表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/128

8. 光学迷彩

 久々の家カレーは、やはり(うま)かった~。


 「いっぱい作ったので、明日の朝もカレーですよ!」


 なにそれ最高じゃん!


 2日目のカレーがまた旨いんだよね。ジャガイモとか玉ねぎが溶けちゃってるし。


 ”こくまろ” のルーは絶対に持って帰るぞ~。近いうちに大人買いしよう。


 (まだ、帰れるとは決まってません!)


 晩ご飯のあとは、約束どおりインベントリーの中のものをいろいろ見せてあげた。


 紗月(さつき)ちゃんはキャーキャー言いながら見たり触ったりで、もう大変!


 革鎧(かわよろい)も一発装着(そうちゃく)してみせると、


 「キャー。かっこいい!」


 いつもは鎧下(よろいした)と革パンツの上に装着するのだが、今はお風呂あがりのジャージ姿なので、若干(じゃっかん)()まらないよね。


 ナイフやバスターソードは、さすがに恐る恐るといった感じで触っていた。


 (しげる)さんはクナイを手にとり、じっくりと見つめている。


 「異世界から来たと言われても、未だに信じられないけど……。実際にこういう物を見せられると実感が()くよ。だってコレは普通のステンレスや(はがね)とはまったく別物だよね」 


 茂さんは刀剣類に興味があるのかな?


 「そのクナイには少量ですがミスリルが混ぜてあります」


 「ミスリル!? そうかこれが……」


 食後のデザートにって、プリンやショートケーキをポイポイ出していたら、かなり驚かれた。


 インベントリー内にはダンジョン・サラのおかげで、たくさんのスイーツが納められているからね。(ほぼ無尽蔵)


 「インベントリーって時間停止なんですねー。キャー! 凄すぎて寝れません!」


 いや、そこはちゃんと寝ようよ。 明日は学校があるんだよね。


 ………………


 しばらくして茂さんが口をひらいた。


 「それで、ゲンさんはこれからどうするんだい。(うち)ならいつまでも居てくれても構わないからね」


 「ありがとうございます。 そうですね、俺の目的は向うの世界に帰ることです。こちらは馴染(なじ)みのある世界ではありますが、俺やシロが居るところではありませんので……。行くあてもないので、今しばらくはこちらにおいて頂けると助かります。ですがタダはいけません。ご厄介(やっかい)になる以上、お米だけでも用意させてください。あと俺に出来ることがあれば遠慮なく(おっしゃって)ってください。こう見えて力仕事には自信がありますから」


 俺がそう()めくくると、茂さんはどこかほっとしたような表情を浮かべ、俺たちを(こころよ)く受け入れてくれた。






 ぺしぺし! ぺしぺし!


 『さんぽ、あさ、うれしい、おきる、いっしょ、でる』


 ふわ~、はいはい。


 枕もとに置いてあったリモコンを操作し部屋の照明(あかり)を点けた。


 柱にかけてある時計を見ると時刻は5時30分。外はまだ真っ暗である。


 (シロちゃん、はりきり過ぎだって)


 仕方がないので、布団からもそもそと()い出る。


 みんなを起こさないように遮音結界(しゃおんけっかい)をはってから、布団をたたんで押し入れにいれた。


 ジャージを着たまま外に出ると、手水舎(てみずや)の横にある水道の蛇口(じゃぐち)をひねり顔を洗う。


 そして、首に掛けていたタオルで顔を拭きながらシロに話しかけた。


 「シロ、今日はちょっと試したいことがあるんだけど付きあってくれるか?」


 頭を()でながら話していくと、シロはブンブン尻尾を振りながらコクコクと頷いている。


 そうかそうか、よしよし。


 まず、周りから見えないよう本殿(ほんでん)の裏側に移動する。


 シロにリードを付けてから油山の展望台(てんぼうだい)へ向け、トラベル! 


 (油山:福岡市城南区、早良区、南区にまたがる標高596メールの山。山の上には展望台があり福岡市を一望できる。夜の夜景もめちゃキレイ。自動車で行けるデートスポットである)


 おお、成功だな。


 前世の俺(・・・・)が行った場所でも、”トラベル!” による転移は問題なくできるみたいだ。


 そうそう、MPの消費量を確認しないと。


 ――鑑定!


 ふんふん、減っているのは7ポイントか。


 この油山展望台は元の家からだと直線距離でおよそ3kmだったはず。


 そうすると、MPの消費量は向う (サーメクス) とほぼ変わらないということか。


 これなら市内をあちこち移動することができるな。


 ただ、MPの回復(かいふく)には時間が掛かっているようだ。


 やはりこちら (地球) は大気中の魔素が薄いのだろうか?


 ふむ……、マジックポーションも大量に持っているので、差し当たって支障(ししょう)が出ることはないだろう。






 あと、問題になるといえば人の多さ(・・・・)だよな。


 早朝でも人の目が結構ある。うかつに転移を使えば大騒ぎになるだろう。


 それなら認識阻害(にんしきそがい)の結界を平行して使っていくのか?


 それでも防犯カメラには映ってしまうので注意が必要だろう。


 防犯カメラを元に調べられたら、いろいろと矛盾(むじゅん)しそうだしな。


 人の目はごまかせても、カメラに映像が残っていては(つたな)い。


 電磁(でんじ)パルス弾 (雷魔法) を使ってカメラごと機能停止(きのうていし)にさせる?


 いやいや、行った先々で防犯カメラや付近の電子機器が謎の機能停止とか、それこそ(あや)し過ぎるだろう。


 それならもうアレしかない。


 ――光学迷彩(こうがくめいさい)である。


 これなら、プレデ○ーのように周りに溶け込んでやり過ごすことができるだろう。


 しかし、それでも欠点はあるのだ。


 ぶつかってくるのだ。


 人や自転車ぐらいなら、まだいい。これが自動車やトレーラー、ましてや電車などであれば大惨事になるだろう。あちらが。


 つまり無いものとして扱われるのだ。そこが認識阻害(にんしきそがい)との相違点(そういてん)だろう。


 まあ、こちらが()ければ済む話ではあるのだが。


 そんな訳で、シロにも光学迷彩のしくみをレクチャーしていく。


 「よしシロ、やってみろ!」 


 おぉ――――っ、見事に消えてるなぁ。


 まあ、俺には魔力の流れが見えているので、何処に居るのか分かるけど。






 ある程度練習したのち、俺たちは展望台から10m下の森へダイブ。


 そのまま森を通って(ふもと)まで下山、あとは歩道を走って神社まで戻ってきた。


 朝食はおいしいカレーだ。


 今朝もおかわりしてしまった。


 「紗月(さつき)ちゃん、いってらっしゃーい!」


 玄関でお見送りしていると、開きかけた引き戸をそのままに紗月ちゃんが戻ってきた。


 「ちゃん(・・・)は要りません。紗月(・・)で!」


 それだけ言って出ていってしまった。


 「…………」


 「まあ、娘もああ言ってるんだから良いんじゃない」


 と茂さん。


 「今から茅の輪(ちのわ)を片付けるから、手伝ってもらえるとありがたいのだが」


 「はい、勿論(もちろん)です。どうすればいいですか?」


 裏から脚立(きゃたつ)を持ってきて、支えている(ひも)を切断。


 下ろした茅の輪を解体。さらに竹で作った支柱も解体。


 あとは(たば)ねて表に出しておけば、昼過ぎには業者が持っていってくれるそうだ。


 昔は近くで燃やしていたそうだが、環境破壊(かんきょうはかい)だなんだと最近はうるさくなってしまったという。






 じゃあ、サクッと終わらせますかね。


 竹や(ちがや)を束ねる為の荷紐を茂さんから受け取り、シロを連れて参道(さんどう)に出てきた。


 竹の支柱に取り付けられた茅の輪の近くへいき、周りに誰も居ないことを確認する。


 「シロ、この茅の輪を支えてる紐を全部切ってくれ」


 「ワン!」


 シロは一()えすると、2回ジャンプしただけで8ヶ所もの紐をすべて切り落とした。


 おそらく、前足と風魔法を使ったのだと思うが、目にもとまらぬ速さだった。


 あとは、手前にゆっくりと倒していき、地面に下ろしたところでインベントリーへ 収納・解体・排出。


 竹の支柱は結構深く地面に差し込んであったが、俺が普通にポイっと抜いて、収納・解体・排出。


 あとは荷紐で(しば)って道路脇に出すだけ。


 支柱があった穴は、俺が戻ってくる間にシロが埋めてくれていた。


 10分も掛からず終わってしまった。


 片付け終わったので報告をしようと、汚れた手をキレイに洗ってから玄関の引き戸を開けた。


 すると茂さんは靴を履いたまま軍手をはめているところだった。


 「おや、ゲンさん何か忘れものかい? じゃあ、僕は先に行って作業を始めてるよ」


 「…………」


 「早くしないと、業者が来てしまうからね」


 「あの~、もう終わりました。……言っておけば良かったですね。一人で大丈夫だって」


 「えっ!?」


 しばらく(ほう)けていた茂さん。


 気を取り直して表に出ると、道路脇に積んであった竹と茅の束を確認していた。


 「うん完璧だね!」


 サムズアップして合格サインを送ってくれた。


 さ~て仕事も終ったし。 お出かけ お出かけ!


 今日はいろいろと買い物をしながら、この近くをまわってみようと思う。


 「お昼は外で食べてきますね」


 そう茂さんに伝えて俺たちは家を出た。


 まずは吉牛で牛丼のお持ち帰りだ!


 光学迷彩を張ったあと、シロを連れて吉牛の駐車場に転移した。




電磁(でんじ)パルス弾 (雷魔法)

単発の電磁パルス弾。直径5mm程の物を指弾(しだん)により打ちだす。電圧の調整により

人を麻痺(まひ)させたり、電子機器を機能停止(きのうていし)させる。機械や機器の中のプロセッサーを破壊(はかい)することも可能。


……かっこよく書いてはいるがサンダーボール (雷玉) の一種である。

あちらでは魔物を麻痺させるために使っていた。

こちら (地球) に戻ってきて、調子にのったゲンが中二病を発症して ”電磁パルス弾” と命名。




光学迷彩(こうがくめいさい) (結界魔法)

光魔法で作り出した多くの光学プリズムを使い、光を屈折(くっせつ)させて周りに溶け込むように姿を(かく)す。カメラには映るが、よく解析(かいせき)しないと解らない。解析後も空間の歪み(ひずみ)のように映り、個人の特定は困難(こんなん)である。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
プチ プチ(。・・)σ|ω・`)ノ おっ押すな。押すな~!
小説家になろう 勝手にランキング
シロかわいい! と感じたら押してください。シロが喜びます。U•ɷ•)ฅ
挿絵(By みてみん)
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ