119. 富士命(ふじのみこと)
今日も早朝からシロに起こされた。
シロとヤカンを連れて、散歩で稲荷山を一周回ってくる。
そして俺は朝食を取ったあと、リビングにてコーヒーを飲みながら、ゆっくりとテレビを見ていた。
すると、地元テレビ局のモーニングショーで、ここ稲荷山のダンジョンの事が話題になっていた。
まあ、内容的には ”ダンジョンの謎に迫る!” とか、そんな感じであったが。
聞き捨てならないことが一つあった。
それはここの名称である。
……へっ、なに! その ”オオイワダンジョン” って。
全然良くない。可愛くない!
これは、いけない! 変な名称が定着する前に何とかしなくては。
俺は変身サングラスを掛けると、ダンジョン・イナリの表に出た。
確かに、大岩大神の御神体が隣にあるので、分らなくもないが気に喰わない!
そこで俺は実力行使にでた。
ダンジョン前広場の入口に大鳥居を3基設置した。
梁の真ん中には額と共に、「稲荷迷宮」 と縦字にて彫り込んだ。
次に、2mの石の台座を2基用意して、その台座の上にはヤカンをモデルにしたクリスタル製の像を左右に鎮座させたった。
さらに目立つ所に180㎝程の石碑をおったて、「ダンジョン・イナリへようこそ!」 と赤字で彫り込んでやった。
……因みに、これらを移動やイタズラしようとする輩には、その場でパラライズが作動するようにもしておいた。
……フフフッ♪ これで良し!
この一瞬の出来事を目の当たりにした現場の記者たちは、 これぞ ”神の御業” と、たちまち大騒ぎ!
これにより、ここのダンジョンは 「稲荷迷宮」 「ダンジョン・イナリ」 と呼ばれ、親しまれるようになっていくのである。
そして後日。 この事を全国版のニュースで知ったマリアベルから、盛大にツッコミを入れられる事にあいなったわけだ。(汗)
あれから、”東京ダンジョン” は直ぐに音を上げる事となった。
現場の富士神社に行ってみたが、枯れた巨大樹は無くなっていた。
そしてダンジョン前広場。 さらに1階層へ続く、下り階段は既に設置されていた。
富士神社の社殿はそのまま残っており、 社殿へ上がる階段の右側にダンジョンへ下りる階段が出来上がっている。
どうもこの神社の境内全体がダンジョン広場になっているようである。
奥の方に有った駐車場も、今は奇麗さっぱり更地になっていた。
ダンジョンの ”使用者権限” の取得も、至ってスムーズに行うことができ、何の問題もなかった。
実際、魔力を使い過ぎてへろへろ状態であったらしい。
今は、”ダンジョン・イナリ” ともリンクを組んで、不足分の魔力を補ってもらっている状況なのだ。
まあ、東京がテリトリーになっているので、すぐ魔力も回復していくだろうとイナリは話していたがな。
俺はシロとヤカンを連れ、ダンジョンの1階層に下りて来た。
(お~い。聞こえるか?)
[ひぇ~。わっちが悪かったのじゃー。 チョットした茶目っ気だったのじゃ。これ以上魔素を吸うのは、許してたもれなのじゃ~]
……まさかの、”のじゃロリ・ダンジョン” ?
微妙に違う感があるが。 今は、まあいい。
(まあ、これからは無謀な事をしないと約束するなら、今回は大目に見よう)
[まことかや。 ふぃ~、助かったのじゃ]
(それとな、このダンジョンは、これより ”富士命“ な。登録しておくように)
[あい。富士命じゃな。 良い響きなのじゃ]
それから俺は富士命といろいろ打ち合わせをしていくのであった。
まずは、ダンジョンの受け入れを2年遅らせ、十分な魔素の蓄積をさせる。
それと共に、ダンジョンに対する悪感情を緩和させる狙いもある。
「喉元過ぎれば熱さを忘れる」である。
まあ、政府が都市圏の復興を行ない。
ダンジョンの扱いを決めていくのに、少なくてもそれ位は掛かると思うので、実質的にはそんなに変わらないだろう。
そして、俺達は京都の秘密基地に帰ってきた。
その時である。
{新しいメールが届きました。インベントリーを開いて確認かくにんしてください}
と、脳内に響いた。 おおっ、神様メールだ。 久しぶりだなー。
インベントリーのメニューを開いて、【神様メール(着信のみ)】 を脳内でタップして、中身を確認する。
”件名:ご苦労様でした”
[ユカリーナです。この度はダンジョン復活に際しての様々な対応、素晴らしい采配をして頂き、大変感謝しております。 今回、ダンジョンが引き起こした災害に於いて。被害、損害共に小さく抑えられたのは、貴方の尽力によるものです。 本当に、ありがとうございました。
なお、今まで行っておりました時間停止の処置は、あと10日ほどで解除いたしますので、ご注意ください。 また、サーメクスとアースにおける時間軸のズレに関しては、修正を行ない 合わせる事が出来ました。 ですが、惑星の規模や自転周期などが違っている為、全く同じには出来ませんでした。それでも、人間が生活する上ではそこまでの支障は出ないものと思われます。 こちらからは以上です]
[p.s 今回のご褒美としてプレゼントを入れておきました]
11.10 火曜日
11.24 満月