116. 池袋へ
時計は午後3時を回ったところだ。
俺達は急ピッチで出発準備を整えている。
すると、スマホから着信を知らせるメロディーが流れてきた。
俺は胸ポケットに入れていたスマホを取り出し、ディスプレイを確認すると。
おっ、坂井隊長からか。 急いで通話に切り替えると、
「ゲン師匠。坂井です。様々な ダンジョン・モンスター に備えて、わたくし達の小隊もこちらの作戦に参加するべく、昨日から待機しておりました。 そして、これより池袋駅の攻防戦に参加するため現地に入っております。後は作戦に入りますので、個別の連絡は出来ませんが、ご武運をお祈り致しております」
と、一方的に言うだけ言って切ってしまった。
多分、かなり無理して電話する時間を作ったのだろう。
そうか、坂井隊長も参加するのか。 作戦中に会えればいいのだがな……。
通話を終了しながら 俺は、
「しっかりやれ。死ぬなよ」 と、ひとり呟いていた。
すると、立て続けに着信が入って来る。 今度は茂さんだ。
「はい、ゲンです。どうしました?」 と応対すると、
「やあ、ゲンさんかい。茂だが。 人手がいるんだろ? こっちは4人いつでも出られるよう鎧も着込んで待機しているよ。指示が有れば、すぐ京都基地に移動するから声かけてよね」
との事である。
どうやら、今日が ”ヤマ場” だと分かっている様子だ。
準備しているのなら、是非とも来て頂く事にしよう。
俺はシロに、京都まで転移して戻れるか? 聞いてみたのだが。
シロ曰く、ぜんぜん余裕で問題ないそうだ。
まあ昨日より、散々巨大樹から魔力を吸いまくっていたからなぁ。
俺はすぐに茂さんへ連絡し、京都基地へ ”トラベル!” を使い転移した。
……すると、そこに待っていたのは5人。 茂さん 高校生3人 そして、
「お師匠さま。お久しぶりです。 わたしも参ります」 と、畏まって言って来たのは 内閣府所属の佳奈子であった。
俺は挨拶もそこそこに、みんなを連れて豊洲に転移する事にした。
今は1分、1秒でも無駄に出来ないのだ。
そして、今回もチーム編成を行ない、スケルトン共を迎え撃つ事にした。
ただ、俺 シロ ヤカンは独立して、あちこち支援して回るのでチーム編成からは除外している。
・Aチーム
1.茂 メアリー 佳奈子 吾郎 パンチ ジョン
2.マリアベル チャト キロ 紗月 茉莉香
・Vチーム
1.タマ 健太郎 サキ
2.慶子 剛志 久実 楓 ダリルバート
今回のスケルトン討伐戦は、以上のチーム編成で臨むことになった。
時刻はもうすぐ午後4時。
敵の数からいっても夜に突入する事になるだろう。
あまり散開せずにチーム、あるいは班で連携を取りながら戦っていくように、確りと通達する。
そして吾郎さんがコピーしてくれた、池袋周辺の拡大地図をみんなに配り、各自進行ルートの確認などをしてブリーフィングを終了した。
「スマホの充電量も常に気を配ってほしい」 と言い添えて、充電していたスマホを手に取りながら表へ出て行く。
そして、茉莉香から聖魔法の属性エンチャント(効果は5時間程)を主力の武器に施してもらう。
アンデッドに対して、この効果は絶大である。
おそらく、ゾンビやスケルトンにおいては触れただけで崩れ去っていくだろう。
また、聖魔法の ”ホーリーライズ” を使えば目の前のアンデッド共を一気に昇天させることも可能である。
家の主要メンバーには聖魔法の使い手が多く。今回の戦いにおいては、意外と楽な展開になるのではないだろうか。
それで、聖魔法の一番の使い手は誰か? 言わなくともお分かりだろう、従魔のシロである。
聖魔法を発動していなくとも、触れるだけでアンデッドは消し飛んでいくし、
ホーリーライズなどを使おうものなら、半径100m内にいるアンデッドは全て消滅してしまうだろうな。
それも一瞬で!
まあ、だてに ”聖獣” ではないと言う事だな。
本当に頼もしい限りだ。
フウガの続報によれば、新橋、銀座周辺でも、ゾンビが散発的に出現している。
こちらは自衛隊に任せても大丈夫だろう。
……たぶん。
俺達は不忍通りの護国寺西交差点の付近に転移してきた。
なぜ、ここなのか? 以前、散歩の時だったと思うが、駒込に向かう際、この道を通っていたのだ。
そうして、地図と剛志さん等東京勢の案内の下、各自ルートの確認をおこない行動を開始した。
右手に見えている多くの墓が護国寺周辺の墓地にあたるそうだ。
このまま真っすぐに進んで行けば、雑司ヶ谷霊園サイドを通り、池袋駅前の巨大樹が生えている所まで出られいうことことだ。
俺達は首都高の下を池袋駅に向かい歩を進めていった。
俺とシロ ヤカンは途中でみんなと別れ、護国寺裏の霊園や、雑司ヶ谷霊園の中を通り浄化を掛けて回っている。
……とは言え、シロは広範囲の浄化が出来る為、さほど手間取ることもない。
ササッと終わらせていき、雑司が谷交番までやってきた。
……交番には誰も居なかった。
まあ、あまり深く考えずに先に進んでいく。
都電荒川線を越え東通りに入った。
真っすぐ行けば南池袋に出るはずだが、すんなり通してはくれないようである。
前の道はスケルトンで溢れかえっていた。 いよいよ戦闘開始である。
11.09 月曜日
11.24 満月