120. 日本刀
[p.s 今回はご褒美としてプレゼントを入れておきました]
……やった! 女神さまからのご褒美♪
インベントリーの項目欄には、
【命のビール券×10枚】
と表示してある。 んっ。なに?
命のビール券……。 じゃねーなー。
”いのちのびーる券” だ! 俺はさっそく、そのビール券を取り出し確認してみた。
表は日本のビール券に似せて作ってある。 そして、裏には注意事項が書かれているようだ。
※「命のビール券×10枚」(譲渡可)
・1枚で10年寿命の基準値が延びます。
・1名につき2枚まで使用することが出来ます。
・本券のご使用は、必ず「創世神教会」をご使用ください。
注意事項:本券では寿命の基準値は延ばす事が出来ますが。1券につき、10年の生存を保証をするものではございません。病気やケガ、不慮の事故等で短くなる場合もございます。
ハハッ、ハハハハハッ! す、凄い。 凄いよ!
これは俺にとっては、正に ”最高のギフト券” だよなー。
俺が普通の人間より、どれ程長く生きられるかは未知数で分からないが。
まあ、思っているよりは、ずっと長いのだろう。
それを考えるとな……。 ちっ、ちきしょー! こんな券で泣かせるなよぉー。
女神さま、ホントにありがとう……。
▽
―――2年後。
「おとーさん! 早く早く。 シロさん待ってるよー」
「おー、サキか。 もうすぐ引継ぎが終わるから、待っててもらってくれ」
「はーい!」
今、呼びに来たのが、娘になってくれたサキだ。
特別養子縁組制度にて、養女として迎え入れたのだ。
この制度の特徴として、前の親との縁はスッパリと切れてしまう。
だからサキは、完全に家の娘になったのである。
今は学校に通いながら、家事や神社の仕事もよく手伝ってくれている。
とても優しい子だ。
今日は、紗月の結婚式に出席する為異世界へ渡る日である。
私は、この日を以前から心待ちにしていた。
すでに此方では披露宴は済ましているのであるが……。
紗月の綿帽子を被った花嫁衣装……。
良かった。 泣けてしまった。 ぼろぼろで、しまいには怒られてしまったが。
それは仕方がないよな。
そして、結納品代わりにと頂いたのが、一振りの刀と彼方より連れて来たという奴隷が男女3名。
おいおい。 と、断ろうとしたのだが、
「これからは絶対必要になりますし。力仕事などでも活躍してくれますから」 と、半ば強引に押しつけられてしまった。
初めは奴隷という事で抵抗もあったのだが。
今は、気の合う仲間のような感じで、割り切って使うようにしている。
また、日本刀を付けて来るところがズルいよ。
こちらが好きだと知っているのだからな。
刀は新々刀で波紋は直刃。
二尺二寸七分で。 銘には、
「肥前国近江守忠吉」 とある。
これまた渋いところを~。
この直刃が良い。 まあ、一般受けが良いのが、”のたれ刃” や ”丁子刃” であろうが。
「日本刀は、直刃で始まり。直刃に終る」 と言うぐらい直刃も奥が深いのだ。
ゲンさんも分かっているよなぁ……。
そこで、素朴な疑問を彼に投げかけてみた。
「好きなら、ダンジョンでも使えば良いのに」 と……。 すると、
「曲がりますから」 と、彼の答えは簡素であった。
まず、戦いに使用した刀は鞘に収まらないと言う事だ。
インベントリーやマジックバッグにしまえばいいが。 それも、どうなのだろうか……。
そして、良い刀なら刀掛けに置いておけば、1日程で曲がりは戻る。
しかし、繰り返すと弱くなるし折れたりする。
……「要は実用的ではない」 と言われてしまった。
さらに、言うと。
研ぎに出すなら、専門の研師に出す必要が有るし。 期間も一月は掛かるという事であった。
因みに、中砥ぎが一寸(3㎝)で1万前後だそうな。
一度、砥に出せば20万以上かかることになる。
これは、仕上げるまでに様々な工程がいるわけで。
あの顔が映るぐらい磨き上げるには、箸ぐらいの砥石を何本も変えながら、少しずつ磨き上げていくそうだ。
想像して考えるだけで、気が遠くなりそうであった。
正に研師職人の技なのである。
これを考えるなら、「使えない」 という答えになるよなー。 確かに。
結婚式は5日後なのだが、準備やパーティーでの立ち回りと、いろいろ有るみたいなのだ。
今日、彼方に渡るメンバーだが、茂 サキ 茉莉香さん 健太郎くん 慶子さんの5人だね。
ゲンさんは今回来てないようだ。 いろいろ準備に忙しいのだろう。
しかし、シロさんだけで転移魔法を使えるようになったんだね。
まあ、なんといっても ”フェンリル” だからねぇ。
今回は10日程あちらに滞在する予定にしている。
実は今回が初めてなんだよね。 異世界に渡るのは。
……もうね、内心ドッキドキですよ、これは。
私も一応男なもので。 いや~ロマン、ロマンですよ。
紗月は、結構前から彼方に行っており、いろいろと準備をしているようだね。
マリアベルさん、メアリーさん等、王族二人と肩を並べてというのも、何かと大変なんだとか。
それから楓さんは、どうやら正式にダリルバート君の婚約者になったようだね。
そして、親御さんである本条剛志さん、久実さんもクルーガー王国の王都に移り住むようにしたようだね。
それに伴い、王子との結婚ということもあり、いろいろ体裁を整える必要があるらしいのだ。
まあ、具体的に言うと、貴族にさせられてしまうようだ。
法衣貴族の男爵や子爵ならば、国王の裁量で自由にできるみたいだ。