキ家に寄って牛丼10個ずつをゲットしてきた。


 えっ、なに? 2個足りない!? 


 さぁ~知らない子ですねぇ。


 朝食もしっかりと頂いた後、パソコンを箱から取りだす。


 電源コードをつないで、スタートボタンをポチっとな!


 パソコンの初期設定をおこなっていく。


 続いてWi-Fiの設定をしたあとWebブラウザーを立ち上げる。あとはメールの設定をして……と。


 はぁ~、便利なWi-Fiがあって本当によかった。 茂さんに感謝だな。


 ……よし出来た!


 検索(けんさく)エンジンはグルグールが標準なのか……、ヤッホーもお気に入りに入れおこう。


 まずは ”なろう” を検索……と。


 「…………?」


 いやいやいや、テストだからね、テスト。


 カクコムも、アリファポリスも、テラーノベルもOK!






 パソコンが使えっるようになった俺は、昼過ぎまでマウスをポチポチ遊んでいた。


 い、いや、情報収集だよ。いろいろ情報収集をしていたんだ。


 ラノベをだらだらと読んでいたわけではない。


 しかし考えたら、異世界に転生したこの10年というもの……。


 魔法のイメージ作りに、こちらのラノベ知識(・・・・・)が大きく影響(えいきょう)を与えていたことは(まぎ)れもない事実なのだよ。


 であるからして、オレ的にいえばラノベを読む行為(・・・・・・・・)はイメージを構築するための栄養補給(えいようほきゅう)といったところなわけさ。――ふんす!


 (俺はいったい誰に言い訳をしているのだろう)


 ………………


 おっと、もう1時すぎたか。


 茂さんは近所の寄り合いとかで昼前から出かけている。


 しかしなぁ~、俺って赤の他人だぞ。(この場合の「赤」は明白という意味です)


 見ためだって外国人だぞ。いいのかよこんなんで。


 賽銭泥棒(さいせんどろぼう)しちゃうぞ!


 鍵まで預けていってからに……。まったく危機管理(ききかんり)がなってない。


 (…………)


 さて、ほか弁でも買いに行こうかな。


 どこが近いかな~、グルグールマップで調べてみよっ。


 う~ん、マツコ屋があるなぁ。あとは裏のコンビニが近いか……。


 よし、マツコ屋に決定!


 居間の(たたみ)の上でゴロンと寝転んでいるシロに、


 「シロ~。弁当買ってくるから留守番(るすばん)頼むな~」


 するとシロは、ゴロンしたまま尻尾だけをパタパタしている。


 わかってはいるようだな。






 マツコ屋では牛焼ビビン丼を2つ、持ち帰りで注文した。


 甘辛いタレが効いた牛肉にキムチと半熟玉子なんて、無敵かよ!


 もう、匂いだけでたまらないので急いで帰路(きろ)につく。


 ドラッグストアを横目に通り過ぎると参道(さんどう)の石階段が見えてきた。


 細くて長い石階段は上まで50段ほど。


 左側に手すりは付いているもののお年寄りにはきつそうだ。


 階段を上っている途中、横に広がる雑木林(ぞうきばやし)に目を向ける。


 (どうしてこの場所だったのだろう?)


 3日前のことを思い出しながら、ふと考えてみる。


 生前に住んでいた家の近くではあるが、ここの神社には一度も来たことがない。


 だいたい ”トラベル!” 自体が、自分が行った場所にしか転移(てんい)できないはずなのだ。


 トラベル! の誤動作ではないとするならば……、


 ――飛ばされたのか? 何のために?


 ――(みちび)かれた? 誰に?


 そんなことができる者といえば、俺が知るかぎり……。


 (女神さまぐらいだよなぁ)


 神社まで走って帰った俺は、牛焼ビビン丼をシロと一緒に堪能(たんのう)した。


 ………………


 食後はまったりしながら、再びパソコンをポチポチ。


 『あいつら、ちゃんとやってるかな~』


 領地で待っているみんなのことを思い浮かべる。


 『でも今回は不可抗力だから仕方ないよね』


 たいして気にも留めていなかった。


 というのも、俺が無断で居なくなることはちょくちょくあることで、長く(やしき)を空けることもざらにあったからだ。


 しばらくすると、茂さんが家に帰ってきた。


 俺はパソコンを(たた)んでテーブルの隅にやると、


 「ちょっと、そこまで出てきますね」


 それだけ言うと、俺はシロを連れて表に出た。


 参道の石階段を中腹(ちゅうふく)まで下り、そこから手すりを乗り越えて雑木林(ぞうきばやし)へ入った。


 (やぶ)をかき分けて進むこと5分、俺とシロが転移してきた場所に到着した。






 さて警察じゃないけど ”現場100(ぺん)” 。しっかりと調べていきますかねぇ。


 「シロも、何か見つけたら教えてくれよな」


 そう言いながら俺は周りをつぶさに観察していく。


 時折、イヲンで買ったビーフジャーキーを取り出し、シロと(くわ)えながらまわっていく。


 観察をはじめて20分程過ぎただろうか、シロが(やぶ)の中から顔を出してじっと俺を見てくる。


 んっ何だ? ジャーキーが欲しいのか?


 シロにジャーキーを与え、よしよしと頭を()でる。


 『おいしい、いわ、おにく、あっち、たのしい、きて』


 どうやら何か見つけてきたようだ。


 俺はインベントリーからショートソードを取りだすと、藪を切り払いながらシロの後を追いかけた。


 しばらく進んでいくと藪を抜け、すこし(ひら)けた場所に出てきた。


 (なんだ此処(ここ)は?)


 雑木林の中にぽっかりできた不思議な場所。


 30m程の円形空間である。


 その中央には岩の(かたまり)……、いや(とう)が立っているのが見える。


 切り出した岩を積み重ねたような塔だ。


 高さ3m程はあろうか、どこかモニュメントのようにも見える。


 シロは塔の向う側に回りこむと、こちらを向いてブンブン尻尾を振っている。


 おっ、シロが喜んでいる。向う側に何かあるのかな?


 ワクワクしながら塔をまわってシロの(となり)に立つ。


 岩の塔を下から(なが)めていくと。……これって(ほこら)だよな。


 そう、この大きな岩の塔は祠だったのだ。


 しかし、祠の石扉(いしど)は開かれており、中には何も入ってない。空っぽだ。


 「…………?」


 隣りを見ると、シロは相変わらず尻尾を振っている。


 「シロ~。何をそんなに(よろこ)んでいるんだ?」


 『あえる、ここ、しんき、うれしい、おく、めがみ』


 ええっ!?


 よくよく聞いてみると、


 この塔の周りには神気(しんき)()ちているそうだ。


 そこで、祠の中に女神さまの神像(しんぞう)を置いてほしいと言っているみたいだが……。


 ――そういうことか!


 確かに女神像ならある。ここに持っている。


 俺が丹精(たんせい)込めて作りあげた数々の力作が。


 このぐらいの祠であれば、フィギュアサイズのコレなんか良いんじゃないかな。


 (断じて……、趣味でフィギュアを作っていた訳ではないからね!)



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挿絵(By みてみん)
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