118. OK!
俺はヤカンと共に、東口5差路をめざして移動を開始した。
そして、東栄会本町通りをゆっくり進んでいると、何処からともなくシロが帰ってきた。
「おう、シロ。 お帰り。 巨大樹から魔力は確り吸い取ったかー」
シロはお座りして、コクコク頷いている。可愛い。
俺はシロの頭を撫でながら、
「そうかー。よくやった! えらいぞー」 と誉めそやす。 そして、
「よーし。 次は親玉の討伐だな」 と俺が言うと、
……あれっ、どうした?
シロは背中のリュックを下ろすと。 バッグに顔を突っ込んで、何やらゴソゴソやり始めた。
それを黙って見守っていると、シロはバッグの中から、大きな魔石を一つ取り出してきた。
俺はその魔石を手に取り鑑定!
……?! ええっ。 マジで。
ダンジョン・中層域のボスである ”リッチ” の魔石であった。
それで、シロに話を聞いてみると。
『巨大樹を枯らし、周りの者にも気を配ってやってくれ』 と、俺の出した指示のもと。
巨大樹から魔素を吸い出した後は、方々を巡り、ケガ人の治療のほか。
ウォーターガンや聖水を配っていたそうだ。
そして、うちのVチームの様子を見に、サンシャインシティまで行ってみたが特に問題はない。
踵を返し、次に行こうとしたところで、上から禍々しいオーラが放たれているのを感じとった。
何だろう? と思い、ビルの上まで登って様子を伺ってみた……。
すると、さも満足そうに、下の町での戦いを見入る ”リッチ” の姿がそこにあったという。
そして、夢中で観戦している ”リッチ” にそっと近づき、背中からポイっと殺ってしまったらしいのだ。
……最後のラスボス的な存在を、 「何か変なの居たんで殺っときました~」 みたいな……。
まっ、いっか!
そりゃあ、坂井隊長あたりが行けば、雌雄を決する ”ラストバトル” のようになったかもしれないが。
俺が行っても、プチッで終わっていただろうし、”ポイっ” が ”プチッ” に変わるだけである。
……まあ、余計な手間暇が掛からなかったと思えば、それはそれで OK! OK! なのである。
そうして俺は、シロとヤカンに、
「今回も、良くやってくれた!」 とねぎらいの言葉をかけ、盛大にモフリ倒したのであった。
午後8時。 サンシャインビルの屋上。
一応、確認のつもりでリッチの居た場所まで連れて来てもらったのだが。
暗いし、寒いし、 すぐ下りてきましたわー。
そして、シロとヤカンを従えサンシャインシティから、池袋駅の間を疾走しながら様子を見ていく。
たまに、エンカウントするゾンビを片付けながら、見落としがないように、小さな路地も隈なく回って池袋駅に向かった。
駅前に着くと、多くの人々が駅の構内に避難しているようだ。
俺が今まわった感じだと、ほぼ大丈夫だと思うのだが。 ここからは自衛隊さんの仕事だろう。
俺は変身サングラスを付けたまま、予め申し合わせておいた集合場所に向かった。
ここは、池袋駅から程近いハレザ池袋の前に有る、中池袋公園。
アニ○イトカフェがある公園だ。
さすがに、今日は誰も居ないだろうと思っていたが。
なかなかどうして、若者を中心にあっちこっち固まって岩に腰掛けている。
なかなかのツワモノ達である。 ……いや、単に、怖いもの知らずなんだろうな。
え~と。 おう、いたいた。
「みんな、お疲れ! モンスターは、もうほとんど居なかったよ」
「ゲンさまー。おつあり。 じわるゾンビも秒でやっつけましたー」
「お、おう。 よく頑張ったな。 みんなもケガは無かったか?」
「お師匠さま。 ケガするような相手ではありませんでした。マリさんのお陰で、スコスコと。ちょっと物足りないくらいです」
「そ、そうか?」
いやいや、中層のモンスターを舐めちゃいけません。 今回は本当にエンチャントのお陰だからねー。
そして、「「「んっ」」」 と例の3人。
……あ~、はいはい! ご褒美ですねー。
特盛牛丼弁当 徳用ピーナッツチョコ ちゅーる4本ね。
「あ~。ゲンさま。 わたしを渋谷に連れてってくれるんですよね~」
あ~。そんな上目遣いしなくても、っていうか!
それ、 ”だっちゅーの” になってるから~。
……す、凄い破壊力。 ばっ、ばけものか!
「はーい。私も行くからー ねっ」
紗月もマネしないでいいから、アイズたんの鎧で。
可愛くもあるが……。
「私はー。 そうね、ダンジョン・スチールでいいわ。さすがにミスリルは言い過ぎだしね」
むむ、慶子まで。 まっ、そのくらいなら……。
ああっ、もしや防衛庁との取引か~?
「……ゲンパパ。わたしボールが欲しい」 と、メアリー。
ん、 ボール?
……もしかして、昨日、シロ達が遊んでいた黄色いテニスボールの事か~?
どうも、そうらしい。
昨日、ウズウズしていたらしいのだ。
買う。 いっぱい買う。 ダースで買うよ~!
では豊洲。 そして、京都に帰ろうと声を掛けたところ。
「ねえ、私たちは こっちの家に帰ってるわよ。どうせ、また来るんでしょ東京」
「おお。了解! しばらくは、行ったり来たりだな。何か有ったら電話かメ―ルをくれ」
「うん。ありがと。旦那さま」
そして、俺達は剛志さん一家 マリアベル ダリルバートと別れ、豊洲へ転移して戻ってきた。
「そうか……。今日は泊っていかないのかー」
「こいつら明日も学校なので。俺はまた、明日でも顔出しますから」 と、吾郎さんに別れを告げた。
俺達は京都基地を経由して、福岡の老松神社に帰るのであった。
11.09 月曜日
11.24 満月